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1 The Face トップインタビュー2015年02月20日号

 
東京トヨペット株式会社 代表取締役社長 古谷 俊男さんさん
生産や技術面と同様に、販売・サービスの面でも、世界の先頭を走りたい。

東京トヨペット株式会社 代表取締役社長
 古谷 俊男さん

 自動車メーカーの役員から、ディーラーのトップに転身。5年後、10年後の環境変化を見据え体制と仕組みを再構築、「夢のある東京トヨペット」づくりに邁進する。その背景と狙いを、東京トヨペット株式会社代表取締役社長、古谷俊男さんにうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

本部組織をスリム化、すべきこと、目指すことを部署名に

—2010年に社長に就任されて、まずなさったことはどのようなことですか。

古谷 東京トヨペットはトヨタ自動車の直営店であり、私もそうですが社長は歴代トヨタから来ています。まずは、現地、現物、現実をしっかり見るのがトヨタ式でもありますので、1年目は105の拠点にできるだけ足を運びました。現場では営業もエンジニアも汗をかいて一生懸命やっているけれど、東京のマーケットはなかなか厳しく、先々の夢がなければ長く頑張ることはできないのでは、というのが第一印象でした。

 そこで、社員が少しでも明るい夢を持てるような会社にしたいと、2年目に入る時に、お客様の声を「いいクルマ」のアイデアとしてメーカーに伝えることを通して社員がもっと車を好きになるような活動を始めたり、奥さんや子どもさんがお父さんの職場を見学するファミリーデーを設けたりしました。また、これは私の発想ではないのですが、役員が若い社員に東京トヨペットの強みとか風土、つまり会社のDNAを伝えるために役員塾も始めました。

 そして3年目は構造を変えようと考え、組織の縦割りの弊害を小さくし、業務のダブりなどをなくすのと同時に、現場へのサポート要員を捻出するために、本部組織のスリム化、「大ぐくり化」を行ったんです。

—それで部署名が特徴あるものに変わったのですね。

ファミリーデーで社員の子どもと名刺交換

ファミリーデーで社員の子どもと名刺交換

古谷 組織を統合すると、新しい名前が必要になりますでしょう。組織の名前は仕事の内容を表すわけですが、すべきこと、目指すことを名前にしてもいいんじゃないかと、お客様相談センターとコールセンターを統合して「お客様大満足部」と名付けたのがスタートです。そして「お客様大満足部」があるなら「社員大満足部」があってもいいと、人事部、管理部の秘書グループ・総務グループを統合した部署の名前にしました。

 また、夢を持てる会社を目指すわけですから、経営企画部と管理部にコンプライアンス統括推進部を統合して、「夢づくり推進部」としました。さらに、例えば千代田区、中央区、港区を担当する営業部は、日本の真ん中で営業する誇りを持って地域に合った営業をしてほしいということから「日本のど真ん中営業部」、下町は「江戸っ子下町営業部」といったノリで発想しました。結論から言えば、その名称では恥ずかしいと言われ、それぞれ「都心営業部」、「下町・北部営業部」で落ち着いたんですけどね(笑)。

—名称が変わることで、社員のモチベーションも変わるのでしょうね。

古谷 名前もすごく大事ですけど、中身も含めてやらないとなかなか成果にはつながらないと感じています。名実ともに変えたことにより、社内の見方が変わり、モラルアップしている人もけっこう出ています。そういう意味での成果はあったと思っています。

 

空中戦と地上戦をドッキングさせたポスティングでお客様獲得を目指す

—若者の車離れは深刻な問題なのでは?

古谷 そうですね。ただ、新車の価格が小型車でも税金など含めると200万円する時代ですから、若い人は経済的に大変だと思います。ですから、新車だけを入り口にしていてはだめだということで、中古車をUカー(Used Car)と呼んでいますが、Uカーであるとかサービスを入り口にして間口を広げ、できるだけ若いお客様と接点を持つようにしています。

 また、当社の個人のお客様は25万軒あるんですが、その平均年齢は58歳を超えています。その人たちにあと何台車を買っていただけるか。5年先、10年先を考えると恐ろしいですよね。

燃料電池自動車「MIRAI」

燃料電池自動車「MIRAI」

—新しいお客様の獲得に向けて、どのようなことをされているのですか。

古谷 時代の流れからいうとインターネットとかIT系を使うのがいいと思い、2年半前から手を打っていますが、インターネットもテレビのコマーシャルも、ある意味、空中戦です。「いい車ですよ」とPRしているだけで、お客様が店頭に来て買っていただけるなら、こんな簡単な商売はありません。やはり一人ひとりの営業マン、あるいはサービスの人たちが、地上にいるお客様とフェース・トゥ・フェースでお話しできるような場をつくることが大事だと考えています。

 そこで、空中戦と地上戦をドッキングさせた方法として、今は主にポスティングに力を注いでいます。

 昔は、販売店は店ごとの商圏、営業スタッフのテリトリーがあって、何丁目に誰々さんが住んでいて、どんな車をいつ買ったかということが分かっていました。しかし15年くらい前からは来店型ですから、よく分からなくなりました。

 もっとも今は、いきなり訪問しても留守宅が多いですし、ドアホンを押しても応対していただけるとは限りません。ですから、ポスティングをして、もう一回テリトリーを勉強するという地道な活動を中心にやっています。

 それから、東京は法人のお客様が多いのですが、なかなか訪問できていないのが実情です。当社は54、55歳になると役職定年なので、法人様にはそういうベテランに経験の浅い若い人たちと同行訪問してもらっています。このように、個人と法人の2本立てで活動しています。

—車そのものを魅力的にしていくことも大事ではないでしょうか。

古谷 若い人たちがワクワクドキドキする車、女性の社会進出をサポートする車、高齢者がいつまでも長く安全に運転できる車、そういう新たないい車をつくっていくことが非常に大事だと思っています。

 カーメーカーは、国内である規模の生産をしておかないと、新しい技術の開発とかいい車づくりにつながらないんですね。

 円安になっても輸出は増えず、貿易赤字はずっと続いています。円安になったからといって、円高の時に海外に展開した生産拠点をすぐに国内に戻すことは無理です。その拠点では人が働いていますから。

 従って、メーカーにもお願いしているのですが、国内の生産を守るためにも国内で売れる車、国内に合った車を提供していかなければならないと思います。

 

世界に先駆けてFCVを発売したことはたいへんな誇り

—東京都で事業を営むに当たって、意識していることはございますか。

多摩ニュータウン店の防災備蓄品

多摩ニュータウン店の防災備蓄品

古谷 いろいろありますが、一つは耐震化です。2015年度中には「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」への対応が完了する予定です。

 また、災害時に備えて、1店舗当たり100人が3日間過ごせる食料や水、エアーマット等の備蓄をしています。最初は新築した店舗で始めたのですが、既存の店舗も同じことなので、同様に準備をすることにして、今は77店舗で対応ができています。

 それから、子どもがいざという時に助けを求めて駆け込める「子ども110番」も、都内のオールトヨタ販売店でやっています。

—それは心強いですね。

防災備蓄品

防災備蓄品

古谷 東京の各地域に数多くの店舗を構えている企業だからこそ、地域社会との関わりを大事にしているんです。

—では、都への要望などはございませんか。

古谷 ぜひともお願いしたいのは、用途地域のことです。店舗を建て替える場合、今の法律が適用されるので、サービス工場などの面積が減ってしまう。整備できる台数が減るので、結果的にはユーザーに迷惑をかけることになります。設備、機械がよくなって環境負荷も少ないのですから、柔軟に対応をしていただければ大変ありがたいと思います。

 もう一つは、世田谷の上馬にお店があるんですが、ここは敷地の中で用途地域が違うんですね。商業用地として認められる敷地と住居地域は車の出入りはまかりならんという法律らしく、境に柵をしろと言うんです。だから、わざわざ大渋滞している国道246号線に出てグルーッと回って裏の駐車場に持って行くことになるので、結局周辺の方々に迷惑をかけています。法律を杓子定規にとらえればそのとおりなんでしょうけど、なんなんだろうと思いますね。

—昨年末にトヨタ自動車から燃料電池車(FCV)「ミライ」が発表されました。2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて、期待が高まっていますね。

古谷 世界に先駆けてFCVをメーカーが出してくれたことはたいへんな誇りです。日本のエネルギー事情を考えても、水素社会という選択肢は必定だと思いますし、10年、20年という単位で考えれば、素晴らしいものになると思います。

 舛添知事が2020年には6000台、2025年には2万台とおっしゃっていましたが、生産面やインフラ面からいうとそこまで普及するかはまだ分かりません。しかし、2020年には世界中からお客様がたくさんいらっしゃるのですから、トヨタの、そして日本の技術力をアピールするチャンスになることは間違いありません。

 トヨタはトヨタ生産方式や先進技術が全世界的に知られていますが、お店のハードやおもてなしのソフトなど販売・サービスの面でも、日本の販売店が世界の先頭を走っているということを見ていただけるようにしたいですね。

 1964年の東京オリンピックのいろんな名場面を、今でもはっきり覚えています。そういう感動を今の子どもたちにもぜひ味わってほしいですし、東京だけでなく、日本全体が元気になるようなオリンピックになるとすごくいいと思っています。

 

東京トヨペット株式会社 代表取締役社長 古谷 俊男さんさん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
ふるたに としお
1953年、京都府生まれ。76年、京都大学経済学部卒業、同年、トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。国内企画部長、海外事業企画室長、トヨタ自動車(中国)投資有限会社取締役社長、一汽トヨタ自動車販売有限会社取締役社長を経て、2004年、常務役員。09年、専務取締役。10年、東京トヨペット代表取締役社長就任。

 

 

 

 

タグ:東京トヨペット株式会社 FCV, Fuel Cell Vehicle, MIRAI, 燃料電池自動車, 水素社会

 

 

 

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