整備進む東京国際クルーズターミナル

2020年7月14日オープンへ

  • 記事:大竹 良治

 東京都は現在、国際観光都市東京にふさわしい新たな首都の玄関口として、臨海副都心に世界最大級のクルーズ客船にも対応できる「東京国際クルーズターミナル」の整備を進めている。これまで一部の富裕層の旅とのイメージが強かったクルーズツアーは、格安なツアーが出てきたことで、誰でも利用できる身近なものとなってきており、クルーズ人口の増加、客船の大型化への対応が急がれている。東京国際クルーズターミナルのオープンは2020年7月14日を予定、2020年東京オリンピック・パラリンピックに間に合わせるため、現在、急ピッチで建設が進められている。

屋根のそりが特徴的なターミナルビル

身近になったクルーズツアー

 現在の東京の海の玄関口である「晴海客船ターミナル」は1991年に完成、これまで国内外の豪華客船を数多く受け入れてきた。

 しかし、晴海客船ターミナルへのアクセスでは、レインボーブリッジ(1993年開通)をくぐることが避けられない。レインボーブリッジの高さは52mだが、これは、当時の客船が通過できる高さを考慮したもの。羽田空港の高さ規制により、余裕を持たせた設計が出来なかったという事情もあった。

 その後、クルーズ市場の拡大に伴い、客船の大型化が進み、水面からの高さが60m、70mを超えるものも数多く建造されており、レインボーブリッジをくぐれない船が増加、臨時的に「大井水産物ふ頭」で受け入れてきたが、観光振興の観点からも専用ターミナルの整備が決まった。

 日本ではまだ富裕層向けの特別な旅というイメージがあるが、1泊1万円台のツアーも現れており、東京発着のクルーズ市場の拡大が期待される。

世界最大級の客船に対応

【岸壁】

 東京国際クルーズターミナルは、現在運用されている世界最大級のクルーズ客船「オアシス・オブ・ザ・シーズ」(22万5282トン、全長361m)にも対応できる施設として設計された。

 岸壁延長は430m(1バース・うち耐震強化岸壁240m)、水深マイナス11・5m、エプロン幅30m、船を繋留する係船柱も十分な強度を備え、世界最大の客船に対応できるスペックを誇る。

シンボルマーク(左)/東京国際クルーズターミナルの位置図(右)

【ターミナルビル】

 ターミナルビルの外観デザインは「首都の玄関口」を設計コンセプトに、ダイナミックな大屋根は「海の波」「船の帆」「日本の伝統的な屋根のそり」をイメージ。

 施設は鉄骨構造4階建て(高さ約35m)で、延べ床面積は約1万9000㎡。乗船・下船用のボーディングブリッジは2基備える。

 1階はエントランスロビーで手荷物の受付を行う。

 2階、3階は到着ロビー、バゲージホール、CIQエリア(税関=Customs、出入国管理=Immigration、検疫所=Quarantine)、観光案内所、乗船時の待合やチェックインスペースなどで、客船の大きさに合わせてフレキシブルに使用できる。

 4階は多目的室、VIPルーム、送迎デッキ、送迎ラウンジが設置される。

強固な人工地盤にターミナルビルの建設が進む

 東京国際クルーズターミナルはレインボーブリッジの南側の臨海副都心地域、青海に人工地盤の桟橋構造で建設されている。

ジャケット据付施工状況

 工事は2015年に着工、来年6月末の竣工に向け順調に整備が進められている。整備費は約390億円。

 工事はまず、海底面の一部を所定の深さまで堀り下げた後、約50mの支持層(固い地盤)まで鋼管杭を打ち込むことから始まった。

 続いて工場で製作した「ジャケット」を鉄管杭の上に被せ、強固な人工地盤を整備した。すでに船が接岸する幅30mの岸壁は完成、2基のボーディングブリッジ(船への乗降用の橋)の据付も完了している。

 土木工事がほぼ終わった現地では、ターミナルビルの建築工事が進められており、その外観を見ることができる。進捗率はほぼ7割まできており、4階建ての鉄骨工事は完了、現在は外壁と屋根の取付け工事が行われている。その後、内装の工事を進める予定だ。

 ターミナルビルは支持杭の上に柱を建てる一体構造で建設されており、地震への対応にも万全を期しているという。

 現地には工事の概要を紹介するインフォメーションセンターを設置、親子見学会を開催するなどPR活動にも積極的に取り組んでいる。

観光振興の発信拠点に
臨海副都心のにぎわい創出も期待

 近年、クルーズ人口は急増しており、東京国際クルーズターミナルのオープンは、2020年オリンピック・パラリンピック開催というタイミングもあり、クルーズへの関心がいっそう高まると期待される。

 また、都内各地の文化、食、エンターテインメントなど多様な観光資源への新たな玄関口になるとともに、羽田空港や充実した鉄道網により、日本全国につながる日本観光の拠点としても大きく貢献すると思われる。

 客船の東京港への入港は、これまで年間で40回程度だったが、東京国際クルーズターミナルのオープン後の予約は、2020年7月から12月の約半年間ですでに50回を超えており、関心の高さを示している。

スペクトラム・オブ・ザ・シーズ ©ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(イメージ画像)

 オープン初日、記念すべき2020年7月14日に寄港する開業第1船は「スペクトラム・オブ・ザ・シーズ」と決まった。

 ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社が運行する同船は全長347m、総トン数16万9379トン、本年4月に就航したばかりの新造船で、乗客定員は4246人。

 さらに来年9月28日には、「キュナード・ライン」が運行する「クイーン・エリザベス」(全長294m、総トン数9万900トン、乗客定員2081人)が初入港する。

 クイーン・エリザベスの秋シーズンの日本発着クルーズは初めてであり、その優美な姿を一目見ようと見学者が押し寄せることも想定され、臨海部のにぎわい創出につながると期待される。

ゆりかもめの駅名を変更

 東京国際クルーズターミナルのオープンに先立ち、ゆりかもめは本年3月16日、これまでの「船の科学館駅」から「東京国際クルーズターミナル駅」に駅名を改称した。

運営は指定管理者制度で

 東京国際ターミナルの運営は、指定管理者制度を活用するとしており、来年3月の第1回都議会定例会で審議される予定だ。

 選定に当たって一番求められるのは「スムーズな乗下船」のノウハウと、東京の玄関口での「おもてなし」。

 さらに、臨海副都心に数多くある商業施設やアミューズメント施設などと連携した、街全体を活性化する取組みも期待されている。

東京2020大会でホテルシップを実施へ

 来年7月24日に開会する東京2020大会中には、クルーズ拠点としての東京港を広く世界にアピールするため、東京国際クルーズターミナルを活用した「ホテルシップ」を実施する。

 宿泊者がクルーズ船を体感することで、クルーズ需要の掘り起しにもつながるものと期待される。

 ホテルシップの運航事業者は「コスタ クルーズ(本社=イタリア)」で、利用する船舶は「コスタ・ベネチア」(全長=324m、総トン数=13万5500トン)。客室数は2116室、乗客定員は5260人と大型ホテル並みの収容力を持つ。

 実施期間は2020年7月24日から7月29日までで、今後、関係機関等と詳細について協議・調整を行っていく計画だ。

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