南イタリアに伝わる、別名イワシのエキスと呼ばれる逸品の魚醤

  • 記事:大庭 麗

シンプルなオイルベースのパスタを、一人分小さじ2杯のオリーブオイルと小さじ2杯のコラトゥーラで味付け。火を加えないことで豊かな香りが広がる

 前回に続き南イタリア、サレルノにある小さな町チターラで行われている伝統的漁法、メナイカ漁のイワシの話題です。今回はその地で作られるイタリアの魚醤“コラトゥーラ”を紹介します。イタリア語で濾過物を意味するこの名前。同じ名前なのは単なる偶然なのかと思っていたのですが、実はチターラ地方のコラトゥーラの製法こそが、その名前の由来だったようです。

 イタリアのコラトゥーラの多くは、アンチョビを作る際の副産物であり、漬け込んだイワシから出てくる旨みを含んだ水分を熟成し、濾過と加熱凝縮を繰り返して作る、ギリシャ式と呼ばれる製法が主流です。一方、チターラ地方をはじめとするラテン式と呼ばれる製法は、イワシに岩塩をまぶして24時間置き、水分を抜きます。その後、テルツィーニョと呼ばれる木製の小樽に、塩と共に一尾一尾丁寧に向きを揃えて並べ、小さな木蓋をして重石を載せ、熟成室で18~24カ月熟成させます。重石をすることで、熟成中の発酵によって溶けたイワシの身が、樽の上部に液体となって溜まります。熟成後、樽の底に小さな穴を開け、15~20日かけて、樽上部に溜まった液体を一滴一滴ポタポタと抽出します。その際に、再度樽内部の整列したイワシの層を通過することで、穴から出てくる液体は、味わいに深みが増し、濾過され透き通った琥珀色になるのです。この天然の濾過システムこそが、“コラトゥーラ”。濾過物を意味するその名前の由来という訳です。

 すべての液体が抽出されると、樽の内部に残るのは乾燥した魚の骨と少量の身のカスのみ。これが、このコラトゥーラがイワシの身のエキスと言われる所以。決してアンチョビ作りの副産物ではないのです。

 古くは、貧しい人々が鮮魚の代用品として、パスタや茹で野菜に用いていた調味料。今日では、世界中の魚醤の生産者たちもが驚く、魚醤の概念が変わる逸品と言われる高級品です。

大庭 麗 おおばうらら

大庭麗東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

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