人事委員会事務局長 砥出 欣典 氏

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行う事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は人事委員会事務局長の砥出欣典氏。採用試験や昇任選考など都庁の人材育成のための環境整備をはじめ、職員の給与などの調査や勧告等を行う、目立たないが重要な部署だ。今後の事業についてお話を伺った。

都政を支える人材の確保・活用

障害者の採用を拡大へ

—人事委員会の役割について、一般の方にはなじみが薄いと思うのですが、改めて教えていただけますか。

 大きく分けて以下の2つの役割が挙げられます。

 一つ目は、公務員の労働基本権が制約されている代償措置として、給与実態調査に基づく人事委員会勧告や勤務条件に関する措置要求の審査です。

 2つ目は、任命権者から独立した専門的な人事行政機関として、中立・公正な立場から意見を述べることです。これにより、都が有為な人材を採用し、育て、力を発揮できる環境の整備をサポートしています。

—民間企業では人材獲得合戦が激化している模様です。こうした売り手市場の中、人材確保のための方策は。

 人事委員会では、任命権者との連携・協力の下、大学等での説明会をはじめ、技術職研究セミナーやWEBセミナー、女性職員キャリア研究セミナーなど、受験者確保に向けた様々な採用PR活動を展開しています。

 また、幅広い層に都への受験意欲を高めてもらうため、時代に即した手法として、SNS(ツイッター)を活用した情報提供も実施しています。

—多様な人材の活躍推進について今年の勧告で触れていました。特に障害者雇用に関する採用面についてはいかがですか。

 これまでも障害のある受験者に対して、エレベーターやスロープ等の設備が整っている試験会場の割当て、点字による出題、上肢障害に対応するためのパソコン・ワープロでの解答、試験問題や解答用紙の文字の拡大、補聴器・ルーペ等の補助具の持込み、手話通訳者の配置等の配慮を行ってきました。

 また、障害者を対象とする東京都職員Ⅲ類採用選考について、28年度選考から受験上限年齢を27歳から39歳に引き上げるとともに、29年度選考からは受験対象を身体障害者に加え、精神障害者、知的障害者にも拡大しています。

—人材活用についての取組みは。

 高齢層職員の活用については、現在、国において定年引上げに向けた詳細な制度設計が議論されています。その動向を注視しつつ、都の実情に合った制度の検討が必要です。高齢層職員の働きがいを確保し、都政の活力につなげることが重要です。

 臨時・非常勤職員についても、地方公務員法等の改正を踏まえ、新たな一般職の会計年度任用職員制度の導入に向け、任命権者と連携しながら準備を進めているところです。

女性の活躍促進に向け取組み

—昇任選考の実施に伴う課題は。

 主任級職選考種別Aでは、Ⅰ類採用者が受験者の約9割を占め、10年前と比較して受験者の状況が一変しました。近年の採用者数の増加など、選考を取り巻く環境は変化しており、選考結果等の検証を行っています。

 主任級職選考の在り方については、東京2020大会後の職員構成等も見据え、任命権者側と検討すべき課題です。

—小池知事は女性職員の一層の活躍を期待しているようですが。

 都における行政系の管理職に占める女性職員の割合は、平成30年4月1日現在で19・8%です。管理職選考の種別Aでは、今年度から育児休業等を取得中の職員の部分受験を可能にしライフイベントに合わせた受験機会を拡充しています。

 一方、種別Bでは女性受験率の低迷が続いており、受験促進に向けた取組みが課題です。女性の活躍促進に向けては、男性の家庭生活への参画、とりわけ育児休業の取得率向上に向けた一層の取組みが必要だと思います。

—今年の勧告でも言及されている、職場環境の一層の整備に向けた取組みは。

 長時間労働の是正に向けては、職員の意識を変えることが最も重要です。職場として定時退庁しやすい風土の醸成や時間管理に対する意識を高めることが必要となります。

 管理職によるマネジメントの強化も重要で、職員間の業務を平準化することで超過勤務の抑制を図るほか、超過勤務の内容・時間を事前に命令することが大切です。

 東京2020大会が近づく中、時差出勤やテレワークは社会的にも更なる推進が求められます。管理職の意識改革や手続きの簡素化など利用しやすい環境を整えていくことが必要です。

—最後に、今後の課題と今後の取組みは。

 今般、都政改革(見える化改革)の一環で、導入から5年が経過したⅠ類B(新方式)について検証を行い、その検証結果を踏まえ、多様な人材の都政へのチャレンジを更に促すための見直しを行っています。

 都ではこれまでも様々な人事制度の見直しを行っていますが、時代が大きく変化する中、それらが適切に機能しているか、今一度振り返るべき時期に来ていると認識しています。

 一人ひとりの職員が「明るく元気に前向きにそして、楽しく」日々の仕事に臨むことができるよう、人事委員会として公平・公正・中立を旨としつつ、堅持すべきところは堅持し、時代の変化に即し、変えるべきところはスピード感を持って変えていくことが必要です。

    

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