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大庭麗のイタリア食材紀行 第48回2018年05月20日号

 
大庭麗のイタリア食材紀行

 

第48回 南イタリア産の高貴なチーズ“カッチョカヴァッロ・ポドリコ”

 イタリアを代表するチーズと言えば、チーズの王様“パルミジャーノ・レッジャーノ”が有名です。今回は、南のパルミジャーノ・レッジャーノの別名を持つチーズ、“カッチョカヴァッロ・ポドリコ”を紹介します。

豊かな風味や余韻の残るこのチーズは、焼き栗やポルチーニ茸との相性も良いと言われている

 そもそも“ポドリコ”とは、中部~南イタリアのアッペンニン山脈の限られた地域のみで飼育されるブランド牛の名前。西ウクライナに位置する歴史的地名ポジーリャを原産とし、古くにイタリアへ伝わった品種です。この牛たちは、夏は標高1200m、冬は400mの山脈に放牧され、水の少ない厳しい山脈に自生する野草を食べながら育ちます。厳しい環境下に育つこの牛は、イタリアに生息する牛の中で、最も素朴な品種と言われています。その乳量は極めて少ないものの、乳にはたんぱく質と脂肪分が豊富に含まれており、高山植物や野草、野花を食べているため、シーズンによって異なる豊かな風味が残ります。

 搾乳は毎日1回行われ、必ずその日のうちに、経験豊富な職人たちによって、手作業で加工が行われます。美しい曲線を描く完璧なまでの形状に整え、頭頂部の生地を閉じる工程には、熟練の技が求められます。生産は一年を通して行われますが、春先の3~5月に搾乳されたものから作られるチーズが、最も美味しいと言われています。500g~10㎏のサイズに形成し、塩水漬けを経て熟成。地域によっては、火山灰が溜まってでき上がった凝灰岩の洞窟の中で熟成します。5~6年熟成の4~8㎏サイズのものが、最も美味しさを堪能できる状態とされますが、10~12年の長期熟成の貴重品もあります。

 牛たちが食べた、野生のフェンネルやリコリス(甘草)といった香り高い野生の香草に似た、複雑な味わいとその長い余韻がまさにこのチーズの特徴。室温に戻し、栗や西洋ヤマモモの蜂蜜を添え、生産地域の赤ワインと共に味わいます。

 


大庭麗

<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>

 東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

 

 

 

 

タグ:大庭麗 カッチョカヴァッロ・ポドリコ Caciocavallo Podolico

 

 

 

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