財務局長 山下 聡氏
東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は財務局長の山下聡氏。令和7年度予算の内容や苦心したこと、社会的責任調達指針などについてお話を伺った。
各施策を財政で下支え

財務局長 山下 聡氏
30日まで都民提案を募集中
—令和7年度予算が執行されました。改めて内容・特徴をご紹介ください。また、7年度予算で苦労したことは。
令和7年度予算は、小池知事の3期目初年度の予算でもあり、知事の想いや公約に掲げられた施策を、いかに行政として具体化していくか苦心を重ねました。
近年、018サポートや、高校授業料の実質無償化、給食費の負担軽減など、都が国に先行して実施する施策に対し「行政サービスの地域間格差が拡大する」「東京は財政力が豊かだからできる」との声もあります。
東京が抱える切迫性の高い課題などに対し事業の徹底した見直しを積み重ね、政策のプライオリティを付け対策を講じており、いわれのない意見をどう払拭し、施策の必要性を対外的に説明していくか、常に頭に置きながら予算編成に取り組んでいます。
今回の予算には、未来の東京に向けた様々な施策を盛り込んでいます。世界の変化するスピードが加速度的に進む中で、今後も積極的な施策展開を財政面からしっかりと下支えしたいと思います。
—小池都政から都民提案事業が開始されました。これまでの採用件数と成果は。
平成29年度(平成30年度予算編成)から、都民の声や大学研究者の知見を都の施策に反映する仕組みとして、都民提案・大学提案を実施しており、これまで、3939件のご提案を頂き、89件の事業を具体化してきました。
都民提案では、高校生から「英語でインターンシップ体験」を行う提案を頂き、都立高校生139名が21の企業等を訪問し、英語の実践的な活用やキャリアプランを考えるきっかけにつなげています。
大学提案では、東京大学が中心となり開発したシステムを活用して、都民が位置情報と写真により道路の損傷状況の通報を行えるアプリを運用し、インフラ維持管理に対する透明性・効率性の確保や、都民と共同した新たな道路管理を実現しています。
こうした成果を都民の皆様にいかにわかりやすく発信していくのか、そして、次の提案につなげていくのかが大切です。採択された方々のインタビュー記事を公式noteに掲載するなど、情報発信に力を入れています。
今年度も5月30日まで提案を受け付け、その後、7月下旬から都民の皆様によるインターネット投票を実施します。行政にはない発想で、斬新なご提案を頂き、複雑・多様化する都政課題の解決に是非ご協力頂きたいですね。
都民広場を賑わいの場に
—令和7年4月から「東京都社会的責任調達指針」の適用が開始されました。都が指針を策定した理由は。
都は、SDGsの目線の取組を都庁から世界に広げ、持続可能な社会に貢献するため、経済合理性のみならず環境や社会などの持続可能性にも配慮した公共調達に係る指針として、「東京都社会的責任調達指針」を策定しました。
調達指針は、法令遵守を基本として、環境負荷の低減、多様な人権の尊重、適正な労働環境確保等の視点から、受注者とサプライチェーンを担う事業者が契約履行過程で取り組むべき方向性を示しています。
本指針に基づいた調達を行うことは、都としての社会的責任を果たすことにつながるとともに、調達に参加する企業においても、社会からの信用獲得、ひいては、企業価値の向上につながるものとして、意義のあるものです。
持続可能性にも配慮した調達を都が行うことを通じ、環境、人権、労働等の視点から望ましい慣行が定着するよう働きかけることで、持続可能な都市の実現に寄与していきます。
—東京都では契約手続のデジタル化に向け、電子契約の導入も進められています。
事業者の皆様の利便性の向上と業務負担の軽減を図るとともに、都の事務の効率化、簡素化を実現するため、令和5年10月から電子契約を導入しました。
電子契約を利用した方からは、都庁への出張時間が約3時間削減したという声や、書類作成(印刷製本等)時間が約1時間削減したという声もあります。令和7年7月からは、電子契約の対象組織を各事業所にも拡大するので、是非皆様の積極的な利用をお願いします。
—都民広場の賑わい創出の取組は。
都民広場には昨年10月、芝生を設置しました。くつろいだり、食事をされたり、思い思いの時間を過ごせる場として利用頂いています。
今年1月から2月の日中には椅子やテーブルなどを設置し、楽しんで頂ける空間を演出しました。寒い時期でしたがブランケットを用意するなど工夫をし、多くの方にご利用頂いています。
設置期間中はQRコードによるアンケートを実施し、その結果を踏まえ、夏場の夜間利用やパラソルの設置など、新たな取組につなげる予定です。更に、広場のステージを気軽にスポーツも楽しめる場としていきたいですね。
また、年間約200万人が訪れる展望室で都庁フォトスポットや都庁舎動画をPRし、都民広場等への人の流れをつくるなど、訪れた方に様々な都庁の顔を楽しんでいただく取組も進めています。引き続き、都民ニーズを柔軟に取り入れ、賑わい創出を進めていきます。