「隠れ我慢」※1のない社会を目指す
「#OneMoreChoiceプロジェクト」を大学でも実践
株式会社ツムラ

  • 取材:種藤 潤

経営理念「自然と健康を科学する」で知られる株式会社ツムラは、本業の漢方製剤等の製造販売を手がける一方で、現在、性別問わず誰もがライフステージによって起こる、心身の不調に伴う社会課題の解決を目指した活動に力を入れている。2023年からは大学生に特化したオリジナル研修や健康相談対応に取り組み始めているが、その実際の様子を取材することができた。

「大学生向け#OneMoreChoice 研修」など大学生を対象に実施する「Carellege Action(ケアレッジアクション)」のイメージロゴ(提供:ツムラ)

ツムラ社員が寄り添いながら 学生が心身の不調と将来を考える

 6月某日の昼休み。東洋大学白山キャンパスの一室では、女子大学生10人、男子大学生1人が集い、株式会社ツムラが考案した「大学生向け #OneMoreChoice(ワンモアチョイス)研修」が行われていた。

 同研修は、一人でも多くの「隠れ我慢」を減らすことを目的に作られたもので、4つのプログラムにより構成されている。

 (1)「隠れ我慢」を知るために、心理カウンセラーの下園壮太先生監修のもとに開発した「隠れ我慢チェッカー」で自分のタイプを判別。ちなみにタイプは①気遣いさん、②敏感さん、③頑張りやさん、④慣れっこさん、⑤不調さん、の5つ。

 (2)人生のライフステージを自身のライフイベントやキャリア等をふまえて中長期的に考え、その時々で起こりうる不調症状を予測。

 (3)各ライフステージに生じうるさまざまな心身の不調症状を知り、正しい対処方法を、婦人科医師からの動画で学ぶ。対処法にはセルフケアでできること、西洋医学や漢方医学での治療法も含め幅広く知ることができる。さらに、コミュニケーションで隠れ我慢をなくすためのアドバイスを漫画とともに描いた、「隠れ我慢画」を紹介。

 (4)最後に「わたしの#OneMoreChoice」として、隠れ我慢以外の選択肢として各自ができる「#OneMoreChoice」を宣言する。

 各ワークは5、6人のグループに分かれて行われ、各グループにはツムラ社員が加わり、学生たちがこの先の人生をイメージしやすい環境づくりを行っていた。

 そうした社員たちの寄り添いもあってか、約2時間のワーク中、学生たちは自由かつ真剣に、キャリアやライフを実現するのにはどのように健康を管理するのか、隠れ我慢しないためにはどんなことが必要かを考え議論した。また、いつも一緒に過ごす学生同士でも、人によって、不調の感じ方や必要な対処法が違うことにも気づき、互いにどのように声をかけてみると相手に隠れ我慢させないのかなどの話し合いも深めていった。

東洋大学で実施した「Carellege Action」の様子。まず、同プロジェクトを担当するコーポレート・コミュニケーション室広報グループ課長代理の宮城英子さんと大山尚美さんが、ツムラがなぜこのプロジェクトに取り組むかなどを解説

上は当日配布された資料。学生たちが書き込みながら日常の心身の不調や「隠れ我慢」を考えていく

生理・PMSを我慢する大学生は8割以上※2 約7割が「相談しにくい」実態

 ツムラはこの研修に加え、大学生が心身の不調について医師に無料で、保険証も要らずに相談できる窓口「ヘルスサポート」を期間限定で設置した。この健康相談窓口と先の研修をあわせて、「Carellege Action(ケアレッジアクション)」と命名し、東洋大学、芝浦工業大学、上智大学、東京経済大学からの賛同を得て、今年4月から活動を開始している。

 同社が心身の不調や隠れ我慢に着目した活動を開始したのは、2021年から。同年3月の「国際女性デー」にあわせてWebムービー、新聞広告により「#OneMoreChoice プロジェクト」開始を宣言。加えて、様々な分野で活躍する人の「わたしの#OneMoreChoice」インタビューや、東洋大学での研修でも使用した「隠れ我慢チェッカー」「隠れ我慢画」の制作および情報発信を行うことで、多くの生活者が課題と感じている隠れ我慢のない社会に向けて少しずつ活動を行ってきた。その実践手法として生まれたのが「#OneMoreChoice研修」である。

 一方で、生活者の不調に関するさまざまな実態調査を行い公開してきた。そのなかで2021年3月に全国の20代~50代の女性1万人を対象に実施した「隠れ我慢に関する実態調査※3」では、心身の不調があっても我慢して仕事や家事を行う隠れ我慢をしていると回答した女性が79.2%に上った。年代別に見ると、20代が82.3%、30代が83.7%と8割を超えていることがわかった。

 こうした隠れ我慢を続けた結果、全体の約6割が「我慢することで体調が悪化」(61.4%)し、「我慢することで後悔した」(53.4%)経験があるということも判明した。

 さらに、20代に隠れ我慢が多い実態に着目した同社は、女子大学生1000人を対象とした調査を実施。すると、「生理やPMS(月経前症候群)による不調」を日常的に我慢しているという回答が85.7%に達し、「頭痛」(51.8%)、「疲れ・だるさ」(44.6%)と続いた。また、「生理やPMSによる不調」を「誰かに相談したい」との回答が61.8%だったのに対し、「相談しにくい」と回答した学生は68.6%に達することもわかった。

書き込んだあとには、ツムラ社員も加わり、グループ内で話し合う時間を設けて理解を深めていた

ワークの合間には心理カウンセラーの下園壮太先生(上)と、かしわの葉レディースクリニック院長の岡村麻子先生(下)が、隠れ我慢について解説する映像を流した

未来ある学生のため 社会全体で「隠れ我慢」のない世の中に

 これらの調査によって見えてきた大学生を取り巻く状況とともに、それらを知る機会自体がない現状を改善するために、大学生向けの「Carellege Action」が立ち上がったという。

 「心身の不調は性別問わずあるものですが、やはり生理やPMSなど女性特有の不調に関する問題が多いのも事実です。特に大学生は、学校やアルバイトなどの制度が休みにくかったり、周囲の理解が不十分で言い出しにくかったりすることで、隠れ我慢してしまいがちですが、それらは社会全体で変えていく必要があります。特に初めて一人暮らしをする大学生は相談相手もおらず、隠れ我慢しがちです。『Carellege Action』がその解決のきっかけになれば幸いです」(ツムラ コーポレート・コミュニケーション室 広報グループ)

 先の「ヘルスサポート」で学生たちの相談に乗る医師も、「Carellege Action」の必要性を強調する。

 「実際に相談に応じて、女子大学生の多くがPMSに悩んでいることがわかりました。悩み方は人それぞれですが、症状が生じる原因や対処法を伝えると納得し、自分の健康と向き合えるようになったと言っていただけました。素晴らしい取組だと思います」(フィーカ レディースクリニック院長の佐野麻利子先生)

 「Carellege Action」に込めたツムラの想いは、この日参加した学生たちにも確実に伝わったようだ。

 「隠れ我慢をこのワークで言語化し理解することができた。また、キャリアプランもこうしたワークがなければ考える機会がなかった。今から準備をしていきたい」(3年生女子)

 「男性でも自律神経失調症など隠れ我慢はあり、性別を超えて悩みに寄り添うことが大切だと研修を通じて感じた」(2年生男子)

 「Carellege Action」および「#OneMoreChoice プロジェクト」に関する詳しい情報や調査データは、ツムラの専用サイトで公開されている。関心のある方はぜひご覧いただきたい。

※1:隠れ我慢とは心身の不調を我慢して仕事や家事を行うこと。株式会社ツムラの登録商標です。
※2:生理やPMSに関する大学生の不調実態調査(株式会社ツムラ、2023年、調査委託先:マクロミル)
※3:隠れ我慢に関する実態調査(株式会社ツムラ、2021年、 調査委託先:楽天インサイト)

参加した学生11名とツムラ社員

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