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仕事に命を賭けて Vol.982016年08月20日号

 

海上保安庁 総務部人事課 人事企画調整官
蓮見 由絵

 文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。  2014年、海上保安庁内に「女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部」が設置された。その2年後の今年、事務局長として女性海上保安官が着任。その人物は、同庁における女性活躍の象徴とも言える1人であり、現在も幹部保安官として子育てとの両立を実現している。

(取材/種藤 潤)

女性活躍機運とともに横断的組織を設置

蓮見調整官の最初の目標である巡視艇船長となった、神戸海上保安部時代。この頃に出産、子育てができるのではと考えるようになった。

蓮見調整官の最初の目標である巡視艇船長となった、神戸海上保安部時代。この頃に出産、子育てができるのではと考えるようになった

 今、海上保安庁では女性幹部たちが着実に要職に就きつつある。幹部候補生として入庁した初期の女性保安官たちがキャリアを積み、以前この紙面で紹介した木更津海上保安署の中林久子署長や、女性初となる広報室課長補佐になった灘波陽子氏など、各組織のトップとして活躍している。

 今回取材した蓮見由絵調整官もその1人だ。前職では北海道周辺海域の航行安全行政を担う第一管区海上保安本部交通部安全課長を務め、今年4月からは本庁人事課人事企画調整官に着任。庁内全体の人事管理に関する特定事項の調整の指揮をとる。

 また、2年前に設置された「女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部」事務局長も兼務している。これは、政府の女性活躍推進の方針のもとに設置された、海上保安次長を本部長とする庁内横断型の専門組織で、女性特有の悩みや相談の内容を共有できるイントラサイト(組織内部に設置された業務向けサイト)や、育児休業中に相談できるメンター制度など、女性保安官が働きやすい環境を、ここが中心となって整備してきた。

 「まだ着任したばかりで、どちらかというと人事企画調整官の仕事が中心ですが、女性ならではの視点で、利用する立場から仕組みをよりよくしていければと思っています。また、女性に限らず庁内全体のワークライフバランスに関わる仕組みづくりにも取り組みたいです」

 

女性幹部初となる出産、育児を経験

 特筆すべきは、蓮見調整官が女性幹部としてキャリアを積みながらも、子育てをしてきたことだ。彼女が入庁した時は女性幹部自体ほとんどおらず、航海科に進んだこともあり、船上生活が中心となると、仕事と子育ての両立は難しいと考えていた。

第一管区海上保安部隊交通部安全課長時代、事故防止のために取材対応中の蓮見調査官。

第一管区海上保安本部交通部安全課長時代、事故防止のために取材対応中の蓮見調整官

 しかし、彼女自身がある目標を達成したのと時を同じくして、両立の可能性を感じ始めたという。

 「入庁時は、巡視艇の船長になることが目標でしたが、現場に出て7年目に達成しました。その時、女性保安官が子育てをしながら頑張って勤務している姿を見て、自分もできるのでは、と感じるようになりました」

 すでに同じ海上保安官と結婚していた蓮見調整官は、2006年に女性幹部で初めて出産。その後2人目の子どもも生まれ、計4年の育児休業を経て、現場に復帰した。以後、育児と両立しながら、幹部としても着実にキャリアを重ねてきた。

 「職場やキャリアのことを考え、育児休業を取らないことを選択する女性もいますが、私はせっかくならとっちゃおうと思いました。実は、2人出産したので最長5年取れたのですが、さすがにブランクが空きすぎると思い、私は4年、夫に1年とってもらいました。夫も子育てが嫌いではなく、いい形で育児のバトンタッチができましたね」

 

女性幹部として定年まで勤め上げる

 6年間は出身地の北海道で、実家のサポートを受けながら、第一管区海上保安本部等に勤務。その間夫は4年間単身赴任となったが、現在は両人とも本庁勤務となり、都内で家族4人で暮らす。とはいえ、夫婦ともに幹部であるため、家を空ける時間も多い。そのため、独自の子育て論が確立されているという。

育児をしながら、室蘭海上保安部の交通課長も経験。

育児をしながら、室蘭海上保安部の交通課長も経験。ちなみに彼女の実家は室蘭にあり、子育てをサポートしてもらったそうだ

 「私たちがいなくても子どもたちが自立できるように、留守にする時のハードルを徐々に上げるようにしています。例えば、まず2人で留守番できるようにし、次に上の子だけで、次は下の子だけでもできるようにする。時間も徐々に伸ばします。ご飯を炊き、おかずを温めるなど、家事も徐々にできるようにしたいです」

 家族像として、それがベストとは自身も考えていない。だが、海上保安官の幹部として、最善の方法を家族全体で考え、実行していくことこそが重要なのだと言い切る。

 「一般的な家庭のあるべき姿に引っ張られ、仕事と家庭の両立を諦める女性保安官も多いですが、家庭ごとに家族のあり方があるはずです。庁内には女性が働きやすい制度がありますから、ぜひ諦めないで両立を目指してほしいですね」

 そのことを自身で証明するために、蓮見調整官は「定年退職」を目指しているという。

 「男性にとっては当たり前でも、女性幹部では前例がないので、育児をしながら定年まで働きたい。もちろん、定年まで勤めるからには、キャリアとして、できれば地元北海道の海上保安部長になりたいです。仕事のやりがいには、男女の差はありません。せっかく今の役職があたえられたのですから、女性だからといって諦めることなく、働き続けることができ、かつ家庭や子育てとも両立しやすい環境を整えていきたいです」

 

 

【プロフィール】
1972年北海道生まれ。高校卒業後、1992年に海上保安大学校入学。1996年12月より函館海上保安部に配属、以後呉、神戸と海上保安部で勤務し、神戸時には巡視艇船長も。その間に、海上保安大学校や本庁警備救難部、総務部学校教育係長などを歴任。2010年第一管区海上保安本部交通部企画課長補佐、間に室蘭海上保安部交通課長をはさみ、2014年同本部交通部安全課長。今年4月より現職および「女性職員活躍・ワークライフバランス推進本部」事務局長を兼務。

 

 

 

 

タグ:海上保安庁 女性海上保安官 ワークライフバランス

 

 

 

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