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仕事に命を賭けて Vol.1012016年11月20日号

 

自衛隊体育学校 特別体育課程学生
3等陸尉
荒井 広宙(ひろおき)

 文字通り、仕事に自分の命を賭けることもある人たちがいる。一般の人にはなかなか知られることのない彼らの仕事内容や日々の研鑽・努力にスポットを当て、仕事への情熱を探るシリーズ。  メダルラッシュに沸いたリオ五輪のなかで、もっともヒヤッとさせられたメダリストと言えば……。50km競歩で日本人初のメダルを獲得した、荒井広宙3尉。その歴史的活躍を実現するために、自衛隊体育学校の存在は欠かせなかったと熱く語った。

(取材/種藤 潤)

個人よりもチームとしてメダルが取れて嬉しい

 8月19日に開催されたリオ五輪の50㎞競歩で、自衛隊所属の荒井広宙3尉が見事3位でゴール。接触のあったカナダ選手のチームからの抗議により、一時は失格の報も出たが、判定は覆り、日本競歩史上初のメダル獲得が確定した。

リオ五輪後、日本競歩界初となる銅メダルとともに(提供:自衛隊体育学校)写真はその出発式の様子(提供:警視庁)

リオ五輪後、日本競歩界初となる銅メダルとともに(提供:自衛隊体育学校)

 「もちろん接触したことは理解していましたが、競歩ではよくあることです。ただ、抗議されてしまったら、自分ではどうすることもできません。でも、終了後に接触した当人が、私に謝罪してきました。そのことがとにかく嬉しくて、正直、五輪という大舞台でゴールできて満足もしていたから、結果はどうなってもよかった(笑)。結果として、日本競歩チームとして初のメダルが獲得できてホッとしています」

 自身というよりチーム全体の結果として、素直に喜ぶ荒井3尉。取材中も常に周囲に気を配り、世界のトップアスリートということを忘れてしまうぐらいだった。しかしひとたび競技の話になると、印象は一変した。

 「自分はそれほど身体的に恵まれているわけではありません。ただ、地味な練習を繰り返すことのできる我慢強さと、失格が少ない走りができることが、自分の長所だと思っています。そうした部分を“恵まれた環境”の中で伸ばせたからこそ、今回メダルが獲得できたのだと思います」

 

ハイレベルな競歩仲間と自衛隊体育学校が力に

2016年4月に石川県輪島で行われた日本選手権50㎞競歩の様子。ここで荒井3尉は2位となり、リオ五輪出場権を獲得した(提供:自衛隊体育学校)

2016年4月に石川県輪島で行われた日本選手権50㎞競歩の様子。ここで荒井3尉は2位となり、リオ五輪出場権を獲得した(提供:自衛隊体育学校)

 「自衛隊の先輩の山崎勇喜さん、谷井孝行さんをはじめ、トップレベルの選手たちと技術交流などをすることで、間違いなくレベルは上がりました。チームとしての連帯感が生まれたことも大きな力になりました」

 もう一つは、自衛隊体育学校の存在だと、荒井3尉はきっぱりと言い切る。

 「充実した練習設備、栄養バランスのよい食事、身体のメンテナンスと、あらゆるトレーニング施設とサポート体制が整っています。おかげで選手は練習に没頭でき、怪我なく万全の状態でリオ大会に臨めました」

 同校に所属するまでは、一人暮らしをしながらの練習生活。食事はもちろん、練習やトレーニングに関するあらゆることを自分で用意しなければならなかった。

 「おそらくどのアマチュアスポーツ選手も、自分と同じ課題を抱え、苦労していると思います。それが解決できたことが、今回の結果の最大の要因と言っても、言い過ぎではないと思います」

 

競歩以外の選手との交流も自衛隊ならでは

 競歩に限らず、日本を代表するアスリートを身近に感じられることも、自衛隊ならではの“恵まれた環境”の一つだと語る。

 「レスリング、柔道、ボクシング、近代五種など、異なる競技の選手の練習などを間近で見られることは、自分のトレーニングの参考にもなります。また、自衛隊の仲間がリオに向けて頑張っているという連帯感も生まれ、競歩チームとは違う刺激になりました」

 取材時は、リオ後の休息期間だった。しかし数日後から再び大会出場に向け、体育学校敷地内を中心に、ひたすら「歩く」日々が始まると話す。

 「大会前のピーク時には、毎日4時間以上ひたすら歩く。もちろん辛いですよ! でも、競歩は自分が“これだ!”と思って進んだ道ですから、できる限り続けたい。そして、1年ずつ結果を出していけば、4年後には自ずと銅メダル以上の結果がついてくると思います。年齢的にも、一番いい時期だと思いますので」

 ただ、結果が出なければスパッとやめる、と言う。

 「自衛隊は、隊員としてセカンドキャリアが約束されていることも、アマチュアスポーツ選手としては恵まれていると思います。でも、今はそのことは考えずに、とことん競歩に集中していくつもりです」

 そう語る荒井3尉の笑顔からは、心から今の環境に満足していることが伝わってきた。

 

【プロフィール】
1988年長野県生まれ。中学から陸上部に所属、競歩は高校2年よりはじめる。福井工業大学に進学後、石川県の指導者・内田隆幸氏に指導を受け、頭角を表す。卒業後は北陸亀の井ホテルに所属しながら競技を続け、2011年には日本選手権50㎞競歩(以下同)で3位、世界選手権で10位入賞。2013年に自衛隊体育学校に入校し、2015年の世界選手権で4位、日本選手権で1位。今年のリオ五輪50㎞競歩に出場し、日本人初となる銅メダルを獲得した。

 

  
 

 

 

タグ:オリンピアン リオオリンピック 競歩 銅メダル 荒井広宙

 

 

 

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