東京の防災力を高めるための新たな取組(1)
事業所防災リーダー制度を推進
/東京都 総務局 総合防災部 事業調整担当課

 大地震等の発生時、企業等では従業員の安全確保や、一斉帰宅の抑制等による混乱防止が重要だ。東京都は、平時はもとより発災時も都と直接つながって、職場で対策を推進してもらうための事業所防災リーダー制度を令和4年3月に創設した。東京都総務局総合防災部事業調整担当課長の西平倫治氏に、現在展開を進めている同制度について説明していただいた。「防災都市づくり推進計画」は、施策の基本的な方向や整備地域等を定めた「基本方針」と、それに基づく具体的な整備計画等を定めた「整備プログラム」で構成されている。
直近では、令和2年3月に「基本方針」を改定し、令和3年3月には、「整備プログラム」を改定した。計画期間は、基本方針が令和3年度から令和12年度までの10年間、整備プログラムが令和3年度から令和7年度までの5年間としている。また「木密地域不燃化10年プロジェクト」として取り組んできた「不燃化特区制度」を令和7年度まで5年間延長した。

東京都 総務局 総合防災部事業調整担当課長西平  倫治氏

東京都 総務局 総合防災部事業調整担当課長西平 倫治氏

事業所防災リーダー制度 創設の目的と役割

—昨年、事業所防災リーダーという制度を創設されました。創設のきっかけは?

西平 東日本大地震発災時、東京都には帰宅困難者が大量に発生しました。この時の教訓は、大地震等の発生時は、企業等では従業員の安全確保や、一斉帰宅の抑制等による混乱防止が重要になるということです。その対策として、都は独自の条例を作成し国や首都圏の自治体、事業者等と一緒にガイドラインを作って普及啓発を行ってきました。しかし、東日本大震災から10年以上が経ち、その認知度は低下してきています。

 東京は世界有数の国際経済都市であり、企業や事業所の数が非常に多く、それらの防災力向上が東京の防災力向上に直結します。そこで、帰宅困難者対策を含め、企業の防災力の向上のための実効性のある取組の一つとして、事業所防災リーダー制度を創設することにしました。

—事業所防災リーダーになるには資格等は必要なのですか。

西平 特に資格等はいりません。パソコンやスマートフォンで企業情報のほか、情報管理者と事業所防災リーダーを登録していただくだけです。情報管理者には、登録している企業情報や各事業所防災リーダーの情報を管理するなどの役割を担っていただき、それぞれの情報に変更等があった場合に更新をお願いしています。

 事業所防災リーダーには、防災に関する情報を職場内で発信し、防災に関する普及啓発を進めるとともに、災害時に周囲の人たちに安全確保行動を呼びかけるなどの役割を担っていただきます。いずれも一事業所で複数人を登録可能です。

—事業所防災リーダーにふさわしい人は?

西平 大企業であれば防災部署、総務や庶務などの防災担当部署の方、各支店は支店長、副支店長、中小企業であれば総務課長、防災担当、個人事業主は事業主など、日頃から防災のことを担当している人にリーダーになってもらうと、企業の組織とリーダー制度がうまく整合性がとれると思います。

事業所防災リーダーになるとどうなる?

—事業所防災リーダーは具体的にどのようなことをするのでしょうか。

西平 普段は、登録いただいたメールアドレスやLINEアカウントへ、都から「事業所防災リーダー通信」などの防災コンテンツが配信されますので、防災の取組のヒントにするなど、従業員等への防災教育に活用していただければと思います。

 発災時(災害接近時)には、登録いただいたメールアドレスやLINEアカウントへ、都から災害関連情報や防災行動のお願いなどが発信されます。

 これは都から特別な業務を依頼するものではなく、あくまでも各事業所の災害対応を支援するための情報提供です。都には様々な機関から情報が集まってきます。その中から企業に役立つ情報を取捨選択して提供しますので、ぜひその情報を参考にして、従業員等を守るための適切な対応をしていただければと思います。

—大企業にはBCP等はすでにあると思いますが、東京の企業の多くを占める中小企業にとっては防災計画を作り、実際に訓練をするのは大変だと思います。

西平 今年度中には、事業者防災リーダーのシステムの運用を開始する予定です。このシステムにより、リーダーが企業、事業所の防災力の向上につながる防災の知識を得られるコンテンツがより拡充されます。中小企業がBCPや防災計画を作る際にも参考になると思いますので、ぜひ活用してください。

 災害時に、膨大な情報の中から企業に必要な情報を選ぶのは大変ですので、都から直接情報が提供されるということは非常に有用だと思います。停電などの場合、テレビは見られませんが、スマートフォンのバッテリーや予備バッテリーなどを活用すれば、発災後しばらくはメール・SNSメッセージは受け取れる可能性があります。

 企業の備えとして、災害時の情報入手のツールの一つとして、ぜひ事業所防災リーダーに登録していただきたいと思います。

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