親子参加のオンラインワークショップで
楽しく学びながら社会貢献活動を啓発
株式会社イノビオット

  • 取材:種藤 潤

今年3月25日(土)26日(日)の2日間、オンラインで開催された親子向けプログラミングのワークショップの後半部で、「繊維」と「環境」をテーマにしたクイズワークショップが行われた。主催は、本紙180号で紹介した株式会社イノビオットだ。主に小学生向けのオンラインプログラミングスクールを手がけてきた同社が力を入れ始めた、親子世帯と企業を結ぶ新たな事業の実態に迫った。

当日行われたオンラインワークショップ後半部のトップ画面(提供:イノビオット)

防水・軽さ・暖かさ・滑らない 子どもがクイズに回答し繊維を理解

 「繊維×環境」というユニークなオンラインワークショップには、合計360世帯が参加した。司会進行は、イノビオットが運営するオンラインプログラミングスクール「みらいいアカデミア」代表講師・Hiroが担当。この日のためにイノビオットは繊維に関する2択クイズを4問制作。出題されたクイズに答えると「魔法の杖」が手に入り、4つ揃うと生活に役立つ技術を生かした「繊維」が完成し、ミッションがクリアできるというものだ。

 1問目は『防水』。「はすの葉」の構造をヒントに、水をはじく仕組みが、繊維でどのように再現できるのかが理解できるようになっていた。

 2問目は『軽さ』の理由をわかりやすく表現するために「うどん」と中空の「マカロニ」を使って説明し、3問目は『暖かさ』を「歯車状の糸」、4問目は『滑りにくさ』を「ヤモリ」の手脚の表面の構造をヒントに繊維で再現できたことなどを紹介。小学生でも繊維の技術が理解できる選択肢をあげて説明した。

 クイズの内容は、このワークショップを共催した帝人フロンティア株式会社の技術が基盤となっている。そのため、クイズの冒頭では同社を「服や布団、カーテンなど生活に欠かせない繊維をあつかう企業」として紹介。そしてクイズの最後、4つの回答によってわかった繊維の技術が、帝人フロンティアの持つ独自技術であることも説明された。

 さらに、クイズの中では繊維がペットボトルからリサイクルできる仕組みも紹介。繊維に関わる技術がそれぞれ環境負荷軽減につながっていることも付け加えられた。

実際にワークショップで使用されたクイズのスタート画面(提供:イノビオット)

参加世帯の約7割が満足 共催企業のイメージは約8割アップ

 後日実施した参加者アンケートによると、360世帯の参加者のうち6割以上が小学校低学年が占め、中学年が3割、高学年が残りだった。そして参加者全体の約7割が「とても満足」「満足」と回答。さらに、共催の帝人フロンティアに対する企業イメージが「とても良い印象を持った」「良い印象を持った」と回答した割合が、8割に迫る結果となった。

 イノビオットは、これまでも企業や団体と共催し「金融」「SDGs」といったテーマの親子向けオンラインワークショップを行ってきた。今回の「繊維」は従来と異なる難しさがあり、さらに「環境」という新たな要素を加えなければならなかったが、齊藤陸取締役は一定の手応えを感じることができたと振り返る。

 「正直、繊維の詳しい技術や構造については、学校・メディアでも伝える機会がほとんどなく、説明の仕方次第では、子どもたちが関心を持ちにくくなってしまう可能性がありました。また、環境という要素をどう盛り込むか悩みましたが、結果として子どもたちに受け入れられたとホッとしています」

 福田紘也代表取締役は、親子の反応はもちろん、帝人フロンティアの社員の反応が印象的だったと話す。

 「当日は帝人フロンティア様にもワークショップの様子を見ていただいたのですが、子どもたちがクイズを通して繊維に関心を持っていく様子を、とても嬉しそうにご覧になっていました。自社の技術が、一般の方に受け入れられる場面に立ち会えたことが、本当に嬉しかったんだと思います」

クイズの中では繊維を構成する帝人フロンティアの4つの技術が、環境負荷軽減につながることにも触れられていた(提供:イノビオット)

関心の低い親子世帯にも 環境活動を伝えるきっかけに

 共催した帝人フロンティアは、2020年より「素材からエコにこだわろう。」「きれいな空気と海を守ろう。」「省エネな毎日を送ろう。」という3つの重点目標を掲げた環境戦略『THINK ECO』を推進しているが(本紙165号で紹介)、一般生活者向けにも訴求や啓発活動を行っており、各種イベントやプロスポーツチームとの連携にも力を入れている。そのひとつの選択肢として、イノビオットの親子向けのワークショップに着目したという。

 「イノビオット様とは、小学生向けの環境教育のワークショップで連携したいと考えました。単に環境のみのワークショップよりも、プログラミングのワークショップと一緒に開催することで、環境に関心が低い世帯でも参加しやすいと期待しました。実際、参加した子どもたちは楽しんでいただいたようで良かったです」(帝人フロンティア)

 イノビオットは、企業と連携したクイズ制作やワークショップ運営のノウハウはもちろん、学習意欲の高い子ども世帯へアプローチできるのも強みの一つだ。プログラミング教室で培ったネットワークはもちろん、関東を中心に全国の小学校や自治体と連携、学校内で子どもたちに直接チラシを配布することも可能だという。

 福田代表は、今回のようなワークショップを、企業ごとに継続的に実施していくことが理想だと語る。

 「例えば帝人フロンティア様であれば、繊維をテーマにしたクイズを継続的に作り、ワークショップを実施すれば、知識が広がり、深まり、さらに繊維や企業への関心も高まると思います。さらにそれらをアーカイブして活用することもできます。今後はリアルの場でのワークショップやイベントも実施できますので、オンラインと両輪で、小学生世代の子どもを持つ家庭とのコミュニケーションをお手伝いしていきたいと思います」

 楽しい学びを通して、親子と企業をつなぐ新たな形。今後どのように広がっていくか期待したい。

イノビオット代表取締役の福田紘也(ひろや)さん(左)と取締役の齊藤陸(りく)さん(右)

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