多摩水道改革推進本部長

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は多摩水道改革推進本部長の鈴木勝氏。多摩地域の水道事業を所管するこの組織は、特有の歴史を背景に発展してきた。コロナ禍における事業のあり方、サービス向上のための取組などについてお話を伺った。

コロナ禍での事業維持を決意

多摩水道改革推進本部長 鈴木 勝氏

20年先を見据え事業を展開

—新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。

 コロナ禍の中でどう水道事業を維持するか、大きな責任を感じています。水道局の新型インフルエンザ対策のBCPをもとにして、コロナウイルス感染防止にいかに対応するか、局の対策本部会議で協議を重ね、業務の継続にあたってきました。

安定給水のために水道事業に関する工事は止めることはできません。検針業務も続ける必要があります。受注者に中断の意向があればそれも受け止めましたが、業務を継続する場合には、業務に従事する方々の健康にも十分配慮し、感染防止に必要な経費の負担も行っています。

 一方、お客様に対しては、感染拡大で生活にも色々な影響が出ていますから、3月から開始した水道料金の支払い猶予を最大1年間に延長しました。7月末現在で1万5千件以上に対応しています。

 コロナ禍で震災や風水害が発生した場合の災害対応についても新たな視点での検討が必要です。7月11日に休日発災訓練を行いましたが、そうした視点も踏まえ実施しました。

職員については出勤抑制によりテレワークが増えました。人材育成などこれまでの職場の役割を見直す節目ですので、いろいろと工夫をしながら働き方改革や新しい日常への環境整備を進めていきたいと思っています。

—水道事業民営化についての議論も活発です。

 多摩地区の水道事業は、もともと市町が運営してきたものを都営水道へ一元化してきた特有の歴史があります。その際に政策連携団体をドラスティックに活用し、民間に任せられるものは任せながら効率的な事業体制をつくってきたことが大きな特色となっています。

 こうした先駆的な経験とノウハウを活かし、一昨年から他の水道事業体を支援する事業を始めました。都が進める東京と地方の『共存共栄』にも貢献できたらと考えています。

—これから特に力を入れるべき取組は。

 水道局では7月10日、「持続可能な東京水道の実現に向けて 東京水道長期戦略構想2020」を公表しました。局として20年先を見据えた事業運営方針です。今後、この構想に基づいて中期経営計画を年度内に策定する予定です。

 長期構想での多摩地区水道の課題は、大きく言えば強靭な広域水道の確立です。配水区域の再編、施設の再構築を行いながら給水安定性の向上に取り組んで行きます。そして今回、大きく取り上げたのが風水害対策の強化です。昨年10月に発生した台風19号では、山間部で大きな被害がありました。特に奥多摩町では断水が最長13日間も続きました。私も現場に入りましたが、水を供給できない辛さでとてもしんどい想いをしました。

 この経験を踏まえ、取水施設から配水管に至るまで、あらゆる水道施設の風水害リスクを洗い出し、短期及び中長期的な対策を順次実施していきます。

 また、風水害が発生した場合に備え、今は各市町へ営業活動を行っています。応急給水等に関する意見を予め聞き取り、今後の対応に活かしたいと考えています。

WEBからの口座振替が可能に

—サービス向上のための新たな施策も行っているそうですね。

 日々進化するICTを活用し、サービスの向上に努めています。

 昨年7月に東京都で初めてスマートフォン決済によるキャッシュレス支払いを導入しました。今年2月にはお客さまセンターにおいて、AIを活用したお客様対応を始めています。3月からはWEBから口座振替のお申し込みができるようになりました。これにより登録までの期間がそれまでの1、2ヵ月から1、2日と大幅に短縮されています。

 また、水道スマートメータを導入するプロジェクトが具体化しています。実現すれば、使用水量の見える化にとどまらず、様々なサービス展開に繋がる可能性がある画期的なものです。トライアルプロジェクトとして2024年までに約10万個、2030年代には全戸導入を目指します。

—職員へのメッセージがあれば。

 「何と頼もしいのだろう」というのが第一印象です。

 「何かあったら自分たちがやらなくては」という心構え。昨年の台風19号の対応では、山間部の取水口に流れ込んだ土砂を職員が力を合わせて人力で浚渫しました。現場の職員は気構えだけでなく使命感にあふれています。

 当本部には390万人のお客様がいらっしゃいます。そのための水道事業は壮大な事業であり、都庁内・局内各部署をはじめ、東京水道グループの仲間である政策連携団体、地元自治体、様々な事業者など多くの関係者と連携して成立している仕事です。職員に対しては相手に応じた適切な対応力と円滑なコミュニケーション力が求められるので、意識して取り組んでほしいと言っています。

 私は、多摩生まれ、多摩育ち。今も暮らす多摩が大好きです。その多摩地域で暮らす皆さんに、24時間、365日、安全でおいしい高品質な水をお届けして喜んでいただけるよう、これからも職員とともにしっかりと取り組んでいきます。

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