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NIPPON★世界一 The77th2015年08月20日号

 

3Dレーザースキャナによる構造物等分析調査のコンサルティング
建物ドック(建物診断およびインスペクション)

●株式会社オフィス山原 ●港区虎ノ門
●設立:2013年4月

3Dレーザースキャナによる構造物等分析調査のコンサルティング 建物ドック(建物診断およびインスペクション)

  日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。建物などの構造物や自然地形などを、迅速、正確、かつ手間をかけずにデータ化できる「3Dレーザースキャナ」。その技術の進歩は目覚ましく、現在は防災対応、災害復旧のほか、重要文化財保全などの場面でも活用されはじめている。そしてそれは、2020年を見据えた東京の街づくりにおいても、大きな力を発揮する可能性を秘めている。

(取材/種藤 潤)

 


上2枚:目黒区にある、内村鑑三ゆかりの建物『今井館』の一部を3Dレーザースキャナにより計測したデータ。実物のように精巧に描かれているが、全てが点で構成され、点群データ化されている。そのため図面化、そして建物の復元が可能であり、文化財保全の目的としても注目を集めている

 右の2点の写真を見てほしい。これは目黒区にある歴史的建造物『今井館』の一部である。一見、イラストか建物のパース(建物の完成予想図のイメージ画)のようにも見えるが、これは3Dレーザースキャナにより、実際の建物を幾多の「点」によって測量、図面化したものだ。これは、単にビジュアル的に建物を再現しているだけでなく、建物の高さや幅などを実寸で数値化し、保存することができるという。そのため、万が一建物が崩壊しても、このデータがあれば復元することが可能なのだ。

 「『今井館』のような歴史的建造物は、図面が存在しないことがほとんどです。そうした建物の情報を点群(点の集合)データ化し保存することも、3Dレーザースキャナなら可能です。同じような建物は東京にも多数あるので、ぜひ点群データ化を進め、建物を管理できる体制を整えてほしいです」

 そして、この『今井館』のような建造物に限らず、3Dレーザースキャナを用いれば、世の中のあらゆる対象をデータ化することが可能だと、株式会社オフィス山原の前田幸司さんは語る。

 

1秒間最大約100万点を計測
地上から東京タワーも測定可能

 一般的に3Dレーザースキャナは、従来の単点(ひとつの点)による測量機の計測とは違い、構造物や自然地形に対してレーザーを照射し、3次元座標のデータを取得するものである。そのため、足場を組んだりする必要がなく、迅速、正確、低コストで、しかも作業者が安全な状態で測量・計測ができる。

株式会社オフィス山原
ビジネス環境マネジメント事業部 営業マネージャーの前田幸司さん

 その技術も着実に進歩している。現在同社が扱う最新の3Dレーザースキャナは、1秒間に最大約100万点を計測できるスキャンスピードを実現。また、3次元座標XYZ軸で300°〜360°回転可動範囲を持ち、あらゆる角度から高速点群データを収集し、計測することができる。さらに1カ所からは最長330mの範囲の計測が可能。つまり、東京タワーの高さでも、地上から計測することができるというわけだ。

 「高層ビルやトンネル、道路から野球場や駅構内まで、大規模かつ広範囲な建築物も3Dレーザースキャナなら効率的かつスピーディーにデータ化できます。また、広大かつ複雑な自然地形も容易に数値化できるので、まさに世の中のあらゆる対象を3次元データ化できると言っても過言ではありません」(前田さん)

 

建物の健康を管理する『建物ドック』を広めたい

 毎年、計測地点を決めて、その3Dレーザースキャナで計測することにより、建物等の経年劣化や経過観察を、効率的に計測ミスを減らしながら行うことが可能になる。さらには、そのデータを元に建造物等の保守管理を行う方法や、それらのデータを応用し、改築・増築などリフォーム計画を進めることもでき、同社ではその提案もしている。

 そもそも前田さんが所属するオフィス山原は、光波測量や赤外線を用いた建物の劣化診断、クラック計測による建物の現状計測などを行ってきた。その延長で、この3Dレーザースキャナの機能を活用し、あらゆる構造物や自然地形を点群データ化することで、より確実かつ効率的、低コストで劣化診断や防災対策ができると提言している。

 「継続的に計測し建物を“見える化”することで、建物の問題点が明確になり、具体的な安全面の対応ができる。まさに建物の健康を管理する『建物ドック』です。我々はこの方法をもっと広めていきたいと思っています」(前田さん)

 

東京の街の変化を数値化し、防災を“見える化”する

 この3Dレーザースキャナを活用した“見える化”による効果は、特に防災において東京の街で力を発揮すると、前田さんは推測している。

 「前出の『今井館』のような文化財はもちろん、都内には古い建造物が多くあります。また、災害が起きやすい自然地形も東京には多数存在すると聞きます。それらの現状を3Dレーザースキャナでスキャニング(経年調査、分析)し、危険度を“見える化”すれば、いざという時に備えることができます。特に今東京は、2020年に向けて世界中から注目を集める都市です。その東京が安全・安心であることを世界にアピールするためにも、防災に対するデータ集積を進め、あらゆる状況の変化に対応できるように備えてほしいです」

 

 

 

 

タグ:オフィス山原 3Dレーザースキャナー 建物ドック 

 

 

 

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