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1 The Face トップインタビュー2016年02月20日号

 
ナカ工業株式会社 代表取締役社長 笹嶋敏之さんさん
製品開発力、市場開拓力に加え、施工能力を持つことが強み

ナカ工業株式会社 代表取締役社長 笹嶋敏之さん

 北海道の出身。いつか本社がある札幌に帰れると思い、どんな会社かも知らず訪問した。履歴書を見た総務課長が「お父さんとお母さんは元気ですか」。なんと実家の裏の人だった。これを縁に入社。以来、生産管理畑を歩いてきた。テレビ東京WBSの「トレたま2015年間大賞」を受賞するほどの製品開発力を誇るナカ工業株式会社代表取締役社長、笹嶋敏之さんにお話をうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

電源を使わないエレベーター式避難梯子で「2015トレたま年間大賞」受賞

—テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の人気コーナー「トレンドたまご」の「2015トレたま年間大賞」に、御社のエレベーター式避難梯子「UDエスケープ」が選ばれたそうで、おめでとうございます。

笹嶋 取り上げていただいただけでも驚きでしたが、思いもかけず年間大賞を受賞できたことは大変名誉なことでした。

 現在標準化され進化した避難器具でも、高齢者や子供、体の不自由な方には大変ハードルが高く、現実的に避難は困難であると思い、「避難弱者を含めた全ての方が容易に避難可能な製品を」をコンセプトに開発したのが今回受賞したUDエスケープです。電源を使わず短い時間で様々な多くの人が連続的に避難可能というこれまでにない点が高く評価されたと思っています。


ハッチを開けハンドルを展張しロックペダルを踏むと、避難者の体重でゆっくりと降下し、離れるとおもりの作用で上昇する

—テレビ放映後の反響はいかがでしたか。

笹嶋 医療福祉関係をはじめ、個人の方も含めてぜひとも使いたいという声が多数寄せられています。幅広い顧客層に興味深く面白い取り組みと映った証だと思いますね。当社が常にチャレンジしている姿と技術力がアピールできたと社員一同大変喜ん でおります。

 その後、ネットで配信された動画をタイのテレビ局の方がご覧になりまして、タイでは日本が非常にブームになっているらしいんですね、日本の技術力を紹介する番組でナカ工業を取材したいというお話がございました。それで昨年10月にタイからテレビクルーが撮影に来まして、タイでもあの製品の紹介がされました。

 タイでは、「運よく逃げられて生き残れればしめたものだ」という感覚らしいですね。避難をするということ、いろんな避難器具に対する考え、それ自体がほとんど日本にしかないんですよ。

—避難をするという発想が日本人以外あまりないということなんですか。

笹嶋 避難はするんだけれども、わざわざ設備をしてまで避難をするという考えがないということだと思います。

 「日本風避難」という考え方がございまして、それは階段から逃げる以外にもう一つ、避難経路を作るというものです。

 日本ではベランダに数十年前から避難器具が設置されていますね。しかし、アメリカ、アジア、その他の国にはそういう考え方はありません。韓国も同様の状況だったのですが、数年前から日本に見習って2方向避難という考え方が出てまいりました。韓国には当社の避難器具を輸出しています。

 日本風避難の考え方が世界中に啓蒙されていけば、避難器具業界というか、設備自体が世界でも大きい市場になってくる可能性があると期待しています。

 

安心安全につながる製品のデファクトスタンダードを確立

—ナカ工業に入ろうと思われた理由は?

笹嶋 私、北海道の出身でございましてね、当時、本社は札幌だったんです。それで札幌にいつか帰れるかなと思い、どんな会社かも知らず会社訪問をしたところ、笑い話みたいですが、私の履歴書を見た、時の総務課長が「あら笹嶋さん、お父さんとお 母さん元気ですか」って言うんです。よくよく聞いたら私の実家の裏の人だった(笑)。入社した理由はただそれだけです(笑)。

—札幌の小さな会社が、今やデファクトスタンダードをいくつもお作りになっています。

笹嶋 当社は昭和7年に札幌の地で創業し、来年で85年になりますが、当時は釘などを販売する一介の金物屋でした。

シンガポール現地代理店での笹嶋社長

シンガポール現地代理店での笹嶋社長

 しかし、創業者の中博光に向上心があったのでしょうね。創意工夫をして、お客さんが喜ぶような新しいものを作って、そこに付加価値を付けて売っていくことで、市場で勝ち残れると考えたんです。

 昭和30年頃の北海道の建物は雪が吹き込み、濡れたり凍ったりして大変危ない状態でした。階段は滑って転ぶのが当たり前みたいな感じで、「階段の三段目は命取り」という言葉があったほどと聞いています。

 ある時、創業者が札幌駅で、ご婦人が凍りついた階段で足を滑らせ、大怪我をした現場に遭遇したんですね。そこで階段の角を保護して滑り止めの効果を持たせ、なおかつ見た目の良いものを作ったらどうだろうと発想した。それが「ノンスリップ」という製品で、現在では当然のように使われており、デファクトスタンダードとなっています。当社の安心と安全につながる思想が確立された製品でもありますね。

—そこから避難器具にも取り組むようになられたのですね。

創業当時の様子

創業当時の様子

笹嶋 40年以上前にも避難器具はございましたが、その大半はぶらぶらの縄梯子でした。逃げる時は縄梯子を垂らして、そこから逃げるわけですが、相当体力のある人間でも難しい。そこで、創業者が開発したのが容易に避難可能な伸縮梯子式の「タス カール」という製品です。これも今のタイプは若干違いますけれども、当社が作ったものがデファクトスタンダードになっています。

—「UDエスケープ」はもう発売されているのですか。

笹嶋 ちょうど量産を開始したところで、今年4月から販売を開始したいと考えています。

 ただし、避難設備の製造販売には消防関係の認定、許可が必要になります。このようなまだ世の中にない製品は、制度上の基準など様々な部分をクリアしていかなくてはなりません。関係官庁には本製品の必要性を理解いただき、早急な認可をお願いしたいと切望しています。

 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。そのタイミングまでには、ぜひとも車椅子でも避難可能な製品に進化させたいと考えています。オリンピックで日本が注目される中、日本の安心、安全を世界にアピールできる絶好の好機であり、選手村などへの採用をお願いしていきたいと思っています。

 

取り付けて実際に使える性能を発揮して、
製品は、初めて評価していただくもの

—今までにないものを世に送り出すには大変なご苦労があるのですね。

笹嶋 世の中の安心と安全を確保する上で、階段の滑り止めとあわせて、当社が長年取り組んでいるのが手摺です。

 昔は手摺といったら鉄製か木、ちょっと高級なものでステンレスでした。鉄やステンレスは錆びますし、触ったら冬は冷たく、夏は熱くて触れない。木の質感は良いのですが、木は現場に合わせて加工、施工するのが難しい。

 そこで、当社がまず取り組んだのが、錆びをなくすためのアルミ化でした。次に“冷たい熱い”をクリアし、触り心地をよくするために樹脂を開発。そして人間が握りやすく、体を支えるのにいちばんいい直径はどれくらいだろうと何年も研究を続け、34㎜という数字を導きだしました。これも業界のデファクトスタンダードになっています。

品川区のパークシティ大崎にてLED照明付きステンレス手摺を施工

品川区のパークシティ大崎にてLED照明付きステンレス手摺を施工

 さらに握りやすさを探求し、握力の弱い人が握っても手が回転しないように楕円形の手摺や伝い歩きする人のための逆三角形型の手摺を作りました。そして新たに発売した製品は、人間工学的にいちばん力が有効に活用できる8角形のやわらかい究極の手摺です。

—一概に手摺といってもいろいろあるのですね。

笹嶋 はい。握りやすさと合わせて考えたのが、暗い外部の階段の手摺にLED照明を組み込んで足元を照らし、危険を軽減することでした。これも徐々に市場に浸透してきて、東京駅八重洲側の光る階段手摺などに採用され始めています。

 また、某社との共同開発により、LEDの手摺を歩行誘導に使用し、炎感知器と連動させ避難誘導する装置などを検討しています。

—歩行方向に光を流すことで人を誘導するわけですね。しかも、何かあった場合には、こっちに逃げてくださいと示すこともできる。そのような発想は、どこから生まれてくるのでしょう。

笹嶋 「製品は、取り付けて実際に使える性能を発揮して、初めて評価していただく もの」というのが創業者の思想です。実際に施工することによって得られるお客様の声や現場の実情が、新たな発想の源になっているような気がします。

 機能を創造し、世の中にないまったく新しい製品を作り上げる製品開発力、そして自ら市場を作っていく市場開拓力に加え、施工能力があることが当社の強みです。

 「ナカ工業の製品は高いけどモノはいい」と、お客様から絶大なる信頼を得ているのも、創業以来、全国に何百人という職人の施工体制をもって施工責任を全うし、安心して製品を使っていただいてきたからだと思います。

 お話させていただいたとおり、当社はニッチな市場で生きてきました。小さな業界ですが、業界内での製品開発力は群を抜いていると自負しています。ナカ工業が常に進化している、面白い会社であると市場に認知させることができれば、建材業界も活性化してくると思います。

 これから過去に例を見ない少子高齢化の時代が訪れます。過去、日本は公害に直面して環境技術を手に入れ、石油危機を経て省エネ技術を積み上げてきました。これから高齢化は様々な国で訪れます。日本そしてナカ工業が積み上げてきた技術が、世界の高齢化対策を牽引していく夢を見たいと思っています。

ナカ工業株式会社 代表取締役社長 笹嶋敏之さんさん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
ささじま としゆき
1955年、北海道生まれ。79年、芝浦工業大学工学部卒業後、ナカ工業入社。滋賀工場製造部長、執行役員経営企画室長、取締役経営企画本部長兼生産本部長、専務取締役を経て、2014年4月、代表取締役社長就任。エレベーター式避難梯子「UDエスケープ」がテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」「トレたま2015年間大賞」を受賞。昨年12月、東南アジアにおける販売展開を図るためにシンガポール支店を開設した。

 

  
 

 

 

タグ:エクステリア エレベーター式避難梯子 LED内蔵手摺

 

 

 

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