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局長に聞く58 東京都環境局長2013年09月20日号

 
環境先進都市の姿を世界へ
東京都環境局長 長谷川明氏氏
東京都環境局長 長谷川明氏

 東京都の各局が行っている事業について局長自らが紹介する「局長に聞く」。58回目の今回は環境局長の長谷川明氏。環境局はこれまで、ディーゼル車の排ガス規制など、現場をもつ強みを生かした環境施策を展開してきたが、震災後に直面した新たな課題への取組状況、生物多様性の保全に向けた施策についてお話を伺った。

(聞き手/平田 邦彦)

新たな課題を乗り越えて

—4年ぶりに環境局に戻られたそうですね。

 4年間で局を取り巻く環境は大きく変化しました。特に東日本大震災以降、災害廃棄物受入れ、エネルギー、放射能対策など、これまで経験のない困難な課題に直面しました。

 これらの課題を乗り越えられたのは、ディーゼル車規制をはじめ、都民や事業者のみなさんの協力を得て取り組んできた積み重ねが、「組織のDNA」として職員に受け継がれているからだと思います。

—東京都は様々な環境施策を進めてきました。

 ディーゼル車規制では、石油や自動車等の各業界の協力を得て、国に先駆けた規制を実施しました。これによりSPMの大幅削減を実現しました。

 気候変動対策にも先駆的に取り組んでいます。この4月には都市エネルギー部を新設し、これまで取り組んできた省エネなどと併せ、エネルギーの需給両面から総合的に施策を進めています。

—まず気候変動対策の内容について伺います。

 都は2010年度から、業務・産業部門の大規模事業所からのCO2削減を求める世界初の都市型のキャップ&トレード制度を実施しています。対象事業所のご努力で、CO2削減実績は2010年度は13%、2011年度は23%と、義務量を大きく上回っています。震災後に節電が進んだことも、大幅な削減につながりました。

 制度の対象とならない中小規模事業所向けには、昨年度、CO2の排出水準を他事業所と比較できるベンチマークを作成するなど、取組を支援しています。

 さらに、自動車からのCO2削減のため新たに貨物輸送評価制度を始めました。貨物自動車の実走行燃費を定量的に評価するもので、本格実施初年度の今年度は149社に評価を受けていただきました。

 このように気候変動対策を進めていますが、温室効果ガス削減はもとより、防災や電力供給の現状に鑑みても都市の課題として省エネやエネルギー問題に取り組むことが重要です。

—エネルギー問題は。

 都は低炭素・快適性・防災力を同時に実現するスマートエネルギー都市を目指すという目標を掲げています。

 そのひとつとして電力需給の効率的な制御によりピーク時の電力消費を抑える仕組みを推進しています。

 家庭では、HEMSを中核に燃料電池等を活用したスマートハウスの導入が始まっています。2020年に現在の約2・5倍の3兆6千億円を超える市場拡大が見込まれるなど、新たな技術革新の進展やビジネスチャンスを生み出す成長産業です。

 初期費用軽減を図るため、燃料電池や蓄電池等への補助制度を創設し、家庭のエネルギー利用の効率化と市場活性化を後押しします。

 オフィスビルでは、震災後、特に高度の省エネ・節電機能や、自前の発電機能を備えた高機能ビルへの需要が高まっています。

 この機会をとらえ、環境性能の高いコージェネレーション設備や、中小テナントビルへのBEMSの導入を支援する制度を創設し、普及を進めています。

 

生物多様性の保全に向けて

—最近、「生物多様性」という言葉をよく耳にします。

 昨年5月、生物多様性の保全に向けた基本戦略「緑施策の新展開」を策定し、緑に関わる行動を「まもる」「つくる」「利用する」の3方針に分類しています。

 東京の気候風土に適した植物を増やせば、そこに宿り、餌とする在来の鳥や昆虫などの保全・回復につながるということが基本です。

—「まもる」取組は。

 東京には、小笠原から奥多摩の雲取山まで豊富な自然があります。

 都内に残された貴重な自然地49ヵ所・約750ヘクタールを保全地域に指定してきましたが、今後は希少種の保全を意識した管理に重点を置き、生物多様性を維持向上させます。

 世界自然遺産となった小笠原諸島も、引続き外来種・移入種の対策を徹底し、小笠原だけに生息する固有種を守っていきます。

—「つくる」は。

 区市町村の在来種植栽を支援する「江戸のみどり復活事業」を開始し、都立公園など都内の大規模緑地に生息する鳥や昆虫などのエコロジカル・ネットワークを拡大する取組を進めています。

 郷土種の緑化が普及すれば、在来の生き物への都民の関心も高まり、生物多様性の理解にも寄与すると期待しています。

—「利用する」は。

 東京にはミシュランガイドで三つ星評価を受けた高尾山や、奥多摩、島しょ部の自然公園、都民の森など、自然に親しめる場所が数多くあります。

 昨年度は御岳ビジターセンターを改修しました。今後も施設の改修など魅力向上対策を着実に実施します。

—取組を進めるために何が重要でしょうか。

 環境分野の仕事は、社会全体で取り組まなければ解決できません。我々の仕事も、区市町村や事業者、都民のみなさんと一緒に進めていくのが基本です。

—五輪は環境局にとっても大きな励みですね。

 五輪開催は都市そのものを海外の方々に見てもらえる大きなチャンスです。

 今後も先進的な環境政策に取り組み、世界一環境負荷の少ない都市を目指している姿を見ていただきたいです。

 

 

 

 

タグ:東京都 環境局

 

 

 

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