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仕事に命を賭けて Vol.832015年05月20日号

 

警視庁 第一機動捜査隊 隊長
原 きよ子

 文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。今年4月、都内の凶悪犯罪の現場に即座に駆けつける「第一機動捜査隊」の隊長に、初の女性隊長が誕生し、話題を呼んだ。その捜査への強いこだわりの根底には、性別を超えた犯人検挙へのたゆまぬ努力と、女性だからこそできた性犯罪捜査での経験が共存し、これからの捜査官としてあるべき理想の姿が感じられた。

(取材/種藤 潤)

現場にいち早く駆けつける初動捜査隊員120人を指揮

 「また現場に戻れてうれしいです」

 着任の感想を伺った際、緊張感を漂わせながらも、再び捜査の最前線に戻れた喜びを、原きよ子隊長は笑顔で語った。

 警視庁第一機動捜査隊は、殺人や強盗など凶悪犯罪の事案を中心に、事件発生が判明した直後、現場にいち早く駆けつける3つの機動捜査隊のひとつ。現在所属する隊員は120人。その隊員たちの指揮を取るのが原隊長である。

第一機動捜査隊着任後の原隊長

第一機動捜査隊着任後、隊員全員が集う教養日に、原隊長が隊員に対して訓授を述べる様子(文中写真提供:すべて警視庁)

 女性初の隊長として注目されているが、本人は隊長としての責任感は感じているものの、女性だからという気負いや衒いは一切ない。

 「やはり警察官として、犯罪捜査は最もやりがいを感じる仕事です。同時に、失敗が許されない真剣勝負。そのためにも常に隊員が高いモチベーションを保てるよう、隊長として取り組んで行こうと思っています」

 捜査の最前線といえば、まず「捜査第一課」を連想するが、近年はこの機動捜査隊も注目度が高く、署内でも希望する隊員が後を絶たないという。

 ただ一方で、3交代制の24時間体制で覆面パトカーで巡回。有事にはすぐに現場に駆けつけ、被害者から話を聞き、被疑者を検索。その後、捜査第一課などに引き継ぎ、すぐまた他の案件に備えて巡回を継続。体力的、精神的にも非常にハードな職務である。

 その上で捜査で最も大切なことは「犯人検挙です」と原隊長は、きっぱりと言い切る。

 「犯人を検挙することにどれだけこだわれるかが重要であり、そこは男性も女性も関係ありません。私自身そのために2倍も3倍も努力し、検挙につなげてきました。その結果が今回の隊長着任の要因だと思っています」

 

犯人検挙が第一だが被害者への配慮も大切

 初動捜査を担う捜査官として、検挙と同等に大切にしなければならないことがあると、原隊長は話す。

 「それは、被害にあった方への配慮です。『警察に届けてよかった』と思ってもらえるような警察を目指していかなければならないと思っています」

 事件現場に到着した直後、まず第一機動捜査隊が行うのは、被害者からの聞き取りだ。当然ながら被害者はさまざまな形で被害を受けている上に、捜査協力という負担を負わなければならないのだ。犯人検挙を焦るあまり、その点を配慮せず捜査を進めてしまうこともあるという。

 「事件の具体的な状況を話してもらう時こそ、被害者の心情に配慮した行動をとることが重要です」

 こうした想いの根底には、原隊長が捜査第一課に在籍時、女性隊員だからこそこだわった事件―別名“魂の殺人”と呼ばれる性犯罪事件の経験がある。それは現職の隊長としての理念にも、大きく影響していた。

 

今後はますます女性捜査幹部が求められる

 「性犯罪の被害者は、事件後に風の音にも『犯人が来たのでは』と恐怖を感じたり、周囲に敏感になったりするなど、人生を狂わされてしまいます。犯人検挙はもちろん重要ですが、苦しみに寄り添い、少しでも心の支えになることも警察官の重要な役割です」

捜査第一課時代の原隊長

捜査第一課時代の原隊長。この頃から性犯罪対策が強化され、女性視点の捜査が取り入れられるようになった

 原隊長が警部として捜査第一課に着任した際、警視庁は性犯罪強化に注力しはじめ、原隊長自身、性犯罪担当係長に着任した。そこでこれまで男性視点で捜査していた性犯罪捜査に対し、被害者への配慮も組み込んだ手法を採用、以後の警視庁内性犯罪捜査の確立に大きく貢献した。

 「現職の第一機動捜査隊でも、性犯罪に加えDVやストーカーなど、女性が被害者となる事件での対応も多く、被害者への配慮は非常に重要です。ですから今後は私のように女性の捜査幹部が増えていくことが一層求められると思います」

 もちろん、犯人検挙の強化にも取り組む。初動捜査が中心の第一機動捜査隊だが、初動捜査で検挙できなかった事案にも、警察署と協力しながら事後捜査をしっかり進めていきたいと、抱負を述べる。

 「犯人検挙も、被害者への配慮も、すべては被害者のため。そのことを隊員に伝えていくのが、私に与えられた責務だと思います」

 原隊長の言葉に迷いはない。この揺るぎない信念こそ捜査を率いるトップに求められる資質であり、そこには性別の差は存在しないことを改めて感じた。

 

【プロフィール】
1955年10月、群馬県生まれ。1974年警視庁入庁、翌年警察学校を卒業後、杉並警察署交通課に配置。その後新宿警察署、警視庁留置管理課を経て、1986年に警視庁捜査第一課特殊犯捜査係に配属。以後1998年には警部、2007年には警視として捜査第一課に在籍。その間、女性初の検視官にも就任している。2013年に交通捜査課理事官、2014年に光が丘警察署署長を経て、2015年2月より現職。

 

  
 

 

 

タグ:警視庁 第一機動捜査隊

 

 

 

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