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NIPPON★世界一 The81st2016年02月20日号

 

●株式会社E.I.エンジニアリング
●神戸市中央区(東京事務所 杉並区宮前)
●2005年設立
http://www.eie-e.com/

電力・熱負荷予測システム『EPS21』の開発・販売等

  日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。数学的な手法等を活用し、建物等の1日の電力や冷暖房の消費を予測するシステムはすでに存在したが、これほど精密に、かつシンプルな入力で使えるものはなかった。開発したのは、過去にも紙面に登場した、エネルギー運用支援のエキスパートだ。その技術は今も進化中で、すでに東京でも活用が始まっている。

(取材/種藤 潤)

 

 「一般住居や中小規模ビルなど小規模のエネルギー消費の場では、予測が多少大雑把でも、省エネの指標などに問題なく活用できます。しかし1日に大量に、かつ多様なエネルギー消費を同時に集中管理する大型施設などでは、小さな予測の誤差が、逆に大きな無駄な消費や作業ロスにつながります。そういう場面でこそ、我々の予測システムは力を発揮します」

株式会社E.I.エンジニアリング代表取締役の小川彰彦社長

株式会社E.I.エンジニアリング代表取締役の小川彰彦社長

  株式会社E.I.エンジニアリングの小川彰彦社長が自信を持って語るのは、同社が独自に開発した電力及び冷暖房・蒸気・給湯などの熱エネルギーの負荷予測システム『EPS(Energy Prediction System)21』である。

 小川社長が語る通り、大型施設のエネルギー消費の予測は本来正確に行われるべきものである。

 例えば、夏の冷房需要は大きく、夜中に必要な蓄熱を行い、当日の負荷予測に基づいて蓄熱冷水を最適に放熱、冷房負荷の推移に合わせ機器を順次立ち上げる必要がある。また、大型ビルは延床面積が広く、冷房が効くまでには時間がかかるため、冷房負荷予測を考慮しながら、事前に必要と思われる冷房機器の準備をする必要がある。その予測に誤差が生じれば、不必要な機器を立ち上げてしまい、無駄なエネルギーを消費することになってしまう。

 さらに、大型施設では冷房、暖房、電力などさまざまなエネルギー消費を、同時に管理し最適化を図らなければならない。

 ひとつひとつの予測のズレは、全体として大きなロスへと繋がる可能性もある。正確な予測は省エネ・CO2削減にも直結するのだ。

 

電力なら3%以下 熱量なら5%以下の誤差

 その予測の誤差を限りなく減らすことに成功したのが、『EPS21』である。同社も含め、これまでもエネルギーの事前予測は数学的手法の「カルマンフィルター」方式などを用いて行われてきた。しかし『EPS21』では、独自の予測システムとして、異なる性質の集合から似た要素を集めて分類する「クラスター手法」を採用。当日の実測負荷に基づき過去の適当なデータを抽出、予測値を算出する仕組みを構築した。その実力は「当日予測」として生かされるが、予測の履歴と実測の曲線はほぼ同一となるという。その誤差(=EEP:Expected Error Percentage)は、電力負荷であれば3%以下、熱負荷予測であれば5%以下を達成できる(左下図参照)。

 

予測に必要なデータはエネルギー消費の実績値のみ

病院での『EPS21』の当日予測のグラフ。青線が予測値で、赤線が実測値。誤差がほぼないことがわかる

 このシステムのメリットは、予測のために必要となるのが、過去のエネルギー消費の10分周期の実績データだけで済むことだ。前出の「カルマンフィルター」方式では、その日の24時間の気温や湿度などの予測に影響する因子を組み込まなければならないが、このシステムでは不要なのである。

 「計測データの種類が多ければ、一般的には予測の精度は向上しますが、コストが大幅に増加するとともに、測定の誤差も生じます。過去の実績データだけで正確な数値が出る手法は画期的です。もちろん、データ収集も容易になります」(小川社長)

 予測数値が正確で、かつシンプルな手法による予測システムは『EPS21』を象徴する特徴といえよう。

 さらに、他のシステムとの親和性が高いのも特徴で、どのようなパッケージユニットにも組み込みが可能だという。これらの特性を活かせば、新電力ビジネスの支援、デマンドコントロール、CEMSのベースソフトとしての利用、発電事業支援など適用範囲は広いと、小川社長は話す。

 

最適化・効率化だけでなくエネルギーの危機管理も

 そもそも同社は、エネルギーシミュレーションソフト『Enepro21』や、エネルギーマネジメントソフト『Etomas 21』などの開発から、エネルギーコンサルティングまでを担う、エネルギー運用のエキスパートだ。

 そこに新たに『EPS21』の精密なエネルギー予測機能を合わせ、大規模施設を中心にエネルギー運用を、これまで以上に効率化・最適化していきたいという。

 「現在、クラスター分析を使用できるのは当日予測のみですが、将来的には翌日、翌々日の予測もできるようにし、新しい需要も開拓したいと思っています」

 さらに同社では、施設や企業単位だけでなく、地域全体のエネルギーマネジメントのサポートも視野に入れはじめている。

 「地域全体でのエネルギーの最適化・効率化は、災害時におけるエネルギーの危機管理にもつながります。環境に優しく、安全・安心な街を作り上げるためにも、『EPS21』を含むエネルギーマネジメントを多くの地域で浸透させていきたいです」

 実はすでに、東京都内某所の大型再開発エリアのエネルギー運転支援システムを担当することが決定しているという。同社の『EPS21』による新たな挑戦は、ますます加速していきそうだ。

 

 

 

 

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