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社会に貢献するために 第15回 東京急行電鉄株式会社2018年01月20日号

 
「地域連携」と「環境保全」につながる駅改修事業「木になるリニューアル」
東京急行電鉄株式会社

2019年春に竣工予定の池上線旗の台駅のリニューアル完成イメージ(提供:東急電鉄)

東京急行電鉄株式会社

 東京急行電鉄(以下、東急電鉄)は現在、東急池上線を中心に「木になるリニューアル」という駅改修事業を実施中だ。担当者に話を聞くと、単なる改修工事にとどまらない、東京の街にふさわしい駅舎づくりを目指す姿勢が、強く感じられた。

(取材/種藤 潤)

2016年12月に戸越銀座駅が完成
2019年春に旗の台駅が竣工予定

 「木になるリニューアル」とは、老朽化した木造駅舎を、木の雰囲気を大切に受け継ぎながら使い心地の良い駅を目指してリニューアルを行うプロジェクトのことだ。第一弾は池上線「戸越銀座駅」の駅舎で、2015年9月着工、翌年12月11日に竣工した。現在は第二弾として大井町線と池上線が乗り入れる「旗の台駅」のリニューアルに向けて準備が進んでおり、2019年春の竣工を目指している。

旗の台駅の「木になるリニューアル」を担当する、東京急行電鉄株式会社 鉄道事業本部 工務部施設課の杉山圭大課長補佐(左)と長沼俊介さん(右)

旗の台駅の「木になるリニューアル」を担当する、東京急行電鉄株式会社 鉄道事業本部 工務部施設課の杉山圭大課長補佐(左)と長沼俊介さん(右)

 一般的に駅改修工事というと、工事の状況によって駅施設の利用が制限されるなど、利用者にはマイナスの印象があるが、完成後のイメージを利用者と共有するこのリニューアル事業がその印象をプラスに変え、駅をより身近な存在に感じてもらえたらいいと、鉄道事業本部工務部施設課の長沼俊介さんは言う。

 「今回のリニューアル事業により、お客さまの目線に立ち、声に耳を傾け、一緒に作り上げるという駅改修工事の新たな形を構築したいと思っています」

 同課の杉山圭大課長補佐は、この事業には、同社の企業理念である『選ばれる沿線』を目指す姿勢が息づいていると語る。

 「お客さまと一体となって良い駅を作り上げることで、駅にいっそう愛着を持っていただくと同時に、街が活性化して、沿線外の皆さまにもその地域で暮らしたいと思っていただけるようになる。このリニューアル事業により、そういう『選ばれる沿線』としての好循環を生み出したいと考えています」

 

地元東京の木材を用いることでCO2削減や資源循環利用を実現

 戸越銀座駅と旗の台駅が選ばれた理由を、長沼さんは次のように語る。

 「大きな要因としてあげられるのは、駅の老朽化が進んでいたことです。戸越銀座駅は約90年前、旗の台駅は約60年前にできた駅ですので、地元の皆さまは愛着を持ってくださっていると思います。そんな皆さまと一緒に作り上げることができる素晴しい事業であると思っています」

多摩の森とつながるツアー

使用する多摩産材への理解を深めてもらうために、戸越銀座駅の改修の際には「多摩の森とつながるツアー」を実施した(提供:東急電鉄)

 そしてこの2つの駅だからこそ、木材利用の価値はいっそう高まると、杉山課長補佐は言う。

 「この2つの駅は、もともと木造の駅でした。そして周辺は、商店街や住宅街が広がる、アットホームな街です。その雰囲気を壊さないよう、温かみのある駅を作ることがリニューアルでは求められます。その点でも木造駅は最適だと思います」

 さらに木材利用には、環境保全の側面もあると、杉山課長補佐は付け加える。

 「森林は定期的に間伐を行うことで、地上に光があたり、健全な土壌が維持されます。その森林資源を利用することで、森の循環が保たれ、環境の保全につながることになります。この事業では多摩産材の木材を利用する予定で、その一部は、『平成29年度東京都森林・林業再生基盤づくり交付金事業』の採択を受けています。また、鉄骨造に比べて建設段階のCO2放出量を軽減できる利点もあります」

 

沿線に暮らす人々とともに駅のリニューアルに取り組む

 第一弾の戸越銀座駅では、多摩産材を約120㎥使用、木のぬくもりあふれる駅舎が完成した。また、男女トイレの建替も実施。地域の人々と一緒に製作した木製ベンチも設置された。

 さらにこの事業と併せて、駅利用者が参加できるさまざまな企画を実施。例えば、使用した多摩産材の産地であるあきるの市で行った「多摩の森とつながるツアー」や、駅舎への想いを綴ったメモリアルボードの作成、東京大学と連携した街の新たな魅力を発見するワークショップ、地元商店街連合組合と連携した駅竣工セレモニー開催などだ。

トゴシノ

「木になるリニューアル」をきっかけに、戸越銀座のまちの魅力や価値、可能性を探るワークショップを、東京大学と連携して実施。その成果として、地元の人々へのインタビューをまとめた冊子「トゴシノ」を発行した(提供:東急電鉄)

 こうした実例をふまえながら、現在、第二弾の旗の台駅リニューアル工事および駅利用者が参加する企画の検討を進めているところだが、事業に対し、地元の皆さまからは後押しの言葉もいただいている、と杉山課長補佐は言う。

 「駅がきれいに使いやすくなるということで、皆さまには好意的に受け止めていただいております。その期待に応えるためにも、戸越銀座の事例を参考に、お客さまとの関係を密にできる、旗の台独自の企画などを検討していきたいと思います」

 長沼さんは第二弾リニューアルを機に、旗の台駅を「降りても利用したい駅」にしたいと語る。

 「この駅は、大井町線と池上線が乗り入れていることもあり、利用されるお客さまは非常に多い。改修後は、そのお客さまが駅から外に出て、商店街を中心に旗の台という街に触れていただければと思います」

 戸越銀座駅、旗の台駅を通る池上線は、昨年10月に多数の参加者を集めた「開通90周年記念イベント 池上線フリー乗車デー」で話題になった。他にも池上駅の駅舎改良と駅ビル開発も進行中であり、「木になるリニューアル」も加わることで、沿線がさらに活性化することは間違いなさそうだ。

 

 

 

 

タグ:東京急行電鉄 東急池上線 旗の台駅 戸越銀座駅 木になるリニューアル 多摩産材

 

 

 

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