コロナのワクチン証明をきっかけに
若者が気軽に健康チェックできる社会を
ICheck株式会社

  • 取材:種藤 潤

2021年11月現在、全国的にはもちろん、都内もコロナウイルス感染者が激減。まだ予断は許さない状況だが、「ポストコロナ」を見据えた活動や事業も動き始めている。そのひとつとして注目されているのが「ワクチン接種済証の電子的な確認」。本紙では、そのワクチン接種確認ができるスマホアプリとしていち早く発表された『ワクパス』に着目した。

同社が一般社団法人メディカルチェック推進機構とスタートした『ワクパス』のロゴマーク (提供:ICheck株式会社)

無料で誰でも簡単 スマート”にワクチン接種確認

 2021年10月6日、健康診断の受診率向上に向けた活動などを行う「一般社団法人メディカルチェック推進機構」とともに、検査キット販売を手がけるICheck株式会社が、民間で初となる新型コロナワクチン接種確認アプリ『ワクパス』をリリースすることを発表した。

 『ワクパス』とは、「ワクチンパスポート」の略称であり、自治体が発行する紙媒体のワクチン接種済証をスマートフォンアプリ上で提示できる仕組みだ。利用者は、(1)スマートフォンアプリをダウンロードし、(2)運転免許証などの本人確認書類とワクチンの接種済みを証明する自治体発行の記録書を撮影しアップロードすれば、利用が可能になる。アプリは無料でダウンロードできる。

 登録が完了すれば、アプリ画面を提示することで接種証明ができる。また、証明することで特典もついてくる。『ワクパス』には飲食店やホテル、スポーツチームなどの賛同企業が存在し、その店舗などで画面を提示すると、割引などの優待サービスを受けることができる。2021年11月現在、アパホテルや旅行代理店のエイチ・アイ・エス、プロサッカーチームの鹿島アントラーズなど40社以上が賛同企業として参加している。

本紙160号トップインタビューにも登場したICheck株式会社の金子賢一代表取締役

テクノロジー×医療を通して 利用者にも施設側にも安心を提供

 『ワクパス』を通したワクチン接種記録画面の提示により、飲食店などのサービスを割引で受けられるインセンティブがあることで、アプリのダウンロードはもちろん、ワクチン接種自体の促進にもつながる。一方で、割引サービスを提供する賛同企業にも自社サービスの利用促進につながるメリットが発生するが、賛同企業もあえて無料で参加できるようにしている。

 『ワクパス』のアプリ開発および運営を担うICheck株式会社の金子賢一代表取締役は、「ポストコロナ」を見据えた社会に求められるサービスとして、このアプリ開発に着手したという。

 「2021年11月時点で、コロナ感染者数はかなり減りました。またワクチン接種も全国的に進み、予断は許さないものの、『ポストコロナ』の社会が見え始めてきました。では次に何が必要になるかと調査してみると、ワクチンの接種証明を求める声が高いことがわかりました。それは、ワクチンを受けた人だけでなく、その人たちが利用する施設やサービスでも求められているものです。その双方が安心して生活できる環境をテクノロジーで作り上げることができないかと考えてつくったのが、アプリで簡単に証明できる仕組みです」

『ワクパス』アプリのワクチン接種の証明画面のイメージ(提供:ICheck株式会社)

『ワクパス』アプリのワクチン接種の証明画面のイメージ(提供:ICheck株式会社)

利用者、賛同企業の輪を広げ 「ポストコロナ」の生活基盤に

 『ワクパス』は一見するとシンプルでわかりやすい仕組みだが、開発途中では見えない部分での苦労があったと、金子社長は振り返る。

 「一番のハードルは、個人情報の取り扱いです。利用者の健康データを預かり、提示するわけですから、情報管理は非常にデリケートになります。結果、詳細な個人情報は取得せず、本人確認書類とワクチン接種済記録書の登録のみに絞りました。それでも情報漏洩のリスクはありますから、セキュリティ会社と提携し、万全のセキュリティ体制をとっています」

 アプリの運営管理には、このセキュリティに対するコストもかかるわけだが、先にも記した通り、アプリ利用者からも、賛同企業からも費用はとっていない。そこには、民間企業としての戦略とともに、金子社長の抱く社会的責任への強い思いがあった。

 「もちろん、我々も民間企業ですから利益のことも考えいないわけではありません。利用者が広がっていくなかで、そこから我々の主要事業であるコロナ検査キット『ICheck』の収益に結果として結びつけばと期待しています。ただ、それ以上に重要なのは、利用者にも賛同企業にも多く利用していただき、安心した生活基盤をつくることだと考えているのです」

 同社の検査キット事業に関しては、本紙160号トップインタビュー記事を参照していただきたいが、そこにも通じる同社の理念『テクノロジーと医療の融合による社会貢献』は、この『ワクパス』事業にもしっかりと息づいているのだ。

同サービスで利用できる飲食店の割引サービスの画面イメージ(提供:ICheck株式会社)

コロナ以外の疾病の証明や GPS、検索機能の充実も

 金子社長は「ポストコロナ」を見据えて将来的に『ワクパス』の可能性はさらに広がると考え、すでに次なる戦略にも着手している。

 「コロナウイルスの検査技術も進歩し、手間や時間をかけなくても陰性証明ができる技術が完成しつつあります。さらに、アレルギーやガンの検査技術も飛躍的に進み、コロナ同様に気軽に検査できる時代がすぐそこまできています。そうした検査キットをいち早くサービスとして提供し、誰もが気軽に日常的に健康チェックができるインフラを構築したいと思っています。そしてその証明と管理をするツールとして、『ワクパス』を用いることができればと考えています」

 そのために、金子社長が注目しているのが20代を中心とした若い世代だ。彼らに気軽に『ワクパス』を利用してもらうために、さまざまなプロモーションや仕組みづくりを行っている。

 「弊社のプロモーションでは、若い世代に影響力のあるアイドルグループや歌手の方を積極的に起用し、その世代の人に気軽に利用してもらうよう注力しています。彼らはデジタル世代ですから、スマホなどを駆使して生活するのが当たり前ですので、その使い勝手にもこだわり、今後は『ワクパス』にGPS機能を搭載したり、検索機能を強化したりしたいと思っています」

 こうした発想とスピード感は、民間企業ならではといえよう。金子社長も「検査証明は本来行政や医療が行うことだが、民間だからこそできる役割もある」と、同社としての普及に力を注いでいくと話す。東京都も11月に『TOKYOワクションアプリ』をリリース、デジタルを用いたワクチン接種を促進し始めた。いい意味での官民の切磋琢磨により、デジタルを活用した「ポストコロナ」の安心できる社会が、着実に定着することを期待したい。

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