会計管理局長 佐藤 敦氏

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は会計管理局長の佐藤敦氏。キャッシュレス化の推進や都が推し進める公会計制度の今後等について伺った。

会計制度は都政運営のインフラ

都庁のデジタルシフトに対応

—「新たな都政改革ビジョン」では、働き方改革が掲げられています。局の取組は。

 役所での手続きというと、書類やハンコが必須というイメージがまだまだあり、都においてもそういった事務が多く残っているのは事実です。

 会計事務は定型的な入力業務が多く、システムをもっと活用できる部分もあるのではないかと考えています。人口減少社会を迎え、将来的には都庁でもこれまでの定型業務から、都政の抱える様々な課題にチャレンジするような業務へと人的なリソースをシフトしていかなくてはなりません。

 また、今般の新型コロナウイルス対策で在宅勤務が徹底されたこともあり、都庁舎という場所にとらわれないワークスタイルも浸透しつつあります。

 そうした観点からも、紙書類によらない、デジタル的に完結する会計事務を実現させていかなければならないと思います。

 ただ、そのためには、単に紙書類を電子データに置き換えて処理するというのでは本質的な業務の改革になりません。

 デジタル化に先立ち、まずは会計事務のBPR(業務内容、プロセスの見直しを行うこと)を着実に進めなくてはなりません。

—国はキャッシュレス化を官民あげて進めており、都も「スマート東京」実現に向けた取組として掲げています。都民の利便性向上のための取組は。

 都は「『未来の東京』戦略ビジョン」において、都庁のデジタルガバメントを推進しており、キャッシュレス化は、その重要な取組だと認識しています。

 まず、都の支出では、現金亡失などの業務リスク軽減や業務効率化の観点からキャッシュレス化に取り組んできました。以前は、文房具の購入等、少額の支払いでは現金が中心でしたが、法人向けのブランドデビットカードを使って支払えるようにしました。

 これにより、支出については原則、キャッシュレスで行うことが可能となっています。

 都の収入については、都民サービスの向上や業務効率化の観点から、電子マネーやクレジットカードなど、都民の皆様に様々な決済手段を提供できるよう取り組んできました。

 昨年11月には都民や訪都外国人のニーズに応えるべく、QRコード決済を恩賜上野動物園にはじめて導入し、その導入効果の実証実験を行っています。

 今後は、これまで蓄積した導入ノウハウを活用し、多数の方がレジャー等の目的で訪れる都民利用施設への導入をサポートしていく予定です。2022年度までに、キャッシュレス決済対応率を100%にしたいですね。

公金管理は安全性を最重要視

—都が全国に先駆けて導入した新公会計制度の現状は。

 都は平成18年に制度を導入し、全国の自治体に向けて制度普及に努めてきました。昨今は財務諸表の活用を推進していくことが肝要と認識しています。平成27年には、総務省が「統一的な基準」による財務書類の作成を要請、大半の自治体が完了しています。その結果、より多くの自治体間で比較・分析への可能性が広がりました。

 昨年11月には、都方式と同様の会計基準を採用する自治体で構成する「新公会計制度普及促進連絡会議」の主催で「公会計推進ミーティング2019」が開催されました。全国から集まった自治体職員等に、先進自治体からの事例報告など制度活用に向けて有用な情報を発信しています。また、今年の秋にも開催を予定しています。

—今後の展望は。

 今後は都庁内における制度の活用を促進したいと考えています。その一環として、財務会計システムの改修にも着手し、各局が活用に取り組みやすい環境を整えます。

 また、連絡会議構成団体の連携により、指標を用いた財務諸表の比較・分析などを行っています。こうした取組は、構成団体だけではなく他の自治体へも呼びかけていきたいと考えています。

 今後も新公会計制度の先駆者として、活用のすそ野を一層広げ、その成果を都の政策形成に着実に活かせるよう全力で取り組みます。

—金融情勢は世界的に厳しさが増しています。公金管理への影響は。

 年初来の新型コロナウイルス感染症の急拡大により、企業活動や個人消費の停滞、株価の下落等、各国の経済金融環境は大変厳しい状況です。

 この事態に、日銀をはじめ各国中央銀行は追加の金融緩和策を相次いで実施しましたが、世界景気悪化の長期化懸念から金融市場の動揺は続いています。市場金利においてもマイナス金利の更なる長期化が想定されます。

 当局は現在、歳計現金(歳入・歳出に関する現金)・基金等合わせて6兆円余りの資金を東京都公金管理ポリシーに則り、保管・運用しています。

 厳しい金融情勢がもたらす経済活動の停滞と緩和的金融政策の長期化は、利ザヤ縮小や資金需要不足、信用収縮につながり、公金預け先である金融機関の経営の健全性、すなわち公金の安全性・流動性に影響します。

 新型コロナウイルス感染症拡大の早期終息が待たれますが、いかなる状況においても、引き続き公金の安全性を最重要視し、流動性を確保した上で柔軟かつ効率的な保管・運用を行っていきます。

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