「まちづくりの会社」だからできる新しい働き方=NewWorkの空間を創造
東京急行電鉄株式会社

  • 編集責任者:種藤 潤

 国および東京都が進める「働き方改革」のなかで、拡大の起爆剤として期待されているのが「テレワーク」だ。次世代の働き方を支えるべく、東京急行電鉄株式会社はいち早く「法人向けサテライトシェアオフィス」事業を立ち上げ、多くの企業の「働き方改革」を後押ししている。

同社が手がける「NewWork渋谷」の室内。入退出をカードのデータで管理できるため、無人での運営が可能に

「働き方改革」法案成立前から新たな「働く場」を独自に創出

 2018年6月、国会で「働き方改革法案」が成立した。これにより、労働時間の上限規制撤廃などに加え、労働者がそれぞれの事情に応じた「多様な働き方を選択」できるようにすることが、事実上企業に義務付けられた。

 東京都はそれに先立ち「働き方改革」に着手しており、2016年から「TOKYO働き方改革宣言企業制度」をスタート。改革に着手する企業に対し、さまざまなサポートを行ってきた。

 こうした「働き方改革」の広がりを加速させる取り組みとして、国も都も注目しているのが「テレワーク」という制度である。これは、「tele=離れた場所」と「work=働く」を合わせた造語で、「情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を意味する。まさに、「多様な働き方の選択」を実践する一つの形といえる。

最低限のオフィス機能を備えたシンプルな空間。仕切りなどでプライベートも確保されている

 また、東日本大震災の教訓として、BCP(災害時の事業継続対策)の観点からも、「テレワーク」は注目されている。

 この制度を推進する上で、課題となるのが「働く場」である。多様な働き方の場として、オフィス以外にまず挙げられるのが「自宅」だが、集中できない、家の雑務に追われるなど、仕事に適さない場合もある。また、カフェなどの飲食店も、近年はモバイル端末が使用しやすい環境が整い、働く場として活用されているが、周囲に気を使ったり、モバイル環境が不安定だったりと、仕事をする上で不便を感じる場合もある。

電鉄会社のノウハウを生かし利便性高い「働く空間」を提供

 そうした課題を解決できる働く場として注目されているのが、「シェアオフィス」である。その価値に東急電鉄はいち早く着目し、2016年より「NewWork」という新事業を立ち上げた。

 「NewWork」では、法人に特化した完全会員制「サテライトシェアオフィス」の企画運営を行っており、現在は全国に直営店24店と提携店105店を持つ。「NewWork」店舗の大半は、主要駅から徒歩数分の好立地にある。

 利用者は、NewWorkカード(=登録されたチップのある社員証)を入り口のカードリーダーにかざし、入室。室内には、明るい外光が差し込む「シェアードデスク」、広い机が使える「オープンスペース」、集中して作業しやすい「ブース席」などが用意され、空いていれば自由に席を選んで利用できる。事前に予約すれば会議室も使え、電話スペース、複合機なども利用が可能だ。

 退室するときもカードをリーダーにかざせば完了。利用料金の精算はカードのデータを通じて後日法人経由で行われるため、利用者はほぼ手続きなく、好きな時に首都圏、全国の「NewWork」店舗を利用することができるのだ。

 一方で、契約する企業も、利用者の入退出をカードのデータで管理できるため、利用者の勤務管理を容易にできるメリットがある。

 電鉄会社なのに働く場を作る?と思われるかもしれないが、電鉄会社だからこそのノウハウとリソースがあったと、この事業を立ち上げたひとりで、現在もプロジェクトリーダーを務める永塚慎一さんは語る。

 「『まちづくりの会社』である弊社の電鉄事業の役割は『移動する空間を提供する』ことです。現在はその空間を、PASMOなどの電子カードで管理し、利用していただいています。『NewWork』は、要はその空間と管理の仕組みを『働く場』に置き換えたものです。『働く場』の提供も、『まちづくりの会社』の大切な役割ですから」

「NewWork」事業を立ち上げ、現在もサテライトシェアオフィス事業を担当する、東京急行電鉄株式会社の永塚慎一プロジェクトリーダー

テレワークの新たなメリットも
課題は経営者や管理職の意識改革

 永塚さんは、そもそも同社が他に先駆けて「働き方改革」を推進していたことが、この事業が生まれる契機になったと振り返る。

 「電鉄会社として大きな課題のひとつに、通勤時の混雑があります。それは同じ時間帯に、同じ場所に通勤することが主な要因であると考えられます。自社でできることは何かと考えた結果、会社以外にも働ける場を作るという『NewWork』の事業モデルに行き着きました。また、弊社はオフィステナントの運営管理も行っており、新たな働き方を求めるテナント様からシェアオフィスのニーズがあったことも、この事業をはじめるきっかけになりました」

 多様な働き方を求める利用者にとって、『NewWork』は大きなメリットがあると、永塚さんは手応えを感じている。

 「外回りの営業の方は、利便性が向上し、『NewWork』なしでは仕事ができないと言ってくださいました。また、子育て中の女性は、子どもを送り迎えしやすい場所で働けるため、仕事を辞めずにすんだと喜んでいただいています」

 立ち上げから3年間で、契約企業は約300社、利用者は12万人超にのぼる。想定の3倍のスピードで推移しているため、そのニーズへの対応に追われているが、今最も力を入れたいのは、利用者の利用促進だと永塚さんは言う。

 「契約する法人は増えていますが、利用者の割合はまだ少ないと感じています。もっと利用者を増やしたい。それには経営者や管理職が『テレワーク』を理解し、『NewWork』のようなシェアオフィスの活用が有効だと気づいてもらうことが重要だと思っています。国も都も『テレワーク』を推進していること自体はよろこばしいのですが、本当は行政こそ実践してほしい。その姿を見れば、二の足を踏んでいる経営者や管理職の方たちも、『テレワーク』に理解を示してくれると思います」

 今月22日からは「テレワークデイズ」キャンペーンがはじまる。まだ「テレワーク」導入が進んでいない企業も、この機会に「NewWork」の活用を視野に入れて本格的に「働き方改革」に踏み切ってはどうだろう。

利用者アンケートの集計結果より。「業務効率向上」はもちろん、「新しいアイデアの着想」「作業内容に応じた執務場所の選択」などに対してメリットを感じていることがわかる

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