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局長に聞く104 労働委員会事務局長2017年07月20日号

 
労使関係の円満解決を図る

労働委員会事務局長 土渕 裕氏氏

労働委員会事務局長 土渕 裕氏

 東京都の各局が行う事業について局長自ら説明する「局長に聞く」。今回は労働委員会事務局長の土渕 裕氏。良好な労使関係の構築に向け、不当労働行為の審査、紛争解決のためのあっせんなどを行っている。「働き方改革」の推進が叫ばれる中、労働委員会と事務局の果たす役割は増々重要になりそうだ。

(聞き手/平田 邦彦)

和解で労使紛争の解決を推進

—就任されて1年が経過しました。振り返っていかがですか。

 知事が代わり、さらに先日は都議会議員選挙もあり、都政にとって正に激動の1年だったと思います。

 そのような中、東京都労働委員会は、知事から独立した行政委員会として、粛々と労使紛争の解決にあたり、平成28年は1年間で104件の不当労働行為の審査事件と87件の労働争議調整事件のあっせんを終結することができました。

 全国の都道府県労働委員会における終結事件は、不当労働行為が329件、あっせんが310件ですから、実に約3割の事件を都労委が解決したことになります。

—そもそも、労働委員会はどのようなことをする組織なのですか。

 労働組合法に基づき国及び各都道府県に設置されている機関で、労働組合と使用者との間で生じた集団的労使紛争を公正・中立な立場から解決するために設置された準司法的機能を持つ行政委員会です。不当労働行為の審査、紛争解決に向けたあっせん等をしています。

 学識経験者から選ばれた公益委員、労働組合から推せんされた労働者委員、使用者団体から推せんされた使用者委員各13名、計39名の見識の高い委員の知見を活かし、労使紛争の解決にあたっています。

 また、労働委員会にはその事務を整理するために事務局が置かれ、職員が配置されています。委員が非常勤なので、労働委員会の任務遂行の上での事務局の役割は非常に大きくて、職員にも委員同様、高度な専門性が求められます。

—労働委員会の特徴は。

 裁判所の判決と違い、労働委員会の命令は、将来の労使関係を考えた救済方法の選択が可能となっていることです。

 元々、労働者と使用者の間には情報量や折衝力に大きな隔たりがあることから、両者が対等な立場で交渉できるよう、憲法で団結権等が保障されています。

 労働組合法は、団結権等の保護を図るとともに、将来に向けた安定的な労使関係の構築を目的として、労働委員会を設置しています。

—お話を聞いていると専門性の高い業務だということがわかります。紛争解決のために特に力を入れていることは。

 不当労働行為の審査では、命令に至る前に当事者が歩み寄り、和解により解決することがあります。当事者の納得性が高く、将来に良好な労使関係を築いていくためには、和解による解決が望ましいと考えています。ですから、当委員会では積極的に和解による解決に取り組んでいます。

 不当労働行為の審査では、委員の精力的な取り組みと職員の的確なサポートにより、事件の約7割が和解により解決しています。

 なお、申立人の都合等により取り下げられる事件もあるので、命令となる事件は全体の2割程度となっています。

 

多様化する働き方へ対応

—平成28年の不当労働行為事件の新規申立てが8年ぶりに100件を下回りましたが、労働紛争が減っているということでしょうか。

 平成28年の不当労働行為の審査事件の新規受付数は97件でした。申立内容を見ると、団体交渉拒否が全体の75%となっており、その団体交渉の議題は、賃金問題が最も多くなっています。このことから、緩やかな回復基調にある日本経済、失業率の低下等といった社会情勢の影響が新規受付事件の減少につながっていると考えられます。一方で、減少しているのは従業員300人以上の大企業が中心で、中小企業に絞って見てみれば、ほぼ横ばいとなっています。

 中小企業の雇用・所得関係の改善はまだまだ進んでいないように思われます。

—平成28年のあっせんについては、いかがでしょうか。

 あっせんについては、平成28年の申請が87件となっていて、これは前年と同数です。

 あっせんの特徴としては、一定の地域で企業の枠を超え、主に組合のない中小企業の労働者などを対象に個人で加入できる労働組合である合同労組からの申請が全体の約9割を占めることです。

 不当労働行為事件の新規申立てにおける合同労組の割合も7割にのぼることから、実質的な個別労働紛争の事件が増えてきていることがうかがえます。

—今後重点的に取り組みたいことは。

 フランチャイズ契約や代理店契約など、労働者性が問題となる事件や、企業の破産・解散、会社の合併・分割等が問題となる事件など、事件が複雑化・困難化している傾向があります。

 また、事実上の個別紛争事件であったり、働き手の多様化により増加している外国人労働者、女性労働者、高齢の労働者、パート派遣労働者などに係る事件が増えています。

 現在、行われている働き方改革により、今後もこの傾向が続いていくと思われます。労使の対立は会社の活力を奪ってしまい、労働者にとっても望ましいとは言えません。

 労働委員会として、和解や命令を通して労使紛争の円満な解決を図り、未来へ向けた労使の良好な関係を構築し、活力ある会社を増やすことで、東京の経済の発展の下支えをしていければと思っています。

 

 

 

 

タグ:労働委員会 働き方改革

 

 

 

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