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仕事に命を賭けて Vol.622013年08月20日号

 
災害監督 主任 佐藤世志二

東京消防庁 警防部 総合指令室
災害監督 主任 佐藤世志二

 文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。火事や救急車は、119番―いざというときのこの窓口があるから、我々は日々安心して暮らせる訳だが、その窓口に問い合わせた先がどうなっているのかは、意外と知られていない。その現場を取り仕切る総合指令室の主任に、お話を伺った。

(インタビュー/種藤 潤)

都内全域の119番通報を集約
各消防署に指令を流す

東京消防庁内の総合指令室内の様子。広大な室内には最新のICTを駆使した災害救急情報システ ムが配され、前面には大画面モニターが設置されている

東京消防庁内の総合指令室内の様子。広大な室内には最新のICTを駆使した災害救急情報システ ムが配され、前面には大画面モニターが設置されている

 読者のなかにも119番の通報をしたことがある人がいるかもしれないが、その連絡をした先がどこにつながっているのかを具体的に想像したことがあるだろうか? 通報した最寄りの消防署に連絡が行く、と思われている人もいるかもしれないが、実は都内の119番通報は、23区では大手町にある東京消防庁本庁に所属する総合指令室に、多摩地区では立川にある多摩指令室に入電しているのである。

 迅速さを求めるのであれば、現場に近い消防署に連絡が行ったほうがいい、という考え方もあるが、災害の規模が大きくなれば、ひとつの署が所有する車両や人員で対応し切れないこともある。

 そうしたことも想定し、都内の情報を本庁の総合指令室に一旦集約し、通報内容を把握、客観的に判断した上で的確な車両や人員体制を決定し、その上で各署に指令を流すようになっている。

 

一日4000件を超える通報を37名の室員とICT技術で対応

佐藤主任の席は電話対応する12名の後方に位置。常に通報される情報をシステム画面と音声で 把握、状況に応じて助言を行う

佐藤主任の席は電話対応する12名の後方に位置。常に通報される情報をシステム画面と音声で 把握、状況に応じて助言を行う

 東京・大手町にある東京消防庁本庁内の総合指令室。119番通報を受けている室員の声が、途切れることなく常に室内に響き渡っていた。

 しかしこの日の天候は雨。そのこともあり、通報は比較的少ないと、総合指令室の現場を取り仕切る佐藤主任は、落ち着いた口調で語る。

 「夏は暑くなると熱中症などの通報や問い合わせで電話が鳴り止むことはありません。一方で冬は、インフルエンザの通報や問い合わせが多く、これも問い合わせが尽きることがない。そうなると私も含めた室員全体で、不眠不休の対応になります」

室員たちが使用する端末は、基本的に同じシステム。中央のメモ帳に文字を書き込むと、自動的 にデジタル化され、他の端末にも共有。平行して出動可能な車両情報も表示される

室員たちが使用する端末は、基本的に同じシステム。中央のメモ帳に文字を書き込むと、自動的 にデジタル化され、他の端末にも共有。平行して出動可能な車両情報も表示される

 都内の119番での問い合わせは、一日平均4000件にも及ぶ。それに対し、総合指令室では常時37名の室員を配置、ICTを駆使した災害救急情報システムを活用しながら、迅速かつ的確に通報内容を把握。その情報を受け、各消防署に指令を流す。そして出場した消防車両と交信する業務を担う無線担当も常時配置されている。

 その全体の状況を把握し、必要に応じて助言や指示などを行うのが、佐藤主任の仕事だ。

 「基本的には、私は室員のサポートが主な業務ですが、通報件数が増加したら私も窓口に立ち、都民の皆様の通報に対応することもあります。まだ若い室員には負けません(笑)」

 

各室員が消防庁全体の窓口
常にベストな対応を目指す

 取材の際、とりわけ印象的だったのは、佐藤主任の話す雰囲気だ。声色が落ち着いていて穏やかなのはもちろん、口調も非常に丁寧。おそらく話をしていて不快な気分になる人はまずいないだろう。

 「当たり前のことですが、119番通報をするということは緊急事態であり、その方が動揺している状態がほとんど。そういう方に冷静になってもらい、正確かつ迅速に情報を引き出すのが我々の仕事です。そのためには我々が何より落ち着き、相手に安心してもらう必要があります」

 理想の対応時間は1分以内。そのなかで現場の状況および住所などを引き出す訳だが、現場の目印になる建物や、現場までの経路など、現場の隊員が活動しやすい情報が何かを想像しながら引き出す能力が、各室員には求められると言う。

119番通報の増加により、緊急性の低い救急相談などの問い合わせに対応する「救急相談センター」も併設している

119番通報の増加により、緊急性の低い救急相談などの問い合わせに対応する「救急相談セン ター」も併設している

 「近年は携帯端末からの通報が増えていますが、固定電話に比べ場所の特定が難しく、電波状況が悪く途中で切れてしまうこともある。より限られた情報の中で迅速かつ的確に情報を聞き出すことが求められています」

 夜間でもほぼ通報が止むことがないという総合指令室。そこで常に神経を使い対応を重ねる業務は、庁内でも屈指のハードさと言われているそうだが、佐藤主任はこの仕事が自分の天職だと言い切る。

 「室員一人ひとりが災害現場と消防庁をつなぐ最初の窓口ですから、その責任は大きく、だからこそ迅速かつ的確に対応できたときの達成感は、計り知れません。そしてその達成感を得るためには、常にベストな対応をしようという姿勢と努力が不可欠です。そうした常に上を目指す姿勢を、若手の室員たちには持ってもらいたいと思っています」

 

【プロフィール】
1970年岩手県生まれ。1989年東京消防庁入庁、同年12月に金町署に配属、ポンプ隊に従事。1998年に池袋署にて指揮隊通信担当に配属後、翌年本庁警防部総合指令室に配置。8年2ヶ月任務に就く。2007年10月荒川署で指揮隊通信担当、2009年大森署で指揮隊指揮担当を経て、2012年4月より現職

 

  
 

 

 

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