鳥インフルの脅威再び

  • 記事:平田 邦彦

感染爆発への備えは十分なのか

 H7N9型のインフルエンザの発生が伝えられている。これまでに伝えられたH5N1型のインフルエンザが、危惧されながらも人への感染が爆発的に広まることなく小康を得たのに比して、今回登場したH7N9型はすでに人への感染が発生しているし、空気感染が伝えられているだけに、その脅威は比較にならないほど大きいと考えるべきなのだ。

 従来ワクチン製造は、感染者から採取したウィルスを元に培養して生産されるから、初期に爆発的な感染を見ると、その対策は後手に回らざるを得ない。

 昨年、第5波を迎えた感染症例は、前年より減少したと国立感染症研究所は発表しているが、従来のA型インフルエンザに比べて、極めて高い毒性を持つものに変化して、人間の喉、気管で増殖する性質、飛沫感染で容易に広がる特性を考えると、発生源たる中国での減少を素直に受け取って良いのか疑問が残る。

 既に死亡例を見ているこのインフルエンザを甘く見てはいけない。野鳥由来のウィルスだけに水際で防ぐことはまず不可能で、野鳥から感染した養鶏場の鶏を処分すれば安全とは言い切れないのではないだろうか。

 一市民としては、日ごろの手洗い、外出時のマスク着用、帰宅後のうがい程度しか予防策を持たないが、爆発的な感染力を持つこのウィルスがパンデミック(感染爆発)を引き起こした場合に求められる、陰圧室(室内の気圧を低くし、外部へ病原菌、ウィルスの流失を防ぐ部屋)の備えとなるとお寒い限りと言わざるを得ない。

 東京都の感染症対策の拠点たる墨東病院では、この陰圧治療室が40床(軽度を含む)ほど用意されているが、パンデミック発生となるとこれでは無力としか言いようがない。もちろん平素から備えられれば申し分ないが、むしろ仮設で対応する術を検討すべきではないだろうか。

 都内の大病院では、災害発生時の備えとして、病院内の待合室等に臨時の病床を設置して、患者の大量発生に備えるよう設備されているが、感染症発生は想定外としていると指摘せざるを得ない。なれば陰圧機能を持った仮設の構造物の開発を提案したい。自衛隊にもこれを備えてもらう一方で、自治体も組み立て式の陰圧治療室を備蓄し、有事に備えることを考えて行くべきではないだろうか。

 都が率先してこうした備えを持つことが、都民を守ることであって、国の対応、指針の発表を待っていればことが足りるとはしないで欲しいと願って止まない。

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