環境局長 栗岡 祥一氏

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自らが紹介する「局長に聞く」。今回は都市整備局長の上野雄一氏。都市整備局は東京を世界に選ばれる都市とするための重要な役割を担っている。コロナ禍でのまちづくり、築地の市場跡地の再開発の現状などについてお話を伺った。

先駆的な施策を展開

環境局長 栗岡 祥一氏

ゼロエミッション東京戦略を策定

—局長着任の感想は。

 環境局の印象は、まず事業が極めて多岐で広範なことです。

 公害局であった昭和45年当時は工場の規制監視など産業型公害が主でしたが、都市化の進展に伴い、自動車排ガス、化学物質といった新たな環境問題が生じてきました。今では温暖化、オゾン層破壊といった地球規模に拡大し、緑や水など自然環境の保護も一層重要性を増しています。

 その中で、環境局は国や他自治体に先んじて先駆的な施策を打ち出してきました。ディーゼル車規制やキャップ&トレード制度を我が国で初めて導入したときは非常に強い印象を受けました。これら先輩方の功績をしっかり受け継ぎながら職員が一丸となり、スピード感をもって取り組んでいきたいと思います。

—ゼロエミッション東京戦略の取組には大きな注目が集まっています。

 2018年のIPCC報告書では、世界の平均気温の上昇をより低リスクな1・5℃に抑えるため、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする必要があるとしています。都は昨年12月に「気候危機行動宣言」を行い、CO2実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京戦略」を策定しました。

 この戦略では、気候変動を食い止める緩和策と、既に起こっている影響に備える適応策を総合的に展開しています。また、資源循環分野を気候変動対策に位置付けるとともに、省エネ・再エネの拡大策や自動車環境対策など様々な分野で取組を強化しています。

 現在はコロナ禍にありますが、ウイルスとの闘いとともに忘れてならないのが気候変動の危機です。

 近年、日本は毎年のように猛烈な台風や豪雨に見舞われています。今年8月は都心で記録的な暑さが続き、35度を超える猛暑日が1カ月で11日と観測史上最多となりました。世界では大規模な山火事や熱波が頻発しており、正に気候危機に直面していると言えます。

 新型コロナウイルスは社会に大きな影響を与えていますが、感染予防策や新しい日常の広がりで、エネルギーの使い方や人の移動、物流など、ライフスタイルに大きな変化が生まれてきています。

 世界では、気候変動への対処を図りながら、コロナからの復興を目指す考えが広がっていますが、東京では、気候変動対策はもとより、人々の持続可能な生活を実現する観点まで広げたサステナブル・リカバリー(持続可能な回復)の考え方で、より良い復興を目指して行かなければならないと考えます。そのために環境施策をバージョンアップし、豊かな発想で効果が高い施策を展開していきます。

—ゼロエミッション東京の実現には、エネルギーの脱炭素化が不可欠です。

 まず、都は全ての都有施設で再エネ電力100%を目指します。このため、家庭の太陽光発電で買取期間が過ぎた卒FIT電力を買い取り、都施設で活用する「都庁電力プラン」を実施しています。

 また、住宅所有者が初期費用ゼロで太陽光発電機を設置できるよう、リースの活用や屋根の賃貸など事業者が行うプランに助成する事業を実施しています。

 都内の再エネ電力利用を拡大するため、首都圏自治体と連携し、自然の電気を利用したい家庭や商店等を募り、オークションで最も安く自然の電力を販売する会社を選ぶ事業も実施しています。

 さらに、家庭用蓄電池の設置補助等も行っています。

環境に配慮した行動の実践を

—資源循環の取組はいかがですか。

 持続可能な資源利用も重要です。プラスチックは製造、流通、消費の各段階でCO2が排出され、1回の使用で廃棄されるものも少なくありません。

 CO2実質ゼロを実現するには、リデュース、リユースの徹底と、使用済みのプラスチック製品を再び元のプラスチックに戻す水平リサイクルが不可欠です。

 都は、清涼飲料連合会や飲料メーカーと連携し、使用済みペットボトルをペットボトルとして再生利用するプロジェクトを今年8月から開始しました。

 また、持続可能なプラスチック利用を目指す先導的なプロジェクトを公募し、企業と共同事業を行うなど、イノベーションの創出にも取り組んでいます。

 都では、このように都民や企業、団体等と連携した様々な取組を展開することで、ゼロエミッション東京の実現に向けた大きなうねりを作っていきます。

—今後の課題と抱負は。

 CO2の排出は日々の生活や行動と密接に結びついており、私たちが環境に配慮した行動を積み重ねていくことがとても大切です。

 そのためには、行政として様々な媒体を活用して分かり易い情報発信に取り組み、都民からの共感をいただきながら、一人ひとりの意識と行動をしっかり後押ししなければならないと考えます。

 来年7月には延期となったオリンピック・パラリンピックが控えています。未だコロナ禍にありますが、気候変動対策の手を緩めることなく前進させることで、環境先進都市としての姿を世界に示せるものと考えます。

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