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局長に聞く84 主税局長2015年11月20日号

 
徴収率向上の先にあるものは

主税局長 小林 清氏氏

主税局長 小林 清氏

 東京都の各局が行っている事業について、局長自らが紹介する「局長に聞く」。84回目の今回は主税局長の小林清氏。正念場を迎えた偏在是正措置の議論や、納税の利便性向上の取組、他自治体との連携などについてお話を伺った。

(聞き手/平田 邦彦)

税制改正の動きに反論を展開

—主税局には久しぶりに戻られたそうですね。

 平成17年に文京都税事務所長に任じられましたから10年ぶりとなります。「勝手知ったる」とは言えないですが、主税局が歳入所管局であることは所長時代に実感しています。

 また、改めて感じたことは、主税局は都庁の人材育成機関としての役割も担っているということです。

 毎年、150人もの新規採用職員が都税事務所に配属されています。課税、徴収の業務を通して都民と接し、都政の基本である税金の大切さを実感する仕事は、のちの都庁人生で大いに役立つと思います。

—都税収入は好調と伺っております。

 今年度の都税収入予算額は企業収益の回復を反映して7年ぶりに5兆円台となる5兆216億円を見込んでいます。これは、一般会計予算の約7割に当たります。

 とは言え、都税は法人二税の占める割合が高く、景気に左右されやすいため、この数字に安心をするわけにはいきません。

 強固な財政基盤あっての都政運営ですから、引き続きしっかりと取り組んでいきます。

—偏在是正措置の議論は今が正念場ですね。

 28年度税制改正に向けては、法人事業税の暫定措置が廃止される一方で、新たな偏在是正措置の導入や地方法人税の規模の拡大が議論の争点となっています。また、財政調整を目的として、地方法人課税の分割基準が検討項目に挙げられており、予断を許さない状況です。

 こうした動きに対し、東京都は様々な機会を捉えて反論を主張しています。東京都税制調査会においても議論を重ね、16日には都の主張を理論面からバックアップする心強い答申をいただきました。

—今期、東京都税制調査会は運営を刷新したと聞いています。

 ここ数年、地方税制に大きな動きがあるため、今期から毎年、答申を取りまとめることにしました。また、8名が新しい委員となり、財政のほか、福祉や都市計画など多様な専門分野からなる委員構成となりました。

 委員からは、「企業を通じた課税により、昼間都民にも負担を求める視点も重要」、「生まれ育った東京で都民として老いる権利がある」など、大都市特有の膨大な財政需要を含めた、活発な議論が行われました。

 

全国自治体との連携を模索

—納税の利便性向上に向けた取組は。

 コンビニ納付や電子納税に加え、4月からは、ほぼ全ての税目においてクレジットカードでの納付ができるようになりました。

 こうした取組と併せて、個々の納税者の状況に配慮した、きめ細かな滞納整理や、区市町村との連携した取組を進めることで、平成26年度の都税徴収率は98・1%と、過去最高となりました。

—ここまで徴収率が上がった今、次に何を目指しますか。

 まず、納税者の視点に立った取組の推進という課題があります。納税者の方に都税への理解を深めていただくためには、税金を頂く側ではなく、納める側の視点でのアプローチが求められます。様々な方からのご意見を取り入れつつ、教育や広報などにも力をいれていきたいですね。

 また、税制を都政の重要課題にどう活用するかも大切です。これまでも各局と連携し、不燃化や認証保育所の整備を支援してきました。長期ビジョン達成に向け、水素社会の実現、バリアフリー化、まちづくりなどを税制面で支えることが、我々にとっての大きな課題です。

 それからもう一つ、都は、道府県税に加え、23区内では固定資産税などの市町村税も所管しており、他の地方自治体にはない強みを持っています。「都市と地方の共存共栄」の観点から、全国の自治体との新しい連携のあり方を積極的に考えていきたいと思います。

—全国の自治体との連携では、どのようなことを考えているのですか。

 地方税は国が制度を構築しますが、税務の実務は現場を持つ地方自治体にあります。都が持つ豊富な法人調査や徴収のノウハウを全国の自治体に提供できればと思っています。

 具体的には、それらの自治体の担当者を一定期間、都税事務所の一員として迎え、現場で経験を積んでもらいます。逆に、主税局職員を全国自治体に派遣してノウハウを伝えることもできます。今の規模をもっと大きく拡大したいですね。

—最後に、主税局職員に期待することは。

 主税局は局の性格上、どうしても受け身になり、また殻に閉じこもりがちです。

 若い人には、実務能力をしっかりと身につけ、そこにどんな人が住み、まちがどう変化しているのか、地域の実態を良くつかんでもらいたいと思います。空き家問題などを肌で感じ、マニュアルがなくても自ら問題意識を持てるようになって欲しいですね。

 また、一定の経験を積んだ職員には税務の専門性にさらに磨きをかけてもらいたいですが、大切なのは主税局だけではなく、都政の一員である事を常に意識することです。幅広い視野を持って、都政が抱える重要な課題に挑んでいくことを期待します。

 

 

 

 

タグ:東京都主税局 偏在是正措置 都税収入

 

 

 

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