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1 The Face トップインタビュー2013年12月20日号

 
東京都議会議長 吉野利明さん
意思疎通ができて、初めて両輪が機能します。

東京都議会議長 吉野利明さん

 2020年東京オリンピック・パラリンピック決定の瞬間はブエノスアイレスの国際オリンピック委員会総会の会場にいた。2016年五輪招致から活動に携わり、感動はひときわだった。大会組織委員会設立など、いよいよという矢先に発覚した猪瀬都知事の金銭問題。都政を停滞させないために、いかに議会を運営していくのか。2020年五輪開催までの道のり、都市外交のあり方などを都議会議長、吉野利明さんにうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

議会は車の両輪の一方、二元代表制の意味とは……。

—満場一致で議長に就任されました。一議員から議長という責任ある立場になられた感想をお聞かせください。

吉野 大変だなぁの一言です。それに、とにかく忙しい。まぁ、それが役職の重さなのだと思っていますが、2020年東京オリンピック・パラリンピック招致に関わり、あるいはスポーツ祭東京で天皇皇后両陛下をはじめ、いろんな方にお会いする機会を得られたので、忙しいけれども、大変光栄な役回りであり、ありがたい限りだと思っています。

 しかし、10日ほど前から猪瀬知事のいろんなことが出てきまして……。

—議会運営はもちろんですが、さまざまなところに影響が出てきそうですね。

平成25年8月8日 東京都議会の議長就任した吉野氏

平成25年8月8日 議長就任

吉野 そうですね。年明けには知事から予算原案が示され、それに基づいて予算特別委員会設置という流れなんですが、その直前ですし、オリンピックも組織委員会を立ち上げなければなりません。加えて、競技場の建設など東京都として造っていかなければならない物があるので、停滞を懸念する声はいろんなところから出ています。

 本当に、なんでこの時期に……。まぁ、どの時期だって、こんなことが出てくるのはおかしいんですけれど、最悪のタイミングだと思いますね。

—やはり多少の停滞はやむを得ないという感じなのでしょうか。

吉野 そばにいる我々だけでなく、マスコミの皆さんも都民の皆さんも、あの説明を聞いて、とてもじゃないが納得できるものではない。やはり議会としてきちっと説明責任を果たしてもらうために、質疑を重ねていかなければならないと思っています。

 それにしても、所信表明で初めて議会に対して行った説明が、マスコミに説明したのと同じものというのは、ちょっとね。問題発覚直後に、あきる野市の総合防災訓練で知事に会ったんですが、「おはようございます」と声をかけても「あぁ……」で終わり。「議会に迷惑かけて申し訳ない」という言葉を期待していたんですけど、何もなし。

—政治家としての経験不足というかセンスがないというか。

吉野 作家としての実績や道路公団の民営化で評価されて副知事に就任し、副知事として働いていた人が、石原前知事に後継指名されていきなり政治家になった。だから、政治家としてのセンスを磨き、高めるのはこれからだったんだけれども、そのスタートでこういうことが起こった。

 猪瀬知事は「議会は車の両輪の一方だ」と言っていましたけど、本来の二元代表制・車の両輪という意味を、知事としてどこまで理解をしてくれているのか。

—知事就任当初から、吉原幹事長が「もうちょっと風通しを良くしてください」とか、いろいろ呼びかけはしていたんですよね。

吉野 石原知事の頃、私が幹事長をやっていた時には、知事から誘われたりこちらから誘ったりして年に1、2回は飲み会をやって、いろいろ話をする場を作っていましたけど、猪瀬知事とは去年12月当選して以来今日までゆっくり話をする場は、議会側としてありませんでした。それはやはり都民にとって不幸なことで、なぁなぁになるわけじゃないけれど、しっかり意思疎通ができ、情報を共有して、それぞれがアイデアを出し合うという関係ができれば、まさに両輪という意味合いになると思うんですがね。

 

「おもてなしの心」を日本の文化として社会の中に再生する

平成25年9月10日 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定都民報告会

平成25年9月10日 2020年東京オリンピック・パラリンピック開催決定都民報告会

—就任早々、オリンピック招致の派遣団代表としてブエノスアイレスを訪問されましたが、招致 成功を振り返っていかがですか。

吉野 国民の皆さんすべてが感動されたと思いますが、とりわけ感動した一人だと。16年招致からずっと関わってきていて、残念な結果に終わった前回のコペンハーゲンも行きましたので、そのことからしても今回はものすごい感動でした。

—私も、夜中にライブでプレゼンテーションを見ましたが、本当にオールジャパンという感じが伝わってきました。これから7年後に向けて東京はどのように進んでいくのですか。

吉野 これからは組織委員会中心に、大会開催のためのさまざまな準備を進めていくことになります。

 まずは、競技施設の建設ですね。プレ大会がありますので、1年前には完成させるとなると、時間はそんなにありません。これまで日本はあまり景気が良くなかったので、建設業界・ゼネコン含めてみんな体力が落ちています。そこに一気にご馳走みたいにドーンと仕事が出てくるので、これをどう消化していくか。これが競技場建設にとっては大きな課題だと思いますね。

 もうひとつはクリステルさんが言った「おもてなし」を、日本の社会の中にもう一度文化としてきちっと作り出していく。昔は当たり前にあったおもてなしが、今は食品偽装をはじめとして、探すのが大変なくらい薄れてしまっています。その「おもてなしの心」を日本の素晴らしい文化の一つとして、社会の中に再生していくいいチャンスだろうと思っています。

 加えて、オリンピックですから当然、スポーツの裾野を広げていく。トップアスリートを目指さなくてもいいので、多くの人が生涯スポーツを持つことの素晴らしさを認識し、自分でもスポーツを行うという社会を広めていく機会にしたいですね。

—確かに一気に目の前にご馳走が来てしまっても、とても食べきれる量ではないかもしれませんね。

吉野 これは余談ですが、国のカジノ議連がオリンピックまでに法案を通してカジノ開催という動きが出てきていますけれど、オリンピックの仕事は大方19年までに完成します。その後は仕事が減るでしょうから、カジノを含め国際会議場やホテルはその後にスタートさせればいいだろうと私は思うんです。

 そのことによって建設業界も仕事がずっとつながっていくし、人手不足の騒ぎも少し緩やかにできるのではないかと。

 そして、それらが完成する頃には、また来訪者が来てくれる。こういう継続性を持たせることが大切なのではないかと思います。

 

都市外交を積み重ねることで、国の外交も良くなることが期待できる。

—オリンピック招致もその一環だと思いますが、都市外交はこれからますます重要になるのではないかと思います。

平成25年11月11日 アメリカ合衆国コロラド州観光局長表敬訪問

平成25年11月11日 アメリカ合衆国コロラド州観光局長表敬訪問

吉野 東京は世界に名だたる都市ですから、東京の都市外交は、この国にとっても大事だと思います。友好都市でなくても、これから大事になってくる。この間もコロラド州の観光局長やブエノスアイレスの市議がいらっしゃいました。今、議会局にとりあえず海外担当でもいいから作ってくれとお願いしているんですよ。

平成25年11月19日〜11月21日 東京都議会友好交流団 ソウル特別市派遣

平成25年11月19日〜11月21日 東京都議会友好交流団 ソウル特別市派遣

—中国や韓国との関係も国レベルだとちょっとギクシャクしていますけど、都市レベルでしたらまた別の友好関係もできるかもしれませんものね。

吉野 そうなんです。都市外交を積み重ねていくことによって、国のほうも何とかなってくることが期待されますからね。

 今、ミャンマーと行き来しているのですが、これも都市外交の一つだと思っています。

—ミャンマーに行かれているのは、水道とか下水道の件ですか。

吉野 首都ネピドーで導入したいということで進めているのですが、あちらは大統領直轄の国家なのに対し、こちらは都という自治体です。いくら東京にあるノウハウを提供しますと言っても、現実には水道局・下水道局・環境局とか外郭団体も含めて表に出てきてくれないと動かない話なので、知事と直談判してほしいと申し入れたところが、今度のごたごたです。なかなか簡単に動かない。

—いろいろ影響が大きいですね。

Cはい。今月13日にミャンマーの大統領が訪日するので、その時にネピドーと合意書MoUを結びたいと思っているんですけどね。

—スポーツ関連では多摩国体「スポーツ祭東京」も成功裏に終了しました。地元議員の立場として多摩の復興振興についてどのようにお考えですか。

吉野 東京都の人口推計予測からすると、多摩は2015年がピークで、その後、減少に転じる。東京全体でも2020年がピークだろうと予想しています。

 それぞれの自治体が人口減少にどう対応した街づくりをしていくか、その街の魅力をどうアピールして人口減少を食い止めるかというのは、ある意味、自治体間の競争になってくる。東京都はそれを多摩という一つのくくりで、振興策を考えなければならないと思います。今までも「多摩シリコンバレー」とかいろいろ取り組んできましたが、多摩の振興は、たいへん難しい舵取りになるだろうと思います。

—先ほど生涯スポーツが大事とおっしゃっていましたが、ご自身では何かスポーツはされているのですか?

吉野 ゴルフもなかなかやってる暇がないですし、カラオケだけです(笑)。

—十八番は?

吉野 例えば、老人会の集まりでは、春日八郎の「赤いランプの終列車」とか古い歌を歌いますが、自分でカラオケのスナックに行く時は、今日は女性歌手にしようと思えば、島倉千代子、美空ひばりから始めるとか、男性歌手なら、森進一、五木ひろし、布施明……。時には軍歌ばっかりの時もあります。ただし、ほかにお客さんがいると歌いません。ある時、仕事が早く終わったので、お客が来るまで歌うと歌い始めたら、デンモク(目次本とリモコン機能を一体化させた電子目次本)4ページ、32曲歌ったことがあります(笑)。

—えぇ~、ぜひお客さんの前で歌ってください(笑)。

※このインタビューは12月2日に行ったものです。

 

東京都議会議長 吉野利明さん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
よしの としあき
昭和22年生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。平成3年より三鷹市議会 議員を2期務める。9年より東京都議会議員5期。17年、都議会自民党総務会長、19年、都議会自民党幹事長、21年、都議会オリンピック・パラリンピック招致特別委員長などを経て、25年より都議会議長。東京都議会自由民主党

 

  
 

 

 

タグ:東京都議会議長 吉野利明 2020年東京オリンピック

 

 

 

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