我が社が健康経営をする理由

一般社団法人日本免疫研究会
株式会社エーオーエーアオバ
   プライマリー・アシスト株式会社

  • 取材:種藤 潤

近年、企業を経営する上で欠かせない要素となりつつある「健康経営(C)」(※1)。NEWS TOKYOでは紙面やイベント等で推進を提案してきたが、その必要性をさらに周知させるために、健康経営を先駆的に取り組んできた3社(団体)に、導入の背景と具体的な方法、その効果などについて話を聞いた。

左から株式会社エーオーエーアオバの白井常雄代表取締役、一般社団法人日本免疫研究会の西沢頼母専務理事、プライマリー・アシスト株式会社の石山知良代表取締役社長

セルフチェックとがんばらない運動で結果の出る健康経営

 一般社団法人日本免疫研究会(日免研)は、2017年に創業。日本の予防医療のパイオニアの1人である金城実医学博士が20年をかけて開発した『ドクターセルフチェック』と、「腕振り体操」「バンザイストレッチ」などの「がんばらない運動」の導入を中心においた健康経営を広める活動を行っている。『ドクターセルフチェック』とは、52の質問に答えて3年後の健康状態とその問題点が「健康指数」として数値化される診断システムで、本紙2016年8月号で紹介したが、その後、独自に「実践健康経営指導士」の資格を創設。健康経営を目指す企業内での資格取得を支援し、その上でセルフチェックや運動を社内に適した形で取り入れてもらうという。

 この一連の手法は、日免研内でも実践していると、専務理事の西沢頼母さんは言う。

 「金城先生の手法は、誰にでもわかりやすく、実行しやすい。当社でもすぐに導入でき、しかも社員たちの数値が明確に改善し、実際に体調も良くなりました。また、スタッフは実践健康経営指導士の資格を取得しています」

 ちなみに日免研では、健康経営の推進とあわせて、30年以上前から日常の予防医療を支えてきた株式会社エーオーエーアオバの製品の導入も提案している。



上はエーオーエーアオバが提唱する「ドクターセルフチェック」、下は「腕振り体操」を社内で行っている様子(提供:エーオーエーアオバ)

海外事例から企業における 予防医療の重要性を知る

 株式会社エーオーエーアオバは1988年、丹羽耕三医学博士と共同開発した健康食品の販売会社として創業。以後、ルイボスティーやウコン、青パパイヤ飲料などの販売とともに、健康や環境をテーマにしたセミナーの開催、出版物の制作などを行ってきた。それらの根底には、病気にならない体づくり、予防医療の考えが息づいており、それは現在も変わらない。

 その取り組みが健康経営とつながったのは、『ヘルシー・カンパニー』(ロバート・H・ローゼン著)という書籍との出会いがきっかけだったと、代表取締役の白井常雄さんは振り返る。

 「日本がバブル景気の1990年代、アメリカでは予防医療に基づいた企業経営により、業績を好転させることが実証されました。それらの内容をまとめた同書を読んだ時、私は日本でもいずれこのような流れが来ると確信しました」

 その後、白井さんは2015年に前出の金城博士と出会い、博士の予防医療の考え方と、前出の健康経営の実践手法に共感。自社で実践するだけでなく、日本の企業にも広めるために、日免研を立ち上げた。

 「我々が培ってきた予防医療を健康経営に生かすのであれば、金城先生の実践しかないと思いました。実際、弊社で実践してみて、無理なくできて、しかも効果的で、その考えは間違っていなかったと実感しています」

父の介護と医療現場を知り 健康経営を核にした事業を創業

 白井さんと金城博士が出会った2015年は、経済産業省が本格的に健康経営を日本の企業に推進しはじめた時期だ。プライマリー・アシスト株式会社が創業したのも2015年。主要事業は健康経営のコンサルティング。基本的には日免研と同じく、『ドクターセルフチェック』とがんばらない運動の導入が主軸だ。そして自社内でも実践している。

 代表取締役社長の石山知良さんの前職は医療人材会社の執行役員。多数の病院に行く機会があったが、待合室には診療待ちの患者が溢れ、診療自体は短時間で終わる「3時間待ち3分診療」という実情を目の当たりにする。これは受診する側はもちろん、医療従事者の重労働環境の現れでもあり、改善の必要性を痛感した。さらに、父の介護を2年半経験、晩年に手足が不自由な姿を見て、予防医療の重要性を実感。健康経営を事業の柱に置いた。

 「創業当初は経産省が定める指標に沿った導入支援にとどまっていましたが、2018年、都政新聞が主催したセミナーで金城先生の講演を聴く機会がありました。『これこそが健康経営だ』と目からウロコが落ち、我々の事業にも取り入れるべきだと感じました」

健康的な食事について学ぶ「食育セミナー」とともに、懇親を兼ねたバーベキューも実施。押し付けでなく、楽しみながら社員が健康経営に参加する工夫をしている(提供:プライマリー・アシスト)

楽しく自発的に予防医療を実践 コロナ時代にあった支援制度も

 まずは自社内で導入すると、石山さん自身、その効果に驚いたという。

 「最初に受けたセルフチェックの数値にショックを受けましたが(苦笑)、それから腕振り体操などに加え、エレベーターを使わず階段を利用するなど、自分のできる形で実行しました。すると健康指数が改善し、ここ数年は体調も良好です」

 社員は20代~30代が中心で、まだ体調への不安も少ないが、そんな世代でも楽しみながら健康経営に参加できるよう、さまざまな独自制度を立ち上げてきた。

 「『健康オリンピック』と題し、セルフチェックの結果を競い、上位には景品を進呈しています。また、夏休み9日間連続休暇や、誕生日月のアニバーサリー休暇など、さまざまな休暇制度を設けたり、勤務間インターバル(勤務後に必ず休みを取らなければならない時間)を国内最長クラス確保したりしています。休息をしっかりとることでリフレッシュでき、社員たちの生産性も向上すると考えます」

 コロナ禍の状況にも対応。テレワークでの運動不足対策として、健康グッズ等の購入資金を補助するなど、社員の意見も聞きながら、新時代の健康経営の形を模索し続けている。

 客観的データに基づき、無理せず実行できる「健康経営」。その結果、エーオーエーアオバとプライマリー・アシストは「健康経営優良法人」に認定され、後者はその上位500社の「ブライト500」にも選ばれた。この手法の価値が広がれば、健康経営はさらに広がることは間違いなさそうだ。

 弊紙では、今後も健康経営に取り組む企業に注目していく予定だ。

1:健康経営(C)とは

 従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。これを取り入れることは、従業員等の活力向上や生産性の向上等組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上につながると期待されている。 詳しくは経済産業省ホームページ「健康経営の推進」を参照。

注:「健康経営(C)」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

情報をお寄せください

NEWS TOKYOでは、あなたの街のイベントや情報を募集しております。お気軽に編集部宛リリースをお送りください。皆様からの情報をお待ちしております。