HOME » トップインタビュー一覧 » トップインタビュー Vol.104 一般社団法人 日本予防医療協会 代表理事 金城 実さん

1 The Face トップインタビュー2016年08月20日号

 
一般社団法人 日本予防医療協会
代表理事 金城 実さんさん
予防医療は日本の未来を変える力がある

一般社団法人 日本予防医療協会 代表理事
 金城 実さん

 バリバリの臨床医として最先端の医療に携わっていた。欧米の分子栄養学を基礎とした予防医療(=老化予防)の将来性に触発され、大学病院を辞して独立。予防医療のシステム開発と実践に取り組んできた。一般社団法人日本予防医療協会代表理事、金城実さんに予防医療の重要性をうかがった。

(インタビュー/津久井 美智江)

いわゆる医療先進国で、予防をやっていないのは日本くらい

—大学病院の医長という地位を捨ててまで、予防医療の道を歩もうと思ったきっかけは?

金城 私は医者になって36年目、前半の16年は大学病院にいました。大学病院に勤務している時、ニューヨークに2年ほど留学する機会があって、そこで知り合ったドクターから「これからは予防だ。いわゆる医療先進国、ドイツやオランダ、アメリカでは国を挙げて予防をやっているのに、やっていないのは日本くらいだ」と言われたんです。彼が送ってくれた文献を読むと、確かに国策としてがん予防をやっていて、実際にがんが減っている。すごいショックを受けました。

 私がいたのは麻酔科で、特に重症患者さんを扱う集中治療室を診ていました。そこでやっている治療というのは最先端。息が止まったら人工呼吸器を着け、心臓が止まったら人工心臓で蘇生し、腎臓が動かなければ透析して生かすことができる。不可能はないみたいな思いでいたんです。

予防医療について講演する金城氏

予防医療について講演する金城氏

—医師としての第一義は命を助けることだと。

金城 はい。我々が頑張って医療を発展させていけば患者は減る、がんも減る、病人も減る。本当にそう信じていました。

 ところが、大学を辞める4年ぐらい前に病棟医長になり、そういう治療にどれくらい費用がかかるかという現実に直面したんです。それこそ多い方で1か月に500万円くらいかかる。本当に驚きました。と同時に、我々が最先端と思っている治療をしても、亡くなる人は亡くなるし、生きて集中治療室から出られても、社会復帰できるかというと、できてない方がたくさんいる。自分がやっていることは本当に病人を減らせているのだろうかと疑念がわきました。そんな時に、予防医療に出会ったんです。

 考えてみれば、がん検診はがんになったのを見つけているだけですから、当然減らせないですよね。がん検診を受けていればがんにならない、健康診断を受けていれば健康でいられると、医療関係者ですら錯覚しているんですよ。でも、結果としてがんは増えていますし、高血圧や糖尿病も増え続けています。

—より見つかるということですよね。

金城 皆さん、がんは遺伝だと思っているかもしれませんが、生活習慣病です。その大きな要因がたばこで、アメリカでは徹底した禁煙政策を取ったことにより、1992年からがんは減っています。たばこだけではありません。農薬や添加物、放射線、電磁波、紫外線などもがんの要因であるということは、理論的にはわかっています。そういうものが体の中に入ってきた時に発生する活性酸素の影響を、どうやって防ぐかという部分も言い尽くされています。

 そういうことを難しい言葉ではなく、できるだけ分かりやすい言葉で伝えることがすごく大事だと思っているんですよ。

 

がんばらずに体を動かすことで、クラシックカーを目指す

—いろいろな健康法が紹介されていますが、なかなか実践できません。

金城 ですよね。ですから、「シャワーは体を冷やすけれど、お風呂は体を温めるから、免疫力が高まりますよ」とか、「にっこり笑っていると免疫力が上がるけれど、眉間にしわを寄せて怒ってばかりいると免疫力が落ちますよ」とか、日常の中で簡単にできるたくさんのことを具体的に示してあげるんです。簡単なことなら実践できる方はたくさんいらっしゃるんですね。

 ところで、我々の体って誰が作ったと思います?

—分かりません。

がんばらなくてもできる「バンザイストレッチ」

がんばらなくてもできる「バンザイストレッチ」

金城 お母さんから生まれたから、お母さんが作ってくれたと勘違いするんですけれども、お母さんが意識したから心臓ができたわけじゃないですよね。心臓も目も耳も実は細胞でできていて、その細胞は自然の営みの中でできている。本当に不思議です。授かりものとしか思えません。

 その授かった体、授かった細胞の機能を知れば知るほど、よくぞこんな能力を持たせてくれたと、感謝したくなります。感謝の気持ちがうまれると、どうやったらこの授かった体を大事にできるか考えられるし、実践もできます。これが予防医療の根本なんです。

 我々の体を作っている細胞は、食べたものでできているので、食べ物は大事です。でも、材料だけが大事なわけではありません。家もそうですが、檜で造った家だったら住んでいる人が幸せかというと、必ずしもそうではなくて、そこで生きている人間がどういうふうにその家を活用するかが大切なんですね。

 細胞が元気であるためにはエネルギーが必要です。どうやってエネルギーを生み出すのか、あまり考えたことないと思いますが、実はこれを司っているのがミトコンドリアです。脳でも心臓でも肝臓でも1つの細胞の中に2千個くらいいて、それが一生懸命エネルギーを作っているんですね。

毎日続けられる簡単有酸素運動「腕振り体操」

毎日続けられる簡単有酸素運動「腕振り体操」

 そのエネルギーを作るために栄養素がすごく大事だということはお分かりいただけると思いますが、ミトコンドリアを活性化することも同じくらい大事なんです。この活性化のポイントが有酸素運動。使わないと、ミトコンドリアは激減してしまいます。

 歩いてない方、階段ではなくエスカレーターに乗っている方は、ミトコンドリアがどんどん減っています。筋肉のミトコンドリアが減ると脳細胞のミトコンドリアも減るということはわかっています。運動ほどでなくても、体を動かしたり体操したりすることが全体のミトコンドリアを活性化し、増やしてくれるんですね。

 食べること、体を動かすことも大事ですが、質の良い酸素を細胞に運ぶ呼吸、壊れた細胞を修復する睡眠もとても大切です。この4つの予防医療の基本が意識できれば、高血圧になりづらいし、糖尿病にもなりづらいし、当然がんにもなりづらいということです。

—そんなにがんばらなくてもいいということですか?

金城 ジョギングやマラソンをしている方がいますけど、やりすぎは良くありません。毎日高速道路を500㎞走っている車はすぐポンコツになるでしょう。乗ってない車もタイヤがひび割れてエンジンも動かなくなります。

 だから、“そこそこ動く”ことがすごく大事なんです。そう難しくなく体を動かせることを選び、がんばらなくても続けることで、ポンコツ車ではなくクラシックカーを目指すことができるんです。

 

問診と測定値により現在を判断し、3年後の健康状態を予測する

—少子高齢化が進んで、このまま行ったら日本は破綻するのではと危惧されています。

金城 健康保険が1割負担から2割負担になって、今は3割負担です。やがて5割負担になるのは目に見えていますが、それを下げようと思ったら税金を投入しなければなりません。去年、医療費が40兆円を超えました。介護費も10兆円。毎年8千億ずつ増えています。それを若い人たちに払わせるのはあんまりです。

 最後は介護を受けるにしても、死ぬ3か月ぐらい前までは元気で、介護を受けず、病院に行かずに過ごしたいと思うのが普通の感覚だと思います。でも実際は、女性が介護を受ける期間は平均3年ですからね。それを3か月にできたら、介護費用は10分の1に減ります。今の10兆円はひょっとしたら1兆円で済むかもしれません。

—予防医療は本当に重要になってきますね。

金城 でも、改めて「予防医療って何ですか」と聞かれると、答えづらくないですか。すごく抽象的ですよね。

 一般の方たちが興味を持ってくれる言葉に言い換えると何だろうと考えたのが「ドクターダイエット」です。ダイエットという言葉はみんな興味がありますでしょう。肥満があると高血圧や糖尿病になる確率がすごく上がります。糖尿病なんて5倍くらいなりやすい。肥満が解消すれば糖尿病が5分の1に減るということで、予防医療を伝えていけたらと考えたんです。

 脂肪を減らすのではなく、筋肉を増やして代謝を上げて脂肪を燃やせる体を作るプログラム。このダイエットプログラムを開発したことが、一般の方たちに通じる予防医療が必要だと感じた大きなきっかけになりました。

—そういう研究と実践を長年続けてこられたのですね。

金城 そして、「ドクターダイエット」をやっていく中で、私に代わって体の中をチェックしアドバイスできる仕組みが必要だということで、10年くらい前に私の予防医療の集大成「ドクターセルフチェック」を作りました。これは52の問診と5つの測定値を入れると、現在の体の中を総合的に判断し、3年後の健康状態を予測できるプログラムで、改善のためのアドバイスも出力されます。これを作り上げたことで、予防医療を広げられると思いました。

 しかし、道具はできても、それを使う人材がいない。家造りでもいくらいい道具があっても大工さんが三流だといい家は建ちません。逆にいい大工さんがいても道具が三流だといい家は建ちません。両方とも必要だと思い、人材育成のために2年前の4月に一般社団法人日本予防医療協会を立ち上げ、予防医療診断士の養成講座をスタートしました。

 大学病院で16年、辞めて20年の間に私の頭の中に蓄積された知識と経験を、多くの方と共有したいというのが私の願いなんです。

 養成講座の目的はもちろん予防医療を知ってもらうことですが、それを受講生の皆さんに「そうだよね」と納得してもらい、腕振り体操やバンザイストレッチなどがんばらなくてもできることを自己実践し、そしてそれをアウトプットしてほしい。認知行動療法といいますが、自己実践して周りの方に伝えていければ、予防医療が広がっていくと思います。

 予防医療は日本の未来を明るくする、あるいは変える力があるというのは私の確信です。ダイエットから始まって、体の中をチェックする仕組みを作り、それを使える人材を育て、予防医療を広げていくこと、それが私の使命だと思っています。

 

一般社団法人 日本予防医療協会
代表理事 金城 実さんさん

撮影/木村 佳代子

<プロフィール>
きんじょう みのる
1955年東京生れ。1973年東京都立小石川高校卒業。81年岡山大学医学部卒業、麻酔科に入局。85年より2年間ニューヨークのアルバート・アインシュタイン医科大学に留学。96年12月まで岡山大学医学部付属病院、麻酔科病棟医長。97年大学病院を辞職して独立。2003年株式会社MDジャパン設立。分子栄養学・運動生理学を基礎に開発した『医者がすすめるメディカルダイエットプログラム』を病院中心に全国展開。04年予防医学・健康セルフチェックプログラム開発。07年予防医学システム完成。14年予防医学システムのアプリ「カラダ年齢診断」とDR.セルフチェックウェブ版をリリース。同年4月日本予防医療協会を設立。全国での予防医療診断士養成講座をスタート

 

  
 

 

 

タグ:一般社団法人日本予防医療協会 金城実氏 予防医療診断士 ドクターダイエット 有酸素運動 ドクターセルフチェック

 

 

 

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