東京のホストタウン事例|青梅市×ドイツ

  • 協力:内閣官房東京オリンピック・パラリンピック推進本部事務局(内閣官房オリパラ事務局)
    取材:種藤 潤

青梅市のホストタウンの象徴ともいうべき、2017年10月に行われた「青梅オクトーバーフェスト2017」の様子。翌年11月には産業観光まつりの企画ブースで「ミニオクトーバーフェスト」も開催した(提供:青梅市)

 東京オリパラ大会開催に向け、都内を中心にさまざまな準備が進んでいる。並行して、全国各地では市区町村が大会参加国・地域との交流を促進する「ホストタウン」という取り組みが広がっている。「ホストタウン」は都内にも存在し、現在15自治体が登録。今号では青梅市の実例を紹介する。

東京のホストタウンの先駆者として登録

 青梅市は、2016年1月に東京第1号としてホストタウン登録をした武蔵野市に続き、同年6月に世田谷区とともにホストタウン登録をした、いわば「東京のホストタウンの先駆者」だ。相手国はドイツ。契機となったのは、ドイツ・ボッパルト市と半世紀にわたり姉妹都市にあること。

 同市でホストタウン事業を担当する、経済スポーツ部オリンピック・パラリンピック担当の森清剛(せいごう)主査は語る。

 「市内の小・中学校では、ボッパルト市との姉妹都市に関する教育を行っており、市民の多くは同市に親近感を持っています。ただ、今回その縁でドイツのホストタウンになりましたが、ドイツの国自体の詳しいことは、青梅市民もほとんど知りませんでした。ホストタウンになったことでドイツという国を深く知ろうという機運が高まっています」

 また、同市がカヌー競技が盛んな地域であることもきっかけとなったという。市内にある御岳渓谷は、カヌー競技の盛んな地として全国的に知られ、その影響もあり、多くの日本代表クラスのカヌー選手が誕生している。アトランタ五輪代表で現青梅カヌー協会会長を務める藤野強氏や、北京五輪代表で今も現役選手として活躍する竹下百合子選手も、青梅出身である。

御岳渓谷を中心に、カヌー競技が盛んな青梅市。写真は2016年に同市で行われたジャパンカップにドイツ選手がオープン参加した様子(提供:青梅市)

姉妹都市関係とカヌー競技がきっかけ

 「もともとホストタウン事業は、東京オリパラ大会の事前合宿地誘致が主たる目的ですので、姉妹都市関係だけでなく、カヌーの存在があったからこそ、ホストタウンに申請したのです。御岳渓谷は、東京オリパラ大会のカヌースラローム競技の事前合宿地としての基準をクリアしており、2016年10月に行われた『カヌースラロームジャパンカップ』の際、御岳渓谷交流センターにホストタウン展示を出してPRしました」(森主査)

 実は青梅市とドイツは、この掲載の段階では、事前合宿の契約は締結していない。だが、ホストタウンはその枠組みにとらわれず、スポーツ、文化交流を促進する事業だ。その特徴を青梅市は最大限生かし、積極的にドイツとのホストタウン交流を行っている(詳細は右図参照)。

 「カヌーだけでなく、サッカーの盛んなドイツということで、東京横浜独逸学園に積極的に声をかけ、ドイツチームと青梅チームでサッカーのゲームを行いました。また、青梅市の文化を知ってもらう目的で、プチ田舎暮らしが体験できるプログラムも行っています。東京オリパラ大会とは関係なく、さまざまな交流活動を行ってきました」(森主査)

2018年5月、ドイツで音楽活動とバリアフリー環境の普及啓発を行っているドイツ人ミュージシャンのシッティン・ブル(本名デニス・ゾネ)さんが青梅市を訪問。地元小学校での特別授業が行われた。このように教育面での交流が生まれるのも、ホストタウンの特徴だ(提供:青梅市)

青梅市だから盛り上がる東京オリパラ大会の形

 これまでのホストタウン事業のなかで、特に盛り上がりを見せたのが、2017年10月に行った「青梅オクトーバーフェスト」だという。ドイツ発祥の祭り「オクトーバーフェスト」を参考に、ドイツビールやドイツ料理を提供。2日間で約13200人が参加した。

 「10月にしては暑い日だったこともあり、ビールが大変好評で、イベントとしても盛況でした。青梅市がドイツのホストタウンとなっていることを、市内外の方に知ってもらう機会になったのはもちろん、郊外の地でもこれだけイベントで集客できるということが証明でき、青梅市としても貴重な経験となりました」(森主査)

 目指すは、青梅市民の「ドイツファン」を作ること。一人でも多くの青梅市民がドイツを理解し、ドイツに親しみを持ってほしい。そんな取り組みを続けていきたいと、森主査はいう。

 「仮にカヌーの事前合宿地になれなくても、市民がドイツファンになることで、東京オリパラ大会はドイツの応援で相当盛り上がれると思います。そしてそれ以降も、ドイツとの強い交流関係を作っていきたいと思っています」

 東京のホストタウンだからこそ、独自の東京オリパラ大会の楽しみ方があり、その後の国際交流も生まれる。東京のホストタウンの先駆者は、しっかりと2020年以降に残る遺産(レガシー)を築きつつあるようだ。

■青梅市の主なホストタウンの取り組み(2019年3月現在)
日時 内容
2017年6月18日 ドイツ人たちと、青梅在住の家族や子どもたちが一緒に「田植え体験」を実施
2017年10月8日・9日 ドイツの伝統的なお祭り「オクトーバーフェスト」をモデルに、ドイツの食と文化を幅広く紹介するイベント「青梅オクトーバーフェスト2017」を実施
2017年10月8日〜13日 青梅市役所内にて「ドイツウィーク」を実施。ドイツの街並写真の展示や、食堂でのドイツ料理の提供などを行った
2017年10月21日 ドイツ人を招き、市内のサッカーチームと交流戦を実施
2018年2月4日 青梅の豊かな自然体験と、プチ田舎暮らし体験を組み合わせたプログラムを実施
2018年3月4日 青梅市の春を体験できるプログラムとして、梅の再生に取り組む吉野梅郷などを訪問
2018年5月17日 バリアフリー環境の普及啓発を行うドイツ人音楽家の来日に合わせて、小学校の訪問などを実施
2018年11月3日・4日 産業観光まつりの企画ブースにて、「ミニオクトーバーフェスト」を開催。ドイツ料理の提供やドイツ音楽の演奏を行った
2018年11月21日〜24日 「青梅クリスマスマーケット2018」と題し、市役所庁舎をクリスマスイルミネーション等で装飾。期間中にドイツの食を味わえるマーケットを開催
2018年11月21日〜30日 青梅市役所内にて「ドイツウィーク」を実施。ドイツの街並写真の展示や、食堂でのドイツ料理の提供などを行った

「ホストタウン」とは?

2020年7月から9月に開催される「東京オリンピック・パラリンピック競技大会(東京オリパラ大会)」に参加する国・地域の選手や住民と、日本全国の自治体が、スポーツ・文化・経済などを通じて交流し、地域の活性化等に生かしていく交流事業のこと。全国の自治体が東京オリパラ大会への参加を表明している国・地域と直接交渉し、交流内容を内閣官房オリパラ事務局へ登録申請。2019年3月現在、全国の358自治体が登録し、そのうち東京は15自治体が登録している。

         

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