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NIPPON★世界一 The89th2017年07月20日号

 
ホリマサシティファーム(株)

●ホリマサシティファーム株式会社
●品川区五反田 ●2016年設立

「アクアポニックス」システムの開発・販売

ホリマサシティファーム(株)

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 今年2月にこの紙面で紹介した、次世代有機循環型エコシステム「アクアポニックス」。世界的食糧難を克服する可能性を持つ、その国内最大規模の施設が6月に大分県に完成した。今後、同システムに関心のある事業者は、大規模「アクアポニックス」がどのように稼働するのか、直に見て感じることができる。

(取材/種藤 潤 写真/上原 タカシ)

 

 全国約4万ある八幡さまの総本山と言われる「宇佐神宮」のおひざ元として知られる大分県宇佐市。美しい山並みに包まれるように広がる広大な田園の一角で今年6月、ホリマサシティファーム「アクアポニックス」事業の中核的存在である「大分パイロットファーム」が本格的に稼働を開始した。

 敷地内のグリーンハウスと室内栽培施設では、ハーブやフルーツ、わさびを中心とした農産物を栽培。温室内養殖施設では、ニジマスを育てていた。そして、これら農産物栽培と水産物養殖の施設は「アクアポニックス」システムによって連結され、使用する水を循環しながら生産を行っていた。

 

国内最大規模の敷地と生産能力を有する

ビニールハウスを用いた栽培施設では、最大1万株を同時栽培。現在、ハーブやフルーツ、わさびなどを栽培

 「アクアポニックス」とは、水耕栽培と水産養殖を融合した、次世代型有機循環エコシステムである。首都圏の最新技術系セミナーでも事例が紹介されるなど、国内でも徐々に注目が集まりはじめているが、それぞれがどのようにつながり、どのような効果をもたらすのかは、2月号の記事を参照していただきたい。

 今般、生産をスタートさせた「大分パイロットファーム」は、国内最大級の規模を誇る「アクアポニックス」システムである。

 敷地は約3000㎡にも及び、設備の大きさ、そして生産力も、従来にはない規模を誇っている。

 ビニールハウス型の栽培システム「グリーンハウス・アクアポニックス」は、約1000㎡の広さで、最大約1万株の植物を、年5~6回(葉物野菜の場合)繰り返し栽培することができる。

 室内型水耕栽培施設「CEA:Control-Enviornment Agriculture」も、約300㎡の建物内にプランターが幾重にも並び、最大約2万5000株の植物が、年7~8回栽培できるそうだ。

 その両者を結びながら稼働する陸上循環ろ過養殖システム「RAS:Recirculating Aquaculture System」には、10トンの水槽が4つ配置され、合計約4000匹のニジマスの養殖が可能だそう。ニジマスは9ヶ月で2kgまで成長させることができるという。

 

質量ともに高い生産力で商業化も実現

子どもへの食育効果を期待し、都内の保育園に設置予定の小規模アクアポニックスシステム(イメージ)

子どもへの食育効果を期待し、都内の保育園に設置予定の小規模アクアポニックスシステム(イメージ)

 これだけの規模の生産が可能なだけでなく、魚の排泄物が植物の成長に不可欠な要素になり、また魚にとっても最適な状態の水となる循環型のため、余計な化学肥料等を使用する必要がなく、安全・安心を確保した質の高い食物の生産が可能になる。その結果、一定の販売収益が見込めるので、「アクアポニックス」の商業的活路が見えてくるのだ。

 同社生産管理部長の小野智一さんは事業化の実現に、一定の手応えを感じていた。

 「現在、ハーブは地元の食品生産工場、ニジマスは近隣の温泉地での導入が検討されています。特にニジマスはその品質に高い評価をいただき、できるだけ多く発注したいと希望されています。そのためにも、もっと安定的かつ高品質に量産できるアクアポニックスによる仕組みを作りたいです」

 

大分で構築した機器と育成ノウハウを提供していく

大分パイロットファームを入り口から見た風景

大分パイロットファームを入り口から見た風景

 だが、同社の「アクアポニックス」事業の目的は、単に量と質を求める生産体制の構築と提供ではない。2月号にも紹介したが、来る世界的食糧難を阻止すべく、自然環境に依存しない「サステナブル」な食料供給システムを構築することが、同事業の本来の目的である。

 そのためにも、「大分パイロットファーム」で得られたさまざまなデータやノウハウを、多くの事業者へと提供したいという。それが結果的に「アクアポニックス」普及につながり、未来の食料供給体制の構築へとつながると考えるからだ。そのためにも、関心を持った事業者に対しての見学は、準備が整い次第受け入れていく。

 一方で「アクアポニックス」自体の価値を理解してもらうための活動も、これまで以上に注力していくという。その一つが、都内に新設された保育園「ナーサリールーム ベリーベアー深川冬木」内への「アクアポニックス」の設置。子どもたちへの「食育」効果を期待し、検討中とのことだ。

 また、8月後半には同システム研究の先端地域・ハワイで研究を行うテッド・ラドヴィッチ博士を招いてセミナーを横浜で開催予定。徐々に注目されてきたとはいえ、日本ではまだ知名度の低い「アクアポニックス」の魅力を語ってもらう。同会場内では「大分パイロットファーム」の詳細も展示予定。関心のある方は、ぜひ足を運んでほしい。

 

 

 

 

タグ:アクアポニックス 室内型水耕栽培施設 陸上循環ろ過養殖システム

 

 

 

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