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NEXT東京 街づくり 第2回2015年10月20日号

NEXT東京街づくり
 
住んで良いところは訪れても良し 地域に根ざした資源を観光の主役に

 訪日外国人客が過去最高の伸び率を記録する今日、東京はスカイツリーや銀座、浅草など人気スポットがひしめく「観光立国」日本の中心として、ますます存在感を高めている。そんななか世田谷区は、あえて従来とは異なる手法で新しい観光の形を模索中だ。それは他の市区町村にも共通する、将来訪れる街の課題を解決しうる、新しい街づくりの形でもあった。

(取材/種藤 潤)

 

交流と連携により既存の活動の活性化を促進

取材に応じた世田谷区産業振興公社副理事長の髙山博さん(右)と、事務局長の安藤良徳さん

取材に応じた世田谷区産業振興公社副理事長の髙山博さん(右)と、事務局長の安藤良徳さん

 世田谷、というと都内を代表する人気の住宅地というイメージはあるが、観光地という印象はほとんどないのではないか。

 「でも実は、世田谷は魅力的な観光資源を数多く持っているのです。まず商店街がたくさんあり、地域の文化や生活に根ざしたイベントや活動を行っています。それらは区はもとより、全国、さらには世界にとっても、魅力的な観光資源と言えます」

 そう自信を持って語るのは、現在区の観光事業を担う「世田谷まちなか観光協議会」を運営する、公益財団法人世田谷区産業振興公社の髙山博副理事長だ。

 「観光」という名がつく組織だが、いわゆる他の地域で見られる「観光協会」とは異なる形をとる。この違いこそが同協議会最大の特色であり、すなわち世田谷という街の新しい観光の形を象徴しているのだ。

 「観光協会というと、会員が会費を出し合い、その予算を元に観光を活性化させていく活動を、その協会自体が主体となって行っていきます。しかし私たちの協議会は、会費はゼロ。あくまで主体は参加する事業者であり、その事業者の活動を盛り上げていく“交流”と“連携”を作っていくことが、我々の協議会の役割なのです」(髙山さん)

 

会費による予算を持たず主役はあくまで各会員

『世田谷みやげ』

「まちなか観光」のシンボルのひとつとして親しまれる、区内のみやげものを紹介した冊子『世田谷みやげ』。実は今年で10年目を迎える

 「会費ゼロ」と聞くと、観光事業が成り立つのかと疑問を抱くかもしれないが、むしろ会費がないからこそ地域の資源を活かした観光を構築しやすいと、髙山さんは言う。

 「観光資源がある一方で、地域によっては移動手段が不便だったり、情報発信が不十分だったりと、世田谷ならではの課題もある。それらは実はお金をかけなくても、地域の事業者同士が交流し、連携することで、十分解決は可能です。それに会費があると会の存続自体が目的になりがちですが、会費がないと、純粋に自分たちの利益になることを考え、行動できる。そのほうが地域の価値を活かしたアイデアや手法が出やすいと考えています」

 こうした形の活動の根底には、2008年頃から注目されはじめた、日常生活の街並を楽しむ「まち歩き」を中心とした「まちなか観光」という考え方がある。それを世田谷の観光に活かそうと、髙山さんが中心となり、準備期間を経て、同協議会の前身となる「世田谷まちなか観光研究会」を2012年に設立。1年後に現在の協議会となり、区内で活動する交通事業者、まちづくり系NPO、大学、自治体、メディア、商店街と、現在40を超える事業体が参加。定期的に総会を開催し、情報交換や交流が行われている。

 

「まちなか観光」を暮らしを見直すきっかけに

 設立から2年。主体が各事業者だけに、まとまった形になるまでに時間はかかるようだが、徐々に効果は出はじめている。これまで行われてきたイベントや活動のなかには、協議会により連携・連動が促進され、内容の充実や情報発信の強化などにつながっている例もあるという。

 加えて、「まちなか観光」へとつながる、協議会発の独自事業も誕生している。区内の異なる電鉄会社が連携し、『小田急・世田谷線 散策きっぷ』を発売。最近では世田谷の地域情報が集約されたスマートフォン向けアプリ『世田谷ぷらっと』のサービスがスタートした。

観光活性化を促すアプリ「世田谷ぷらっと」

新たな世田谷の観光活性化を促すアプリ「世田谷ぷらっと」。2015年10月現在、5000ダウンロードを超える

 「アプリは観光情報だけでなく、生活する人にも便利な情報が満載です。ぜひ区内の方にも利用してほしいです」と、事務局長の安藤良徳さん。実はこの「観光にも生活にも便利」という考え方こそが、「まちなか観光」の本質なのである。

 「まちなか観光の基本理念は、住み良い街は訪れても良し、ということ。それは逆も同じで、訪れたい街づくりを考えることは、住みやすい街を考えるきっかけにつながります」(髙山さん)

 つまりこの協議会の活動は、観光・生活の枠組を超えた、新しい形の街づくりへの挑戦でもあるのだ。一見すると世田谷は暮らしやすい街であるが、実は将来を見据えた街づくりが急務であり、その点においてもこの協議会は必要だと、髙山さんは強調する。

 「世田谷には高齢者の増加や独居問題など、課題は多々あります。その解決に取り組むことも、訪れたくなる街づくりに大きく貢献すると思っています」

 そのためにも、2020年は世田谷「まちなか観光」の絶好のチャンスだと、髙山さんは言う。

 「幸い、馬事公苑が五輪の馬術会場に指定されました。馬術は世界的に人気のある競技ですから、世田谷は世界的にも注目されるでしょう。区内には外国人の方も多く暮らしていますので、その方々の意見も参考に、世田谷型の新しい観光の形を作り、同時に暮らしやすい街づくりにも活かしていきたいと思っています」

 

 

 

 

タグ:世田谷区 公益財団法人世田谷区産業振興公社 世田谷まちなか観光協議会 世田谷ぷらっと

 

 

 

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