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大庭麗のイタリア食材紀行 第16回2015年09月20日号

 
大庭麗のイタリア食材紀行

 

 

第16回 200年以上の歴史を持つ 王妃のトマト

 

 南イタリアには、王妃のトマト“レッジーナ”と呼ばれる原種のミニトマトがあります。まるで小さな王冠の形をした、そのトマトの花梗、ヘタの形からこの名がつきました。

 1300年代より、綿製品の生産で栄えてきたサレント半島の地域では、アメリカやアジアの綿の卸産業への進出を機にその産業が衰退し、1800年代後半にはそれまで綿や麻の栽培をしていた多くの畑にこのトマトが植えられました。

“レッジーナ”と呼ばれる原種のミニトマト

収穫後、約半年経過しても厚めな皮の中にはジューシーな果肉が詰まっている

 このレッジーナ種は、ポモドーロ・ダ・セルボ(保存用のトマト)とも呼ばれ、7月の収穫後、約2カ月間風通しの良い木箱の中で休ませます。その後、この地で紡いだ綿と麻の糸で、トマトのヘタの部分をひとつずつ鎖のように結び、まるで真っ赤に実る葡萄のように房状にし、風通しの良い場所にぶら下げて翌春まで保存します。30~40㎝はあるその大きな房は、“ラマゾーラ”と呼ばれ、ある詩人は、その名を“寒い冬に太陽を楽しむ枝”と表現した、まさにこの地の冬の風物詩です。

 収穫後何カ月経っても、肉厚な果実の中は常にジューシーで水々しく、適度な酸味と甘み、そして凝縮されたミネラル感の強い濃厚な味わいと、高濃度の各種ビタミンが詰まったその栄養成分が特徴です。その秘密は、海塩を多く含んだこの地域の地質と、さらに海水を定期的に畑に散布するという、200年以上続くレッジーナ種の特別な栽培方法にあります。畑に海水を散布?と思いますが、ミネラル成分であるマグネシウムの働きにより、糖やアミノ酸濃度が高まる効果や、病害抑制効果があり、現代の高糖度のトマトを生産する農法としても取り入れているそうです。

 残念ながら、1年中収穫をすることができる通常のミニトマトの普及によって、ここ20年でレッジーナ種の生産量は激減。現在では、この地域でも青果店などの限られた場所でしかその姿を見かける事はありませんが、古くは多くの家庭でこの時期、ラマゾーラをつくる習慣があり、軒先に数多く飾ることで社会での信望や名声、また家族の繁栄を意味したそうです。

 


大庭麗

<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>

 東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

 

  
 

 

 

タグ:大庭麗 レッジーナ種 ポモドーロ・ダ・セルボ ラマゾーラ 

 

 

 

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