建設局長 中島高志 氏

  • 聞き手:平田 邦彦

 東京都の各局が行っている事業を局長自ら紹介する「局長に聞く」。今回は建設局長の中島高志氏。都市基盤の整備は行政の重要な役割だが、建設局の来年度予算、小池知事が推進する無電柱化の取り組み、災害時の道路機能の確保などについてお話を伺った。

都市基盤の整備・管理を推進

建設局長 中島高志 氏

無電柱化のスピードを倍増

—東京都の令和3年度一般会計予算案がまとまりました。建設局の予算の特徴は。

 建設局の令和3年度予算案は一般会計で約5646億円となっています。このうち投資的経費が約86%を占めています。

 前年度比で186億円のマイナスとはなりましたが、都市基盤整備は都市活動、都民生活を支える上で欠かす事のできない重要な事業です。

 引き続き、災害に強く、快適で利便性の高い都市を目指し、都市の動脈となる幹線道路をはじめ、水害から都民の生命・財産を守る河川、ゆとりと潤いを創出する公園について、整備と管理を着実に推進していきます。

—小池知事は無電柱化の推進を掲げています。来年度予算での扱いはいかがですか。

 既存都道の無電柱化の予算案は、前年度を上回る約255億円となっています。

 東京の道路の地下は水道管やガス管などが輻輳し、沿道の建物も多く、無電柱化の工事には苦労もありますが、東京を災害に強い都市にしていくため、整備を急ぐ必要があります。 先日「無電柱化加速化戦略」を策定しました。都道における整備のスピードを倍増するとともに、都市計画道路の整備やまちづくり等に合わせた無電柱化も推進していきます。

 さらに区市町村道の無電柱化への補助を拡充し、都内全体で無電柱化の推進を図っていきます。

—近年、集中豪雨の多発で都内でも被害が発生しています。河川の災害対策は。

 近年、集中豪雨が全国的に頻発しています。都内では2019年、台風15号と19号に見舞われました。特に19号では多摩地域を中心に大きな被害が発生しました。都として常に水害に備えなくてはなりません。

 現在、河道整備に加えて、豪雨に大きな効果を発揮する調節池の整備に積極的に取り組んでいます。これまでに合計256万m2分の調節池が稼働していますが、現在整備中の7施設で約110万m2分を上積し、これに加えて「未来の東京」戦略として、2030年度までに約150万m2分の調節池を事業化していきます。

 例えば、整備中の環状七号線地下広域調節池では、白子川、石神井川及び神田川流域での1時間あたり75ミリの降雨に対応するため、環状七号線と都道目白通りの地下に大規模なトンネルを整備しています。この他、石神井川流域の城北中央公園調節池(一期)、境川流域の境川金森調節池などの整備に取り組んでいます。

 来年度予算案は約353億円となっており、これらの施設に加えて、新たに2調節池で事業化します。

 ソフト対策では、河川の状況を都民にリアルタイムに伝え、避難行動につなげてもらうため、監視カメラの設置・映像の公開を行っており、引き続き増設を進めていきます。

設計図の3D化で理解促進を

—災害時における道路の機能確保は重要ですが取り組みは。

 道路は、災害で発生した火災を遮断する役割がありますし、緊急時の輸送や避難等に大きな効果を発揮します。

 このため、環状六号線から七号線等に広がる木造住宅密集地域で、特定整備路線の整備を進めています。道路幅は20メートル程度ですが、道路整備がきっかけとなって沿道の住宅等の建替え・不燃化が促進される効果も期待されます。建設局では現在、品川区などの補助第29号線等24区間32か所で整備中です。

—連続立体交差事業はいかがでしょう。

 連続立体交差事業は、鉄道を一定区間連続して高架化又は地下化することで道路との立体化を行い、多数の踏切の除却を一挙に実現する都市計画事業です。

 線路で隔てられた市街地の一体化や駅前の再開発にもつながり、メリットの大きい事業ですが、一つの区間の完成までに長い期間と多額の費用を要するため、予算の平準化を意識しながら進めています。来年度は、東武東上線の大山駅付近での事業着手を予定しています。

—DXの推進に積極的と聞いています。

 デジタル化の推進とそれを通じた構造改革は、都庁全体での大きな取り組みです。

 建設局でも昨年10月に局としてDX推進本部を立ち上げて、都民サービスの向上や事業の高度化・効率化に向けて、様々な検討を進めています。

 例えば、都立公園内のスポーツ施設を利用する際に、現在施設の予約はインターネットでできますが、今後は利用者登録や料金の決済なども行えるよう検討を進めています。

 事業の効率化では、ドローンによる測量作業、スマホの映像を活用した道路維持管理、設計図の3D化などを進めています。住民説明会などで3D化した設計図を利用すれば理解を得られやすいと思っています。

 こうしたデジタルデータを、時間はかかると思いますが、測量、設計、工事、維持管理へと一貫して引き継ぐようにすることができれば、事業全体の効率化や変革につながると考えています。

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