ひとの手の温もりこそが生パスタの美味しさの秘密

  • 記事:大庭 麗

午後になると、ご近所さんが集まりお喋りをしながら、各家庭の夕食用にパスタ・フレスカをつくることも

 魅力あふれるイタリアの文化。その中でも「いいなぁ」と思うことのひとつに、パスタ・フレスカ(生パスタ)の文化があります。「手打ちのパスタを準備することは、日曜日の朝の良き習慣だった」。多くのイタリア人の友人が、思い出としてしばしば語ってくれるその光景。日曜日の朝になると、家族や親戚の集まるランチのために、ノンナ(おばあちゃん)や、マンマ(お母さん)が生地をこね準備をし、子供たちは、綿棒で生地を延ばすテーブルの下で鬼ごっこをして遊んだり、生のパスタのつまみ食い(小麦粉をこねた生の生地なのですが、イタリアではそれを子供がつまみ食いすることはよくあるようです)をしたそうです。

 パスタ生地は人の手の温度によって、味が変化すると言われ、特に手の温度の高い人が昔からパスタ名人と呼ばれてきました。パイ生地や、チョコレートなど製菓には、余分な熱が吸収される大理石の作業台が用いられるのに対して、パスタ生地に必ず木製の麺台が用いられるのは、生地の温度を保つためと言われています。古くから、男性に比べて手の温度の高い女性は、すし職人や、チョコレート職人、菓子職人には向かないと言われますが、パスタの生地をこねるには、女性の温かい手こそが、向いていると言われます。古くは、パスタを一人前にこねられなくては、お嫁に行けないと言われていた時代もあり、特に年配のご婦人たちは、みな当たり前のように上手くパスタをこねます。

 イタリアのレストランで働いていた頃、しばしばご近所のご婦人が午前中に数時間だけ、厨房にパスタの仕込みに来るお店がありました。私のイメージでは、パスタ名人のご婦人は小柄で若干の小太りでお喋り好き。世間話をしながらも、魔法のようにあっという間に大量のパスタを仕上げてしまう人たち。

 ひとの手の温もりが、その美味しさにつながる。まさにパスタ・フレスカは素敵な食べ物です。

大庭 麗 おおばうらら

大庭麗東京都生まれ。2001年渡伊。I.C.I.F(外国人の料理人のためのイタリア料理研修機関)にてディプロマ取得。イタリア北部、南部のミシュラン1つ星リストランテ、イタリア中部のミシュラン2つ星リストランテにて修業。05年帰国。06年より吉祥寺にて『イル・クッキアイオ イタリア料理教室』を主宰。イタリア伝統料理を中心に、イタリアらしい現地の味を忠実に再現した料理を提案し、好評を博している。

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