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NIPPON★世界一 92nd2018年03月20日号

 
東芝エネルギーシステムズ(株)

現在同社が手がける純水素燃料電池システム『H2Rex』のラインナップ。発電時のCO2排出量はゼロ。すでに動物園や卸売市場で導入(提供:東芝エネルギーシステムズ株式会社)
●東芝エネルギーシステムズ株式会社
●川崎市幸区 ●設立:2017年10月
●従業員数:約7200人(2017年10月現在)

次世代水素エネルギーの開発

東芝エネルギーシステムズ(株)

  日本にある世界トップクラスの技術・技能−。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。
 2015年7月発刊号の本稿で、同社(当時は株式会社東芝)の水素エネルギー開発を取り上げた。2年半が経過し、様々なシーンに製品が導入されつつある。一方で、2020年度中の実証を目指し、自治体や企業と連携した地域の大規模水素エネルギーシステムづくりも進めている。

(取材/種藤 潤)

 

第14回[国際]水素・燃料電池展での東芝ブース

東京ビッグサイトで行われた第14回[国際]水素・燃料電池展に出展した同社のブースに伊藤忠彦環境副大臣(右)が訪れ、『H2One』をはじめとする水素エネルギー事業について熱心に耳を傾けていた

 2018年2月28日から3月2日にかけて、東京ビッグサイトでは、「第14回スマートエネルギーWeek」が開催された。太陽光や風力、蓄電池、スマートグリッドなど、世界中の再生エネルギー技術を集結、3日間で約4万7000人におよぶ来場者があった。

 そこには第14回[国際]水素・燃料電池展のゾーンが設置され、水素エネルギーを手がける数々の企業とともに同社も出展。中核製品である『H2One(エイチツーワン)』をはじめ、水素エネルギーの仕組みや可能性などを解説するパネルも展示した。国内外の来場者の中には、伊藤忠彦環境副大臣の姿もあり、同社の取り組みに熱心に耳を傾け、水素エネルギーに対する国家的な期待の高さが感じられた。

 そこには第14回[国際]水素・燃料電池展のゾーンが設置され、水素エネルギーを手がける数々の企業とともに同社も出展。中核製品である『H2One(エイチツーワン)』をはじめ、水素エネルギーの仕組みや可能性などを解説するパネルも展示した。国内外の来場者の中には、伊藤忠彦環境副大臣の姿もあり、同社の取り組みに熱心に耳を傾け、水素エネルギーに対する国家的な期待の高さが感じられた。

 

災害派遣医療や電車ホームオフィスでも導入が進む

 2015年7月号でも触れたが、同社の水素エネルギー開発の歴史は古く、1960年代より燃料電池開発をはじめ、2009年には都市ガス等を改質(炭化水素の組成・性質を改良すること)した『エネファーム』をリリースし、燃料電池市場で一定の地位を確立した。2015年に純水素燃料電池『H2Rex』、そして、再生可能エネルギーと水で水素を作り、その水素で発電する、完全自立型のエネルギーシステム『H2One』の実証をスタート。特に後者は、水さえあれば“地産地消”で電力とお湯を作り出すことができ、さらにCO2などを発生させることもない、極めてエコロジーなエネルギーシステムとして注目を浴びた。

 前回の紙面ではBCP(事業継続計画)モデルとして、神奈川県川崎市・東扇島にある公共施設「川崎マリエン」での実証実例に触れたが、その後2年を経て、さらに導入は進んでいる。静岡DMAT(Disaster Medical Assistance Team=災害派遣医療チーム)の訓練では、災害時電源を想定して『H2One』が使用され、川崎市にあるJR武蔵溝ノ口駅にも『H2One』が設置されている。また、東急建設技術研究所オフィス棟では現在、実質的なエネルギー消費量をゼロにするオフィス改修の一環として、『H2One』導入を進めている。

 

福島県浪江町ではじまる大規模実証実験

水素エネルギー利活用センター

東芝の府中事業所内にある「水素エネルギー利活用センター」は、東京都の「事業所向け再生可能エネルギー由来水素活用設備導入促進事業」の補助を受け、2017年6月に完成。太陽光発電で生み出された電力から水素を作り、実際に稼働する燃料電池フォークリフトの燃料に使用している(提供:東芝エネルギーシステムズ株式会社)

 さらに同社グループの東芝府中事業所内では、FCV(燃料電池自動車)の活用を見据えた、事業所活用モデルの実証を進めている。敷地内の「水素エネルギー利活用センター」では、太陽光発電により生み出された電力から水素を作り、敷地内で運用する燃料電池フォークリフトの燃料として水素を活用している。FCVも稼動時にCO2を排出せず、事業所全体でのCO2排出は限りなくゼロに近い。

 そして、東北電力株式会社と岩谷産業株式会社と連携し、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素社会構築技術開発事業」等の公募に応募、2016年9月に採択された。現在、福島県浪江町を実証エリアとして、再生可能エネルギーを活用した、大規模水素エネルギーシステムの構築、仕様、技術、経済成立性について検討を重ね、昨年8月より実証フェーズへ移行。1万kW級の水素製造装置を備え、再生可能エネルギーや電力系統の余剰電力から約1万台のFCVの需要を賄える規模の水素を製造できるエネルギーシステムを構築し、2020年度中の稼働を目指している。

 

Power to Gasで再生可能
エネルギー利用を促進

東芝エネルギーシステムズ株式会社の大田裕之氏

東芝エネルギーシステムズ株式会社の大田裕之次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム プロジェクトマネージャー

 水素の活用は国家戦略としても注目されている。経済産業省が定めた『水素・燃料電池戦略ロードマップ』によると、現在は『水素利用の飛躍的拡大』のフェーズにあり、2020年後半には『水素発電の本格導入/大規模な水素供給システムの確立』に入り、2030年には水素が本格的に存在感を発揮する、としている。そのためにも、浪江町のような大規模な水素エネルギー実証の成果は、今後ますます重要になると、同社で水素エネルギー事業を手がける大田裕之次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム プロジェクトマネージャーは語る。

 「国は2050年までにCO2を2011年度比で8割削減する方針を示しています。そのためには再生可能エネルギーの大量導入が求められます。しかし、再生可能エネルギーは天候に左右され安定して利用できるわけではありません。浪江町で実証する『Power to Gas(再生可能エネルギーを水素に変換して蓄積・活用する技術)』を用いれば、不安定な再生可能エネルギーを安定な電力や車の燃料、並びに工業原料などに変換し、多目的に利用することが可能になります。この技術は、高齢化が進む過疎地や、エネルギー確保が難しい島しょ地域などで自立型のエネルギーインフラとしても期待できます。ぜひ多くの事業者の方に水素の価値を知っていただき、ともに水素エネルギーの活用を広げていただきたいと思います」

 

 

 

 

タグ:次世代水素エネルギー H2One

 

 

 

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