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大庭麗のイタリア食材紀行 第30回2016年11月20日号

 
大庭麗のイタリア食材紀行

 

第30回 余震の続くイタリア中部地震

 

 今年8月、イタリア中部を襲った地震により、複数の州において深夜に建物が崩壊し、人々が瓦礫の下敷きとなり、多くの負傷者そして約300人の死者が出ました。イタリア中部は、半島の中央に位置するアペニン山脈の地殻変動により、過去にも大地震に見舞われてきた歴史があります。

 しかし、イタリア国内においての建物の耐震基準の法律は、新しい建物にのみ施行されており、国の財政難も影響し、耐震基準を満たしていない歴史的建築物や古い教会がほとんどです。

伝統的な生ハムの生産地域として知られるノルチャ

100年以上、家族経営で伝統的な製法を守ってきた生産者たちは、地震による被害で、その家業の継続を断念せざるを得ない境地に立たされている

 8月の地震では、パスタ料理のアマトリチャーナでその名が知られるアマトリーチェの町で、特に多くの死傷者が出ました。震源地から、アマトリーチェとほぼ同じ距離にあるノルチャの地域は、79年に起こった大地震を教訓に、町の建築物の耐震化に力を注いできた結果、8月の地震では人的被害を防ぐことができました。しかし、その後も余震が続き、10月に入り再びM6規模の大きな揺れが複数回この地域を襲うと、ノルチャでは、歴史的建造物の聖ベネディクト教会が倒壊、町もまた大きな被害を受け、今回の一連の地震の脅威を感じさせました。

 伝統的な生ハムの生産地域として知られるこの地域。ノルチャの多くの生産所もその被害を受け、熟成途中の生ハムは地域の生産者組合のほかの生産者に委ねられ、その熟成を続けています。しかし、I.G.P.(生産に関する条件や製法等の要件を満たした食品を規定するEUの地理的表示)の規定により、最低16カ月の熟成期間を要する伝統的な生ハムを製造してきた生産者たちは、仮に国の助成金で1年後に生産所を修復できたとしても、実際に生ハムを出荷できるまでのこの3年間の空白を危惧しています。それは、現代の市場において、顧客を手放すことを意味すると彼らは考えるからです。

 この地震により、イタリアが誇る文化的財産が倒壊してしまったことと同様に、このような伝統的な食材を守り続けてきた多くの生産者たちの将来もまた奪われてしまうのかもしれません。

 


大庭麗

<大庭 麗(おおば うらら)プロフィール>

 東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

 

  
 

 

 

タグ:大庭麗 イタリア中部地震 アマトリチャーナ ノルチャ 

 

 

 

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