HOME » NEWS TOKYO バックナンバー » 【特集】多摩地区水道の歩みとこれから

【特集】多摩地区水道の歩みとこれから2016年09月20日号

 
〜東京水道経営プラン2016等を踏まえて〜

  多摩地区の都営水道は、昭和40年代後半以降、26の市町営水道を都営水道に一元化するという区部とは異なる歴史を刻んできた。そのため、市町営時代に整備された多くの小規模施設における老朽化など、多摩地区特有の経緯を背景とした様々な課題を有している。都水道局では、これまでも都営水道にふさわしい広域水道としてのメリットを更に発揮できるよう、様々な施策を進めてきた。

 今後は、平成28年2月に策定した「東京水道経営プラン2016」や「東京水道イノベーションプロジェクト」を踏まえ、多摩地区水道の課題解決に向けた更なる取組を推進していく。

【多摩地区水道の経緯】

 都の区部における水道事業は都が一体的に経営してきたが、多摩地区では元々、各市町が独自に水道事業を行っていた。

 しかし、昭和30年代後半以降、急激な人口増加等を背景とした深刻な水源不足や、区部・各市町間での料金水準等の格差是正を求める各市町からの要望が寄せられた。これを受けた都は、昭和45年多摩水道対策本部(現・多摩水道改革推進本部)を設置し、昭和48年以降多摩地区水道事業の都営一元化を推進した。

 都営一元化後の多摩地区における水道事業の運営は、お客さまに直接給水するために必要な事務を当該市町が担う事務委託により行われていた。しかし、事務委託制度のもとでは市町域にとらわれないお客さまサービスの提供や、広域的・効率的な施設管理ができないことなどの課題があった。

 そこで、都水道局では、事務委託の解消等を柱とする経営改善に取り組み、市町への事務委託を段階的に解消してきた。そして、平成23年度末には、市町など関係者の協力により全ての市町への事務委託を解消した。

【多摩地区水道の現状と課題】

 こうした経緯を経て、多摩地区の水道は、名実ともに都営水道としての新たな歩みを始めたところであるが、市町営時代に整備された多数の小規模施設において、老朽化の進行が深刻な問題になっている。

 また、送配水管路のバックアップ機能が必ずしも十分でないため、事故時等には被害が広範囲に及ぶほか、老朽化した管路の更新が困難な状況にある。

 さらには、4月に熊本で巨大地震が発生し、断水などの被害が大規模に生じたところであるが、多摩地区でも直下型地震の発生が想定されており、十分な対策が求められている。

 一方で、多摩地区の水道は、前述のとおり、都営一元化後も事務委託制度のもとで多くの業務を長年にわたり市町が担ってきたことや、水道事業とかかわりのある下水道事業を各市町が所管しているといった事情もある。そのため、各種の施策を進めるにあたっては、引き続き市町との連携が重要となっている。

【多摩地区水道の再構築等の取組】

多摩地区水道の施設の再構築

 多摩地区における水道の根源的使命は、安全でおいしい水を安定して供給し続けることである。都水道局では、都営水道に一元化した小規模施設の再構築等を「東京水道経営プラン2016」の重要施策として掲げ、これらの推進を通じて、真の意味での広域水道としていくこととしている。

1. 施設の再構築

 老朽化の状況や事故時の影響等を勘案し、計画的に施設を更新・整備していく。

 また、地盤の高低差等を踏まえた効率的な水運用や維持管理を行うことができる配水区域へ再編し、施設の統廃合を行っていく。

 整備に当たっては、計画一日最大配水量の12時間分の配水池容量を目標としていく。

2. 送配水管のネットワーク化

多摩地区送水管ネットワーク図

 事故や更新時等のバックアップ機能を確保するため、広域的な送水管ネットワークを構築するとともに、給水所等への送水の二系統化を図っていく。

 また、配水本管の新設及びネットワーク化など配水管網の整備に計画的に取り組んでいく。

3. 災害などに備えた施設整備

 災害や事故などの非常時に水を確保しておくための重要な施設である配水池の耐震強化を進めるとともに、断水被害の効果的な軽減に向け、重要施設へ供給する配水管の耐震継手化を優先的に実施していく。

【地域との連携強化等の取組】

 施設の再構築等を円滑に進めていくためには、地元の理解と協力を得るとともに、道路行政等を担当する市町との連絡調整も密にしていくことが必要となる。

 また、発災時の応急給水は、浄水所・給水所等における資器材の設置や車両輸送は都水道局が担当するが、実際に住民への応急給水を行うのは、各市町の役割という分担になっており、市町との連携は必須となっている。

 そのほか都水道局が各市町から受託している下水道料金徴収事務等の日常業務を円滑に進めるうえでも、各市町との情報共有や調整が必要となる。

 そのため、多摩地区26市町と都水道局とで構成する多摩水道連絡会を活用しつつ、応急給水訓練や地域広報における地域との連携を強化していく。

1. 応急給水訓練等に係る連携

応急給水用資器材

 災害に備えた地域との更なる連携を図るため、浄水所、給水所等において敷地の一部を応急給水エリアとして分画化する工事を進めてきた。こうした施設の改造により、市町や町会、自治会など多様な主体による初動対応が可能となるため、これらの主体と連携し応急給水訓練を行っている。

 また、避難所周辺の消火栓等を活用した応急給水が可能となるよう、必要な資器材を市町に貸与している。この貸与に当たっては、初期消火活動が可能となるよう消火用資器材も併せて貸与していることから、本年度から市町や東京消防庁との連携を図り、これらの資器材を使用した防災訓練の支援体制を構築し、応急給水、初期消火の両面から、地域の災害対応力の向上を支援していくこととしている。

 さらに、水道が使えない状況を疑似体験し、応急給水を受けた水を給水袋で運搬するなど、水道の大切さを再認識することができる「給水訓練を活用した断水体験」を実施することとし、本年度は一部の都立高校での試行を開始した。

 なお、訓練支援事業と断水体験については、本年2月に公表した「東京水道イノベーションプロジェクト」の主な施策のひとつとして位置付けられているものである。

2. 地域広報の取組

 多摩地区の水道は、事務委託の時代を含め長年にわたり市町がお客さまに直接給水するために必要な事務を担当してきた。そのため、お客さまに広域水道として運営されていることのメリットを、確かに伝えていくことが重要となっている。

 現在、水道を実感し理解を深めるための取組として、平成31年度までに給水区域内の全戸を訪問する「東京水道あんしん診断」を多摩地区においても実施している。加えて、東京都水道局の取組を紹介する地域水道ニュースの発行や、水道工事現場における説明会・見学会の実施、地域イベントへのPRブースの出展などについても積極的に取り組んでいく。

 引き続き、多摩地区水道への理解促進に向けた、お客さまとのきめ細かいコミュニケーションを推進する。

【多摩地区水道を次世代へ】

 市町営水道の一元化を進めてきた多摩地区水道は、給水人口が横浜市に匹敵する大規模な広域水道である。都水道局では、「東京水道経営プラン2016」や「東京水道イノベーションプロジェクト」に盛り込んだ多様な施策を通じて、多摩地区の水道をより一層進化させ、次世代へと着実に繋げていく考えである。

 

 

 

 

タグ:多摩地区水道 東京水道経営プラン2016 東京水道イノベーションプロジェクト

 

 

 

定期購読のご案内

NEWS TOKYOでは、あなたの街のイベントや情報を募集しております。お気軽に編集部宛リリースをお送りください。皆様からの情報をお待ちしております。

都政新聞株式会社 編集室
東京都新宿区早稲田鶴巻町308-3-101
TEL 03-5155-9215  FAX 03-5155-9217
一般社団法人日本地方新聞協会正会員