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仕事に命を賭けて Vol.712014年05月20日号

 

東京湾岸警察署 水上安全課
警備艇『ふじ』船長
小野関聖治

 文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。  前号で紹介した山岳救助隊という「山の警察」に続き、今号では東京湾岸及び河川周辺を担当する「水の警察」を取り上げる。東京湾岸警察署・水上安全課は、警視庁で警備艇を運用する唯一の組織。その警備艇の象徴ともいえる『ふじ』の船長にお話を伺った。

(取材/種藤 潤)

水域・陸地合わせて23区最大の面積を管轄

東京湾岸警察署 警備艇『ふじ』

小野関船長が担当する、同署最大規模を誇る警備艇『ふじ』。管轄内のシンボルのひとつレイン ボーブリッジの前で

 東京湾岸警察署水上安全課の活動拠点の中核である「水上安全課別館」は、港区港南、いわゆる品川ふ頭にある「第五台場交番」と併設する形で立地。小野関聖治船長が操縦する、同課最大規模を誇る警備艇『ふじ』で東京湾を案内してもらった。

 まず港南から北東にレインボーブリッジに至り、豊洲ふ頭を眺めた後、今度は南に向かい大井・青梅コンテナふ頭、中央防波堤を通過し、2012年に完成した東京ゲートブリッジに。果てしなく広がる海上の景観に、東京湾の広さを改めて実感したー。が、小野関船長はぽつりとこうつぶやいた。

 「これは我々の管轄のほんの一部です」

 西は品川ふ頭を含む京浜エリアから多摩川河口まで。東は葛西臨海公園沿いの荒川河口。南は羽田空港のさらに南方まで。その総面積は計54.56㎢に及び、三宅島に匹敵する広さだという。

 加えてそこに流入する隅田川、荒川、中川小名木川の河川も管轄内。さらにそれらを取り巻く港区、品川区、大田区、江東区のふ頭、埋め立て地も含めて、同課の管轄になる。陸上と水域を合わせた面積は118.85㎢。23区内では最大、都内では青梅・五日市に次ぐ3番目の広範囲を担う。

 

警視庁唯一の水上移動の専門家集団

『ふじ』の操舵席での小野関船長

『ふじ』の操舵席での小野関船長。手慣れた操作で東京湾岸を案内してくれた

 これら管轄内を大小合わせ22隻の警備艇を駆使し、(1)海上保安庁や税関・入国管理局・港湾局と連携した密輸等の取締、(2)遺体収容や 捜査・捜索活動、(3)船舶事故等による救助活動、(4)要人警護やテロ対策・湾岸イベント等の警戒警備活動、(5)地震や台風などの災害派遣活動、などを行っている。

 そのなかで、小野関船長が舵をとる『ふじ』は、全長20mを超える大型船の特徴を生かした活動を行っている。

 「大型で装備も充実した『ふじ』は、羽田空港など比較的沖合での任務が中心です。長期停泊できるため、夏は伊豆大島方面に出動し、観光客の水難事故への対応も行っています」

 『ふじ』に乗船するのは、操船を担う小野関船長のほか、船舶のメンテナンスを行う機関長と機関士。ちなみにほかの小型船舶だと船長と機関士2名のみの編成になる。

警備艇『ふじ』

2012年に完成した東京ゲートブリッジも同署の管轄内。周囲にはコンテナ船などがひっきり なしに往来していた

 そこに警察官らが同乗し、各種活動を行う。実は小野関船長はじめ、水上安全課は海技職という専門職で、警察官ではない。

 「我々は警視庁内唯一の水上移動の専門家集団です。そこに湾岸署を中心とした警察官が同乗し、彼らの水上移動をサポートする。それが我々の任務です」

 一方、前述の通り陸上も管轄となるので、特殊詐欺(おれおれ詐欺など)をはじめ、各種防犯対策なども任務として行っているという。

 

湾岸の変遷とともに警備手法も変わる

 小野関船長は、海技職として18年のキャリアを誇るが、今も任務に対して慣れることはないという。

警備艇『ふじ』
警備艇『ふじ』

上2枚:『ふじ』の船内。30名が乗船できる他、ミーティングルーム、調理スペースなども完備

 「同じ場所でも、天気や時間帯、季節、そして潮目の変化により、移動で気をつけるべきことは大きく異なります。その際に大切なのは、船員同士のコミュニケ―ション。あらゆる場面で意思疎通できる関係を構築していることが大切です」

 また、18年という月日を経て警備手法も大きく変わった、とも付け加える。例えば2010年に羽田空港に完成した「D滑走路」。これにより多摩川までの移動では大きく迂回する必要が生じた。

 「数年後、『船の科学館』近くに新たに桟橋ができ、さらに湾内の移動は変わります。その変化を迅速に理解し、対応することも海技職には求められます」

 そうした変化の最たるものが、2020年に予定されるオリンピック会場の整備だ。管轄内には計19会場が設置される予定だという。

 「その周辺の警戒警備の中心は、海上移動を担う私たち。それに備えた体制づくりと、個々の能力の向上が求められると思います」

 近年は伊豆大島の台風被害など、大きな災害派遣での活動の機会も増えつつある。それらに対応するためにも、一層操船技術の向上に励みたいと、小野関船長は力強く語った。

 

【プロフィール】
1969年、東京生まれ。1989年、清水海員学校(現・国立清水海上技術短期大学校)を卒業、一般客船の乗船を経験。その後1996年に警視庁に海技職として入庁し、東京水上警察署舟艇課(現・東京湾岸警察署水上安全課)に配属。各種警備艇での乗船任務を経て、2014年4月より現職。

 

  
 

 

 

タグ:東京湾岸警察署 水上安全課 警備艇『ふじ』 

 

 

 

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