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大庭麗のイタリア食材紀行 第40回2017年09月20日号

 
大庭麗のイタリア食材紀行

 

第40回 約2000年前からイタリアに根付く果実 “フィーキ”(後編)

 イタリアで不老長寿の果実と呼ばれるフィーキ(イチジク)は、ビタミン群をはじめ、カリウム、リン、カルシウム、鉄分、ナトリウムといったミネラルを豊富に含んでいます。また、水溶性食物繊維やたんぱく質分解酵素の働きにより、生活習慣病の予防や美白効果、ポリフェノールによるアンチエイジングにも期待ができるそう。

 日照時間が長く降水量の少ない地域を特に好むフィーキの木は、乾ききった気候の南イタリアの地にぴったり。古くから根付くこの果実こそが、常に活力に溢れたイタリアの人々の、元気の源のひとつかもしれません。

イチジクのシーズンが終わりに近づくと、イタリアの長い夏が終わり秋の訪れを感じます

 ブーツの形をしたイタリア半島のかかと部分、プーリア州では、果物の中でも特に糖度の高い、完熟したフィーキを使ったシロップが伝統的に作られてきました。

 よく熟れた果実を細かく刻み、水と一緒に銅鍋で、ドロドロになるまで煮込みます。そして、麻の布に包んで搾ったエキスをさらにとろ火で2〜3時間ゆっくり煮詰めることで蜂蜜のような濃度のあるシロップができ上がります。

 熱いうちに瓶に詰めると、数年日持ちのするこのシロップは、大量に収穫されたフィーキの保存方法のひとつ。体力の衰えた老人や子どもの栄養補給に、水で薄めたシロップを用いるなど、古くから各家庭でこのシロップを作り常備していたそうです。

 また、砂糖や蜂蜜の代用として用いられた貴重な甘味料でもありました。その天然の甘さは、クリスマスに食べられるこの地域の伝統的な揚げ菓子“カルテッラーテ”の表面にたっぷりと染み込ませるなど、さまざまな伝統菓子の味の決め手として、愛され続けてきました。

 古代ローマ時代には、このような果汁を煮詰めたシロップは、ヴィンコット、モストコットと言う名でイタリア各地にその伝統がありますが、主に葡萄や花梨を用いて作られるのが一般的です。

 


大庭麗

<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>

 東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

 

 

 

 

タグ:大庭麗 フィーキ(イチジク) フィオロー二

 

 

 

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