戦略政策情報推進本部長 松下隆弘氏

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は戦略政策情報推進本部長の松下隆弘氏。4月に設置されたこの本部は、都市間競争が激しさを増す中で、今後の東京の発展を担う重要な組織だ。今後の取り組みを伺った。

東京の稼ぐ力を強化

「東京は周回遅れ」の危機感

—4月に立ち上がった本部の紹介と本部長としての抱負をお願いします。

 まず、新本部は、これまで政策企画局で進めてきた戦略政策の取組とともに、具体的な事業として①国際金融都市東京の実現②国家戦略特区の推進③海外企業の誘致を柱とし、さらに、④総務局のICT管理の中央管理部門機能⑤戦略的なICTの取組を併せて組織化したものです。

 その中心においては、「Society5.0」社会実装モデルのあり方検討会を開催し、官民の英知を結集しながら、『二十一世紀の石油』と言われるデータの活用を進めるため、新たな官民連携データプラットフォームの導入を図っていきます。こうした取組は、当本部の目指す東京の稼ぐ力の強化に繋げていくものであり、東京の成長戦略の具体化であるとも認識しています。

 この本部が新設された理由は、都市間競争の主戦場が今やデータ活用であり、ビジネスや産業の活性化の鍵になっているからです。したがって、本部長の立場としても、こうした時代の要請に鋭敏に対応しなければならないと思っていますし、何よりも都庁の若手職員が新たな行政課題に果敢に挑戦する風土をこの本部で創り上げたいと考えています。

—東京の稼ぐ力の中核となるAI等の第4次産業革命技術を担いますが、知事の期待も高いのでは。

 もともと知事ご自身、AIやビッグデータの活用が今後の都市間競争に欠かせない技術になると確信しておられたと思います。

 行政がこういう最先端の分野に関わるのは極めて難しいことではありますが、現実に各国の都市レベルでの取組が活発になっています。はっきり言えば、我が国や東京は周回遅れになってしまっています。こうした危機感の感度を上げて、全力で取り組むしかないと思っています。

—多岐に渡る業務で最も力を入れたいものは。

 東京の稼ぐ力の構成要素は、GDPの視点で見れば最終消費の活性化と企業投資の向上と併せ、海外からのニューマネーを獲得することです。これを生産性の視点から考えると、労働生産性や資本の生産性を高めるとともに、イノベーションやブランディングの力で全要素の生産性を高めることに尽きます。

 いずれのアプローチであっても、都市への投資である再開発などとともに、ビジネスのしやすさをもたらす、規制緩和やエコシステムの創造が鍵を握っています。こうした取組を動かしていくためには国家戦略特区と企業誘致の事業が重要です。

 また、国際金融の活性化も国内へのニューマネーを取り込むために必要不可欠です。金融は東京の地場産業の巨大な柱であることは言うまでもありません。

 さらに、ICTは何よりも、稼ぐ東京の未来を切り拓く、大きな可能性を持っています。

 ビッグデータやAIの活用は世界の先進都市が取り組む分野であり、GAFAやBATなどの巨大インターネット企業が生まれなかった我が国において、東京が経済や産業を再び強くしていくために、こうしたデータ活用の活性化抜きには語れないと考えています。

 現在のこの分野の世界の様相は、GAFA等のプラットフォーマーによる個人情報の独占の時代から、ヨーロッパのGDPRに見られるような個人が個人の情報をコントロールしていく、新たな時代に移行しつつあります。

 データ活用の分野で、東京が国際都市間競争を再びリードするにはこのタイミングしかありません。東京がICT戦略としてデータ活用の活性化を進めていくことは、今まさに求められていることです。

 結局、力を入れるべきことばかりですが、もともと、この本部は都政のメニューにないものを初めて事業化してきたチームなので、全て頑張るしかないと開き直っています。

具体的な政策の実現を急ぐ

—毎日が勝負という印象を持ちますが。

 4月1日からの時間の経過を遅く感じます。10連休もありましたが、その間も含めて毎日何かを進めていく気持ちをもって組織全体が動いています。しかし、まだまだ絶対的なスピードが足りません。

 優秀な民間出身者も沢山集まってきていますので、今後ますます具体的政策の実現を急がなければならないと思っています。

—職員に対して一言。

 職員の皆さんには、仕事をするにあたって、「今年はこれぐらい良くしよう」とか、「この事業は次にとっておいて」といったインクリメンタリズムから脱却してもらいたいです。

 我が国は、何か改善が進むのが良いことだと、ここ30年間、官民ともども合成の誤謬に向かって突き進んできたきらいがあります。アリバイ仕事は自己満足を生みますが、社会を変える力は持ちえません。

 自分自身の反省も含めて、若手職員には「こんな世の中にしたい」という強いビジョンをもって、仕事に取り組んでもらいたいですね。

 私は、都政人生の中で、しばしば「都の役割としてはどうかな。国との役割分担ができていないよね」という言葉に降参してきました。今思えばもっと戦えば良かったと悔やむことも少なくありません。首都公務員である都庁職員には、我が国のビジョンについて語り合ってほしいです。

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