【特集】建設進む竹芝地区開発事業

  • 記事:大竹 良治

海側から見た業務棟のイメージ(右)と住宅棟外観のイメージ(左)

 JR浜松町駅の東側に広がる竹芝エリアで進められている再開発事業が佳境を迎えている。この再開発は複数の都有地を一体的に活用し、民間活力の導入も図りながらまちづくりを進める「都市再生ステップアップ・プロジェクト」のひとつ。現在、地上40階建ての業務棟と地上18階建ての住宅棟のほか、浜松町駅から首都高速道路の上をまたぎ、竹芝ふ頭までを結ぶ歩行者デッキの建設が進む。完成は2020年を目指しており、エリア一帯のさらなる活性化の拠点となることが期待されている。

都有地を有効活用

民間活力の導入で国際競争力強化

 竹芝地区は「特定都市再生緊急整備地域及びアジアヘッドクォーター特区」(※参照)に指定されており、大手町・丸の内・有楽町地区の国際金融等の業務拠点や、山手線で半世紀ぶりとなる新駅「高輪ゲートウェイ」の建設が進む品川・田町地区といった交通結節点に囲まれている。さらに羽田空港にも近く、東京の国際競争力を強化する上で重要な拠点となっている。

 近隣には旧芝離宮恩賜庭園、浜離宮恩賜庭園の2つの文化財庭園が存在し、豊かな緑に恵まれているほか、伊豆諸島や小笠原への玄関口である竹芝ふ頭など、ウォーターフロントの開放的な景観が楽しめることも大きな特徴だ。

 こうした竹芝地区の地域特性を生かすため、東京都は「豊かな緑、海、文化を実感できる、活気ある業務・商業等の拠点を形成」をコンセプトとした「竹芝地区まちづくりガイドライン」を策定した。

 ガイドラインで設定されたエリアは港区海岸1丁目内の約28ヘクタールで、「芝離宮エリア」「浜離宮隣接エリア」「ふ頭エリア」「複合エリア」の4つのエリアに分かれる。現在、再開発事業が進められているのは、このうちの「複合エリア」の約1・5ha。

 東京都計量検定所、東京都立産業貿易センター、東京都公文書館の3つの都有施設の跡地である都有地の総合的活用を図りながら都市再生を推進することを目的とした「都市再生ステップアップ・プロジェクト」として事業を実施することとなり、民間から開発案を公募、平成25年5月に東急不動産(株)と鹿島建設(株)を中心としたグループの提案が採用された。

 複合エリアのうち、浜松町寄りのA街区には業務棟が建設され、産業貿易センター(展示施設)、オフィス、店舗、ビジネス交流施設、企業支援施設などが入居する。また、海寄りのB街区には住宅棟が建設され住宅のほか、保育施設も設ける。

 さらにJR浜松町駅からゆりかもめの竹芝駅、竹芝ふ頭までを直結する歩行者デッキを整備、アクセス面での利便性向上も図る。

 現在、東急不動産(株)と鹿島建設(株)が設立した(株)アルベログランデが事業主体となり建設が進められており、2020年東京オリンピック・パラリンピック(平成32年7月)の開催までの完成を目指している。

※「特定都市再生緊急整備地域及びアジアヘッドクォーター特区」

 都市再生特別措置法で緊急かつ重点的に市街地整備を推進し都市再生の拠点として指定された「都市再生緊急整備地域」のうち、国際競争力を強化する観点から特に重要な地域について「特定都市再生緊急整備地域」が指定されている。

 「アジアヘッドクォーター特区」は東京にグローバル企業のアジア統括拠点や研究開発拠点を誘致し、都内・国内企業とのコラボレーションを促進することを目標に指定。ほかに都心・臨海地域、新宿駅周辺地域、品川駅・田町駅周辺地域などが指定されている。

計画位置図

産業支援、環境・にぎわいを創出
竹芝地区の防災拠点としての機能も 【業務棟】

 A街区で建設が進む業務棟は竹芝地区開発の中核となる、地上40階、地下2階、高さ210m、延床面積18万㎡の超高層ビル。

 建設に当たっているのは鹿島建設(株)で、平成28年5月16日に着工、現在は高層階にまで立ち上がり、ビルの外観が明らかになりつつある。

 業務棟の用途は、事務所、店舗、ビジネス支援・交流施設、企業支援施設、産業貿易センターなどで、防災対策、エネルギー対策にも力を入れている。さらに、業務棟の海側のスペースには階段状の「(仮称)スキップテラス」を整備し、緑化を図るとともに、生物多様性に関する情報発信を行う計画だ。

(仮称)スキップテラスのイメージ

【産業振興とにぎわい創出】

 低層階には東京都の産業貿易センターを配置。また、コンテンツ産業の研究開発や人材育成、ビジネス交流機能を整備するほか、エリアマネジメントによるまちづくり推進のための「(仮称)竹芝まちづくりサロン」が整備される予定。

 また、低層部の「(仮称)竹芝ガレリア」には店舗、ホールなどが整備され街のにぎわいを演出する。

(仮称)竹芝ガレリアのイメージ

【防災対応力とエネルギーネットワーク】

 地域の防災力の強化と将来のエネルギー需要の変化を見据え、エネルギーマネジメントへの柔軟性と拡張性の実現を目指す。

 地震や各種災害に強い建物構造とすることはもちろん、エネルギープラントを導入するなど、最先端のBCP計画で、入居企業の事業継続性をサポートする。

 さらに竹芝地区全体のDCP(地域事業継続計画)も見据え、地域と連携した防災体制づくりや帰宅困難者支援などにも取り組み、竹芝地区における防災拠点を構築する。

【環境教育と情報発信の拠点形成】

 業務棟の大きな特徴となっているのが「(仮称)スキップテラス」を活用した環境教育、情報発信機能の整備。

 竹芝の豊かな自然に囲まれた立地特性を生かし、緑化に加え、8つの生物多様性の取組(蜂・水田・島・水・空・菜園・雨・香)を実施する計画だ。

 ここではミツバチの飼育、屋上菜園、水田の設置のほか、壁面に巣箱を取り付け、芝離宮に飛来するハヤブサの誘引などを試みる。こうした取組を環境教育などに生かしていく計画だ。

シェアハウスなど多様な住居も
職住近接のライフスタイルを提案【住宅棟】

 B街区で建設が進められている住宅棟は地上18階、高さ約60m、延床面積約1万9000㎡。

 外装デザインは竹芝地区が「海の港」竹芝ふ頭、「空の港」羽田空港と近接していることから、多様な価値観の人々が集まり交わる場所、よりクリエイティブな場所としてにぎわうことを目指し、コンセプトを「Creative Sail」とした。そして「帆」をモチーフに、曲線を強調、世界へ羽ばたく先進的なデザインとしている。

【新たなライフスタイルを提案】

 居住機能では、職住近接での自分らしいライフスタイルの実現を目指し、A街区(業務棟)とB街区(住宅棟)を複合一体的に開発、低層部には保育所や店舗を整備するなど、オフィスワーカーのサポート機能の充実を図る。

 住戸プランは1R~3LDKを用意、さらにライフスタイルに合わせて、一般賃貸住宅のほか、外国人就業者の中長期滞在ニーズに対応した「サービスアパートメント」、クリエーターや企業家の交流を促進する「シェアハウス」と多様な住居を提供する。

 共用部においてはラウンジやフィットネススペースを設け、住環境の充実だけでなく、自然に交流が生まれる空間作りを目指す。

【ランドスケープデザイン】

 竹芝駅に直結する広場のランドスケープコンセプトは「Coral reef garden plaza」。サンゴ礁をイメージして曲線を用いたカラフルな植栽帯をデザインする。

 また、その曲線によって滞留できる場所を作り、ベンチを設けることで外部空間でのミーティングや、様々なコミュニケーションが生まれるアクティブな環境づくりも目指す。

浜松町駅と竹芝ふ頭をつなぐバリアフリーの「歩行者デッキ」

 A街区、B街区で進められている竹芝地区開発の一環の事業として、大きな関心を集めているのが浜松町駅から竹芝ふ頭に至る全長約500mの「歩行者デッキ」の整備だ。

 これまで浜松町駅から竹芝エリアに行くには、南北に走る海岸通りを渡らなければならず、また上には首都高が走り、物理的にも心理的にも地域の分断を意識せざるを得ないという課題があった。

 その問題を解消するため、今回の竹芝地区開発を機に、浜松町駅から首都高を跨いで、業務棟を通り、竹芝駅・竹芝ふ頭に至るまでのバリアフリーの歩行者デッキを整備することとした。

首都高の上を跨いで歩行者デッキを架設

歩行者デッキの完成イメージ

 これにより、竹芝エリアと浜松町エリアの人の往来が活発化し、街に新たなにぎわいが創出するとともに、エリアマネジメントの活動にも寄与するものと期待されている。

 さる7月7日には深夜に首都高の通行を止め、「歩行者デッキ」を上空に取付ける工事が完了するなど、工事は順調に進んでいる。

 今後、「歩行者デッキ」は業務棟の3階に直結し、将来的にはJR浜松町駅との接続も予定されている。完成すれば、天候の影響を最小限にJR浜松町駅と竹芝エリアをほぼ水平に結ぶルートが生まれることになり、空の玄関・羽田空港へつながる浜松町駅と海の玄関である竹芝エリアの歩行者ネットワークが拡充し、利便性が向上すると期待されている。

生まれ変わる産業貿易センター
平成32年リニューアルオープンへ

 東京都は都内中小企業の振興を図るため、都内の商工業者等が見本市や展示会、会議等に使うための貸し施設として浜松町と浅草に2つの産業貿易センターを設置している。

 このうち、浜松町の施設(浜松町館)は昭和58年に設置、多くの企業に活用されてきたが、今回、竹芝地区開発に伴う建替えのため平成27年10月に閉館していた。

 その跡地で建設が進む40階建ての業務棟において、平成32年に新たな産業貿易センターがリニューアルオープンする。

 設置場所は40階建ての業務棟ビルの1階から5階部分。1階には展示会での展示品の搬出入を行う荷さばき場を設けるほか、4基の大型エレベーターで展示品を円滑に運ぶことのできる仕組みとする。

 2階から5階にはそれぞれ約1千500㎡の展示室を計4室設ける。さらに、各展示室に隣接して控室を2つずつ設けるほか、分割使用が可能な会議室3室も併設し、利用者ニーズに応じて使用できるようにする。

 JR浜松町駅からのアクセスは、新設される歩行者デッキを通って約5分。信号や交差点を渡ることなく、雨などの天候の影響も軽減され、快適に来場できる。

 歩行者デッキはそのまま3階のメインエントランスに直結、展示室や会議室にスムーズにアクセスできる。歩行者デッキはゆりかもめ竹芝駅ともつながり、こちらからのアクセスは約2分となる。

 なお、今回のリニューアルに伴い、以前は午前9時~午後5時までだった利用時間を午後9時まで可能とするなどサービスの向上を図っている。

 展示室などの利用は平成32年秋頃からになる見込みだ。

    

情報をお寄せください

NEWS TOKYOでは、あなたの街のイベントや情報を募集しております。お気軽に編集部宛リリースをお送りください。皆様からの情報をお待ちしております。