下水道局長 神山守 氏

  • 聞き手:平田 邦彦

東京都の各局が行う事業を局長自らが説明する「局長に聞く」。今回は下水道局長の神山守氏。下水道局は今年度から開始した「経営計画2021」や「技術開発推進計画2021」に基づいて事業を展開中だ。今回はそれらを中心にお話を伺った。

「経営計画2021」を軌道に

下水道局長 神山守 氏

温暖化対策や浸水対策他を推進

—局長就任からこれまでの感想をお聞かせください。

 都庁人生のおよそ3分の2を下水道局で過ごしてきました。これまで多くの職員とともに、維持管理の重要性、若手職員の育成、建設事業の進め方など、様々な課題の解決や計画づくりを進めてきました。そのため、職員も私の仕事に対するスタンスは概ね理解してくれていると思います。

 次の世代の人が円滑に事業を進められるようしっかりレールを敷いていくのが私の務めだと自覚しています。

—「経営計画2021」の今後の進め方・課題は。

 今回も、前計画に続き、令和3年度からの5か年計画としました。

 区部の下水道管再構築では、整備年代の古い第1期再構築エリアの令和11年度の完了が見えてきました。今後は、第2期再構築エリアの着手に向け検討を進めていきます。

 浸水対策では、近年浸水被害が発生した箇所など3地区を新たに「対策強化地区」「対策重点地区」に加え、施設整備を推進します。また、近年、激甚化・頻発化する台風・豪雨を踏まえ、下水道施設整備の基本方針や課題について対応を検討するため、「今後の下水道浸水対策のあり方検討委員会」を今年7月に設置しました。合流式下水道の改善では、下水道法施行令への対応に必要な対策を令和5年度末までに完了予定です。

 エネルギー・地球温暖化対策では、2030年のカーボンハーフに向けた取組などを検討し、対策を進めていきます。震災対策、処理水質の向上なども引き続き推進します。

 流域下水道事業では、今年度、下水道局による市町村への下水道指導事務を開始し、下水道局の豊富な知識や経験、ノウハウを活用して技術支援体制の強化・充実を図りました。職員には、「下水道のトータルソリューションパートナーになれ」と言っています。

 また、下水道事業の運営にあたっては、新たな施設運営手法として包括委託を導入していくほか、AIを含むデジタル技術の活用や行政手続きのオンライン化など、技術革新に対応する様々な技術を導入していきます。引き続き、事業のより一層の効率化、利便性の向上に取り組みます。

DXによる技術開発に取り組む

—「技術開発推進計画2021」の具体的な内容・今後の取組は。

 9月22日に公表したこの推進計画は、令和7年度までの5年間の技術開発の取組を明確化したものです。「経営計画2021」を支えるために解決する課題と、現場が抱えている課題を整理し、31の開発テーマとして設定しました。

 現場が抱える課題では、すべての現場にアンケート調査を実施し、課題を把握しました。開発テーマは、それぞれに将来的な目標を明示し、バックキャストの考え方で5年の計画期間での到達点を設定しました。

 技術開発の方針として、政策連携団体である東京都下水道サービス株式会社をはじめ、民間企業や大学、国などとの連携を図るオープンイノベーションの推進や、共同研究の活性化など民間企業等の参加意欲が高まる取組を推進していきます。

 さらに、技術開発を進めるにあたっては、①デジタル(DXを推進し、効率的な下水道事業を実現)②働き方(人口減少・働き方改革への対応)③循環(持続可能な都市づくりなど社会変化への対応)④作業困難(安定的に下水道機能を確保するために必要な、維持管理困難箇所への対応)といった4つの視点を重視しています。

 「デジタル」の視点では、「雨水ポンプの運転支援技術」や「ドローン等で危険を伴う特殊環境の点検や調査を行う技術」などを開発していきます。

 「循環」の視点では、「水処理工程の温室効果ガスを削減する技術」として「AIを活用した水処理に必要な送風量の最適化」や「下水汚泥の焼却過程で消費する電力以上に発電する技術」「エネルギー供給型焼却炉の開発」に取り組みます。

 「作業困難」の視点では、「大深度の下水道管など、人力作業が困難な箇所での清掃技術」や「焼却炉から発生する灰の採取作業の自動化」等に取り組んでいきます。開発した技術は、原則施設の更新時に導入しますが、効果が高い技術は速やかな導入を検討します。

 技術開発の理念である「下水道の未来を切り拓く技術開発」を進め、将来を見据えて解決すべき課題等を克服し、お客さまサービスの更なる向上を目指し、取組を進めていきます。

—コロナ禍での局事業の推進はいかがですか。

 本年度上半期は、多くの時期が緊急事態宣言期間内でした。また、東京2020大会の開催で、多くの工事現場で車両の抑制等に取り組むなど、事業推進に制約条件がありました。しかし、局職員及び下水道工事等の受託者の努力や工夫により、下水道建設工事等の執行は現在、大きな影響等なく進捗しています。

 また、関係者の安心確保に向けた取組として、国内で初めて下水中の新型コロナウイルスの感染があるかを調査しました。感染性は認められないことを確認し、下水道からのコロナ感染を懸念していた関係者の安心確保に貢献できたと思います。

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