更なる都市空間の高度利用を

  • 記事:平田 邦彦

インフラの有効活用を促進しよう

 都内の100mを超えるビルが300棟を超えたとの話を聞く。住宅にしろ、商業ビルにしろ、供給過剰になるのではと心配になるほど、都心には工事中のクレーンが林立し、気が付けば高層の建物がどんどん増えている。

 オリンピック後の景気の冷え込みを心配し、不動産バブル崩壊を懸念する声も聞かれるが、業界からは結構強気の意見も耳にする。

 出雲市長を務めた岩國哲人氏は、都知事選に立候補した折に都市空間の高度利用策として、JR山手線の上空を利用しようとの提言をされたが、氏の落選と共にこのプランは実現を見ていない。

 都の下水道局は南砂に集合住宅、駐輪場を作り空間の高度利用を図っているが、こうした事例は限られており、まだまだ活用できる空間は残されている。

 道路、鉄道といった基礎インフラの整備には巨額の税金が投入されていることを考えると、出来上がっているインフラを最大限活用できる空間の高度利用をもっと促進すべきは言うまでもない。

 関東大震災では、12階の建物が崩壊する例を見たが、その後の建設技術の発展はすさまじく、幾多の法改正を見て、災害に強い都市造りに成功しつつある。

 しかしその一方で、木造住宅密集地域は依然として存在するし、そのための対策が進められてはいても、解消するには至っていない。

 この大都会東京は、とても緑多い都市とは言えないし、屋上、壁面の緑化も進みつつあるが、CO2削減の観点からみても、十分と言うにはほど遠い。

 権利関係が複雑に入り組む民有地で、土地をまとめて高度活用利用をするには、大変な時間とお金が掛かるが、公有地ならその手間は少ない。

 その気になって見渡せば、未利用の空間は実に多いことに気が付く。岩國氏の提言を持ち出すまでもなく、もっと積極的に取り組み、商業、事務所、住宅に加えて運動施設とか、公園の空間を活用することを考えてみては如何だろう。

 未だに都心で平地に住みたいとお考えの向きには、空間未利用の課税を検討しても良いのではないだろうか。土地、家屋は不動産と言われているが、どれだけ土地を所有しようが、墓の中に持って入れるものではない。生きている間に如何に有効活用するかを問われているものとの認識を持つべきではないのだろうか。

 法によって土地の用途については厳しく規定されているが、その立法の精神に反して、十分なインフラが施された地域に限っては、空間の高度利用を果たしていないことにそれなりのペナルティが課せられる仕組みが作られてもおかしくはない。

 民有地は、デベロッパーが苦労して土地をまとめ、高度利用を図ってきているが、それに比して官が立ち遅れているとの認識を強め、施策を講ぜられることを望みたい。

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