節分から立春になると、陽も少しづつ長くなり、早や冬も過ぎ去ろうとしているように思える。しかしこの季節、夜は冷えるし、朝は寒い。その日の気温によって体が変調をきたす。厄介なことだ。治ったと思った風邪が再発するのだ。

 だが、2月の花は力強く生きていく。真っ赤な厚い花弁を開く「寒椿」。床の間に飾る、白い楚々とした「侘び助」、「白玉」。美しさの中に、生きる力強さを感じる。生きとし生けるもの、自然の中で同じように生命が宿っているのに、なんと人間はひ弱なものだと思うことしきりだ。

 私が少年の頃、思い出に残るのは温かな「ココア」。青年に達し、こんな面白いカクテルがあるのかと思ったのが「カカオフィーズ」。

 「カカオ」の原産地は南米。19世紀後半、輝かしい英国で「カカオ」から「チョコレート」なるお菓子が生まれた。今でも英国は、王室と貴族の階級があり、貴族院も存在する。チョコレートが甘くてほろ苦い、美味なるお菓子として嗜好されたのは、その英国の王室や貴族階級だけだった。今やチョコレートは、繊細かつ微妙な味わいを醸し出し、世界各地で人々の味覚を楽しませる。私の個人的な好みは、文化芸術に育まれた国で作られたチョコレート。フランス、ベルギー王国、ロシア、そして日本。

 2月14日は「バレンタインデー」。ローマ帝国で「兵力強化」のため、時の皇帝が若い男性兵士と女性の結婚を許可せず、「富国強兵」をはかった。若い恋人同士の結婚式を内密に行ったのが、司祭「バレンタイン」。司祭は、皇帝の命で処刑されることになる。

 1980年頃、日本でもチョコレートを親愛の情をこめた贈り物として、女性から男性に贈られるようになった。バレンタインの記念日として。大仰に言えば、日本の国の一つの行事として定着した感がある。数年後には、その返礼として「ホワイトデー」なる日まで生じる。男女平等を象徴するかのように。

 私は、日本文化にはなかった、このチョコレートのやり取りを決して否定はしない。それは、日本人が持っている、人と人との関係を大切にする心。皆が喜ぶものを、上手に社会に取り入れる習性は素晴らしい! 年毎に、工夫を凝らしたチョコレートが、美しい装丁で店頭に並ぶ。ほろ苦い、ローマ帝国の愛の物語が、このように姿を変えて定着するとは意外と言えば意外。

 しかし、人の優しさは、季節は寒いが仄かな温かみを感じる。有難や、有難やだ!

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