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NIPPON★世界一 The82nd2016年03月20日号

 

●株式会社光和インターナショナル
●港区西新橋
●2003年設立

ライティングシートの開発・販売等

 日本にある世界トップクラスの技術・技能−。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。東日本大震災直後の避難所などで、壁に情報伝達の文字が書かれているシーンを見た記憶がある人もいるだろう。実はそこには、のりやテープなどを使わず貼り付け、ホワイトボードのように自由に書き消しができる特殊シートが用いられていた。その実力は経済番組でも高い評価を獲得。現在も進化を遂げ、活用の場は広がり続けている。

(取材/種藤 潤)

 

 東日本大震災直後、携帯電話などが通じない東北の被災地では、家族や知人の安否は掲示板などに貼られた手書き文字の紙によって伝達されていた。といってもそのスペースは限られ、なにより紙は水や汚れに弱く、厳しい環境下にあった被災地で使用するには限界があった。そこで力を発揮したのが、『ライティングシート』だった。

「ライティングシート」に座右の銘を書き込む、光和インターナショナル代表取締役の細貝和則社長

「ライティングシート」に座右の銘を書き込む、光和インターナショナル代表取締役の細貝和則社長

 「避難所での情報共有はもちろん、救助活動をしていた自衛隊の対策本部でも、このシートが活用されました」

 そう語るのは、このシートを手がける株式会社光和インターナショナルの細貝和則社長だ。

 静電気の力を利用し、のりやテープがなくても壁やガラスに貼り付けることが可能で、きれいに剥がせ、再び貼ることもできる。そこにマジック等で自由に書き消しができ、裏写りもしない。さらに防水効果もあり、紙に比べ格段に破れにくい。

 シンプルだが、あらゆる場面で応用できる幅広い機能性は、販売当初はビジネスの研修・セミナー等での利用や、学校などでの子どもたち向けの活用が中心だった。

 しかし、奇しくも被災地という厳しい環境下でその実力が証明され、知名度が一気に拡大。すでにテレビ東京の経済番組『ワールドビジネスサテライト』内の人気コーナー「トレンドたまご」の年間大賞も獲得していたが、2011年4月に発表された「ベスト・オブ・トレたま」では、トップの金賞を獲得。約3000商品の頂点に立った。

 

書き直し、貼り剥がし自由 燃やしても無害

 「ビジネスシーンにおいても、まだまだ応用の幅はあります。例えばホワイトボード代わりに使う場合、ホワイトボードだと書くスペースがなくなったらメモしたり撮影して消さなければなりません。でもこのシートは剥がして保存することも可能ですし、何枚も同時に張り出し、内容を比較することもできます」

 前出の機能性に加え、素材にPP(ポリプロピレン)を使用しているため、燃やしても有害物質が出ず、安心して処理できる点もポイントだ。

 加えて、製品化した当初は白地のみだったが、2012年には透明シートも商品化。地図などの上に貼り付け、その上から書き込める利便性が加わり、需要はさらに拡大した。2014年には子ども向けデザインの『ピタッとandかきけし〜と』も発売。マーケットをさらに広げただけでなく、同年の「第8回キッズデザイン賞」も受賞した。

 

既存技術の組み合わせでヒット商品を生み出す

東日本大震災の被災地で重宝されたライティングシート

東日本大震災の被災地では、避難所の伝言板代わりに使われたほか、写真のように自衛隊等の復興活動の会議ボード代わりにも重宝された

 幅広いシーンで受け入れられ、メディア等でも高い評価を受けていることを喜びつつも、細貝社長はヒットする確信はあったという。

 「このシートの機能は、ニーズがあることがわかっていました。それをどう商品化するか、そしてどう売るか。その戦略こそが重要でした」

 きっかけは、居酒屋での会話だった。雑談の中には、ビジネスに活かせる有益な情報が多々ある。ただ、そう思ったときにメモを取れる場所がない。それができる商品を作ろう、と思い商品化に着手した。

 「大事なのは、まず社会に必要とされる価値を提供すること。次に、その価値に合わせて既存の技術やリソースを組み合わせ、商品化する。それが私のスタイルです」

 静電気を用いる仕組みも、何度も書き消しできる構造も、既に存在する技術だ。ただ、それを日常に使用できるレベルにまで上げることが重要だった。

 「商品化した当初は、貼り付く力も弱く、書き消しできる機能も不十分でした。でも、まずリリースすることが大事。認知してもらいながら、同時に機能性も向上させる。そうやってオンリーワンの市場を作ってきました」

 

独自の形で権利を確保 新たな市場開拓も

 気になるのは知財財産の権利だ。その点は細貝社長も想定済みで、一般的な特許や商標取得という選択はせず、独自に権利確保を達成した。

 「特許は複雑で金額も時間もかかる。それよりも、先に販売していたことの社会的証明になる『先使用権』と、公証人による『事実実験公正証書』を取得しました。財力がない我々のようなベンチャー企業にとっては、非常に手軽で効果的な手段です」

 それでも、類似品は世に出る。しかし、細貝社長はその状況に苦言を呈するよりも、この商品を元に新たな需要を開拓することに注力する。

 現在の『ライティングシート』は、ロゴや写真などを印刷することも可能になった。この機能を活用し、今年契約した女性アーティスト・YUKAをシートにプリントし、ポスターなどとして活用していくという。

 「次世代アーティストの登竜門である『東京ガールズオーディション2015』のファイナリストである彼女は、これから若者を中心に人気が高まると思います。その彼女がプリントされたポスターなどは、高い価値を生むでしょう。これを機に若者を中心にライティングシートの認知が広がれば、新たな利益源となると信じています」

 東北の被災地で注目を浴びたこのライティングシート。今後は東京の街でも目にする機会が増えそうだ。

 

 

 

 

タグ:ライティングシート 光和インターナショナル 静電気の力を利用 ピタッと and かきけし〜と 

 

 

 

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