HOME » サイトマップ » 社会に貢献するために INDEX » 社会に貢献するために 第7回 日本赤十字社

社会に貢献するために 第7回 日本赤十字社2014年01月20日号

 
大規模災害や緊急事態に対応する緊急対応ユニット 2013年11月のフィリピン台風被害でも活躍
日本赤十字社

日本赤十字社

 昨年10月、伊豆大島を襲った台風は大きな被害をもたらしたが、その直後の11月に発生したフィリピン台風もまた、現地に大きな爪痕を残した。世界各国からさまざまな救援部隊が駆けつけたが、日本赤十字社による基礎保険ERU(Emergency Response Unit/緊急対応ユニット)もいち早く現地に赴き、医療活動をスタート。保健・衛生知識の普及も視野に入れた中長期的活動は、2ヶ月後の現在も継続中だ。

(取材/種藤 潤)

台風発生5日後には現地に入り2週間後には本格的に活動

 2013年11月8日。フィリピン中部を襲った台風30号は同国に大きな被害を与えた。被災者は約1600万人、損壊家屋は約114万棟、死者は約6000人、行方不明者は約1800人にものぼった(2013年12月現在)。

 その被災地を支援すべく、日本赤十字社(以下、日赤)は大規模災害への緊急対応の専門チーム「ERU/緊急対応ユニット」の派遣を決定。セブ島最北部のダンバンタヤン郡マヤ村に計15名の初動チームを送った。チームは医師であるチームリーダーを中心に医師4名、看護師長1名、看護師1名、臨床心理士1名、事務管理・技術要員5名、広報2名の編成。今回取材した石橋奈緒子さんは、事務管理スタッフとして現地に赴いた。

フィリピン台風災害に対し、日赤ERU第1班として現地に派遣された石橋奈緒子さん

フィリピン台風災害に対し、日赤ERU第1班として現地に派遣された石橋奈緒子さん

 「報道では都市部であるタクロバンの被害の大きさがクローズアップされていますが、そこには各国から救援隊やボランティアが多く駆けつけていました。我々は日赤ERUが必要とされる場所を検討し、その結果、タクロバンではなくマヤ村に拠点を置くことにしました」

 同郡は地域唯一の診療所が損壊してしまったこと、9割以上の住居が損壊し屋根のない住居となってしまったこと、給水やトイレなど衛生環境が悪化したことなどから、基礎保健を専門とする日赤ERUの救援が必要と判断。台風発生5日後には先遣隊が入り、11月20日からは本格的に活動が始まったという。

 

救援活動だけでなく保健衛生環境の改善も目指す

現地に設置された仮設診療所。今回のERU活動の中核的拠点であり、写真のように看護師や医師が被災者を診療。当初は一日70人も訪れたという

現地に設置された仮設診療所。今回のERU活動の中核的拠点であり、写真のように看護師や医師が被災者を診療。当初は一日70人も訪れたという

 ERUとは、1980年から1990年にかけて起こったアルメニア地震、湾岸戦争中の難民発生などを契機に、緊急事態・大規模災害への即応体制構築の必要性から誕生した組織。現在18カ国の赤十字・赤新月社にERUが整備され、大災害等が発生した現場に各国のERUが集結、総合的な救援活動が行われる仕組みになっている。ちなみに各国ERUには「病院」「基礎保健」「給水・衛生」「通信機器」など専門性があり、前出の通り日赤ERUは「基礎保健」を専門とする。

 セブ島での具体的な活動は、以下の4要素で構成された。(1)「仮設診療所の開設」:倒壊した診療所の代わりにクリニックを設営し診療を実施。(2)「巡回診療」:診療所を拠点に、ダンバンタヤン郡の20の全村を巡り、診療を実施。(3)「地域保健教育プログラム」:巡回診療に同行し助産師やヘルス・ケア・ワーカーから地域の状況をヒアリングし必要な保健教育を実施。(4)「こころのケアプログラム」:臨床心理士のアドバイスのもと、地元の助産師たちが患者の心理状態をチェックし、その対応に当たり、同時に子どもたちの遊び場を提供、精神的不安を持つ子どもの有無をチェックする。

巡回診療の様子。ダンバンタヤン郡20カ所を巡り、診療をする他、地元助産師たちへの「地域保健教育プログラム」も行った

巡回診療の様子。ダンバンタヤン郡20カ所を巡り、診療をする他、地元助産師たちへの「地域保健教育プログラム」も行った

 緊急災害時には(1)(2)がもちろん重要だが、基礎保健を担う日赤ERUは、特に(3)(4)の役割が大きいと石橋さんは言う。

 「この地域は経済的にも厳しい地域で、医療や衛生環境が十分に整っていませんでした。我々が今回関わることで、人々が中長期的な視点で健康に取り組めるような基盤づくりをすることも大切な目的のひとつです。ですから常に意識したのは、サポート役に徹すること。今後、彼ら自身が自発的に衛生環境の改善や健康管理の正しい知識を身につけていけるよう、会話や行動を意識していました」

 

災害の復興の主役はあくまで現地の人々

 台風発生から2ヶ月が経った現在も、日赤ERUは活動を継続中だ。今年1月8日には第3班が派遣され、今も(3)(4)を中心に活動が行われているという。

 その初動チームである第1班として活動した石橋さんは、復興において重要なのは、現地とのコミュニケーションだと言い切る。

「こころのケアプログラム」のなかで、折り紙を取り入れ現地の子どもたちの苦痛の軽減につなげる日赤ERUの臨床心理士(中央)

「こころのケアプログラム」のなかで、折り紙を取り入れ現地の子どもたちの苦痛の軽減につなげる日赤ERUの臨床心理士(中央)

 「救援活動といっても、現地で必要とされる活動でなければ意味がありません。そのために現地の赤十字スタッフや地元の人たちと綿密に情報共有し、何が求められているかを理解した上で活動することが大切。ニーズを把握し地域に密着した息の長い支援活動をするためにも、世界に展開する赤十字の組織力は、非常に大きなメリットとなります」

 そして今回の活動で石橋さんが痛感したのは、復興はあくまで住民が主役、ということだという。

 「私たちが助けたことよりも、現地の人に助けられたことの方が圧倒的に多かった。私たち日本人から見たら決して恵まれた環境ではなくても、現地の人はそのなかで前向きで、笑顔を絶やさない。そういう人たちの積極的な協力と地域を立て直したいという強い思いに支えられ、我々は迅速に支援活動が行えました。この経験を次の救援活動にも活かしていきたいと思います」

 

 

 

 

タグ:日本赤十字社 ERU 緊急対応ユニット フィリピン台風 ダンバンタヤン

 

 

 

定期購読のご案内

NEWS TOKYOでは、あなたの街のイベントや情報を募集しております。お気軽に編集部宛リリースをお送りください。皆様からの情報をお待ちしております。

都政新聞株式会社 編集室
東京都新宿区早稲田鶴巻町308-3-101
TEL 03-5155-9215  FAX 03-5155-9217
一般社団法人日本地方新聞協会正会員