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社会に貢献するために 第10回 帝人フロンティア(株)後編2015年05月20日号

 
高品質かつ制約のない「ケミカルリサイクル」技術、 そして地域全体の協力があって「捨てない体操服」は実現する【後編】
帝人フロンティア株式会社

帝人フロンティア株式会社

 前号に引き続き、京都市からスタートした「永遠に捨てない体操服」を作り上げる『体操服!「いってらっしゃい、おかえりなさいプロジェクト®」(※)』を取り上げる。さまざまな「偶然」により京都市内で具体化したこのプロジェクトは、最新のリサイクル技術だけでなく、地域全体のサポートがあって初めて成立したのである。

(取材/種藤 潤)

偶然着ていた衣服が
帝人フロンティアとの縁を作る

 「やろうと決めたのはいいのですが、誰に『捨てない体操服』を作ってもらえばいいのか分からない。そこで、いつも着ているリサイクル可能な衣服に用いられていた『ECO CIRCLE®』を思い出し、それを手がけている帝人ファイバー(現・帝人フロンティア)に電話したんです」

体操服!「いってらっしゃい、おかえりなさいプロジェクト®」を立ち上げた、写真家の岡部達平さん。今もプロジェクトの中心的存在として飛び回っている

体操服!「いってらっしゃい、おかえりなさいプロジェクト®」を立ち上げた、写真家の岡部達平さん。今もプロジェクトの中心的存在として飛び回っている

 京都市内の小学校で、2人の女の子から投げかけられた言葉をきっかけに、『捨てない体操服』づくりに着手した写真家の岡部達平さんだったが、リサイクルの専門家ではなく、人脈もゼロ。しかし、後にプロジェクトを行うことになる帝人フロンティアに行き着いた経緯が「偶然」なら、そのとき電話に対応した人との出会いもある種の「偶然」だった。そんな「偶然」が重なり、『捨てない体操服』は具体化していった。

 「対応してくださったのが、当時リサイクル事業の責任者だった部長で、『とにかく会社で会おう』と。お会いして詳しく話をすると、社として取り組むことを約束してくれたのです」

 今回取材に応じてくれた帝人フロンティア株式会社の吉田美和さんは、当時その部長の部下だったという。「営業のため不在にしがちな部長が、偶然席にいた。そのこと自体に、このプロジェクトの運命を感じずにはいられません」と振り返る。

 

高品質かつ制約がない
『ケミカルリサイクル』という技術

 これを機に、2007年より同社社内で『ECO CIRCLE®』を取り入れる形でプロジェクトをスタートさせた。

 ここで『ECO CIRCLE®』のリサイクルの技術について、一般的にペットボトルを用いるリサイクル技術と比較して説明しよう。

 まずペットボトルを用いる技術は『マテリアルリサイクル』といい、ペットボトルを砕いたものを溶かすことで中間素材まで戻し、軍手や産業資材など新たな別の製品に生まれ変わらせる。主にペットボトルが使用されるが、溶かした際に不純物が残り、品質に課題が残る。

 一方で『ECO CIRCLE®』で用いる技術は『ケミカルリサイクル』と呼ばれ、使用済みのポリエステル製品を砕いて粒にし、分子レベルまで分解してポリエステル原料に戻し、繊維など幅広い製品へと再利用する。原料は透明なペットボトルだけでなく、ポリエステル繊維製品まで対象は広い。さらに再生繊維の品質も高く、あらゆる製品へと再生展開できるなど長所がある。

 同社は1993年から「クオリティ・オブ・ライフ」を企業理念に掲げ、科学技術を社会貢献に役立てる取り組みを本格化。そのひとつとして『ケミカルリサイクル』開発に注力、『ECO CIRCLE®』を商業化させたのだ。

 その技術を用いた「捨てない体操服」用の生地は2008年には製品化に成功。しかし挑戦は、ここがスタートだった。『ECO CIRCLE®』を使って体操服を製品化するアパレルメーカー、その体操服の販売店、そして使った製品を回収する学校などのルート……そうしたリサイクルの各役割の協力なくして「捨てない体操服」は成立せず、その協力要請こそ最大の困難だったと、吉田さんは語る。

 「アパレルメーカー様や販売店様からすれば、生地が変わるだけで作業は変わらず、でも生地分の価格は上がり、デメリットばかり。当初はほとんど賛同が得られませんでした」

 学校へ説得に駆け回った岡部さんも、なかなか理解されない土壌に何度もくじけそうになったと振り返る。

 「自分の力不足もあり、学校側に理解されるまで時間がかかりました」

 しかし、またしても「偶然」により、2010年、ついにこのプロジェクトがスタートすることになる。

 

各自治体や学校の協力が「捨てない体操服」普及に不可欠

 京都市立御所南小学校の近くの蕎麦屋で、岡部さんが学校へのプレゼン資料をまとめていたときのこと。蕎麦屋の女性店員がその資料を目にし、問いかけてきた。プロジェクトについて説明すると、考え方に賛同。同小学校の校長を紹介してくれ、校長も「絶対にやろう!」と約束。学校側からの積極的な働きかけによって、協力体制も急速に構築、見事プロジェクトは動き出した。御所南小学校を皮切りに京都市内で徐々に拡大、現在は市内8割近くの小学校で採用されるまでになった。

「捨てない体操服」を着て学校の授業に参加する、京都市内の小学生たちの様子(岡部さん撮影)

 「やはり学校が主体的に動いてくださると、メーカー様や販売店の対応も非常に早いですね。あと、実際にリサイクル素材の体操服が、速く乾いて清潔で、しかも長持ちすることもメリットとして普及が進んだと思います」(岡部さん)

 現在、東京をはじめ全国に広がりはじめているが、東京でのプロジェクトをサポートする早川家正さんは、京都市とは違う“東京スタイル”が必要だと気を引き締める。

 「東京都の中古品の規制は厳しく、かつ取扱も自治体ごとに異なりますから、各自治体の状況を踏まえ、協力しやすい体制を作らなければなりません。最も大切なのは、プロジェクトを継続できる仕組みを作ること。そのためには各自治体や学校に加え、それを全体的に統括する東京都の理解と協力が不可欠です」

 岡部さんは苦労を語りつつも、「捨てない体操服」を着る子どもたちの笑顔で頑張れる、と語る。その笑顔を東京に広げるためにも、多くの「偶然」が起こることを切に願う。

 

※このプロジェクトは、写真家の岡部達平氏、旭化成アドバンス株式会社、帝人フロンティア株式会社の3者プロジェクトです

 

 

 

 

タグ:帝人フロンティア(株) 岡部達平氏 旭化成アドバンス (株)ECO CIRCLE(R)  捨てない体操服 ケミカルリサイクル

 

 

 

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