携帯型光源装置の研究、開発、 販売、輸出入

レイギアーズ合同会社

  • 取材:種藤 潤

 日本にある世界トップクラスの技術・技能—。それを生み出すまでには、果たしてどんな苦心があったのだろうか。

約1年前、主に警備や救命救急などの現場で用いられる、独自の光源技術「プラズマ」を用いた携帯型サーチライトが完成した。その世界最大光量に“迫る”品質に着目し、本稿でも取り上げたが、その技術はさらに進化し、世界最大光量と“証明”された新製品が誕生。すでに自衛隊や警察の導入が決定し、海外にも広がり始めている。

『TSUKUYOMI-55』が夜間に使用されているイメージ(写真全て提供:レイギアーズ)

『TSUKUYOMI-55』が夜間に使用されているイメージ(写真全て提供:レイギアーズ)

 1年を経て、照射距離は約5500mから約6500mに。第三者機関の検査を経て、携帯型サーチライト『TSUKUYOMI(ツキヨミ)-55』は、世界最大の光量を発光できることが証明された。開発したレイギアーズ合同会社代表社員の東賢(あずま・けん)さんは、その品質はすでにさまざまな現場で高い評価を得ていると、嬉しそうに話す。

 「この1年間、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、直接お会いして営業提案する機会がほとんど持てず、サンプルを送付し、現場の人たちに試してもらうことしかできませんでした。しかし、それがむしろ良かったのか、サンプル使用後、すぐに導入を検討するとのご連絡を多数いただきました。やはり現場では、このライトの光量の強さ、そして使いやすさは、すぐにわかってもらえたようです」

 すでに自衛隊と警視庁での新規導入が決定。他の省庁でも検討が進んでいるという。さらにはベトナム警察でも導入される予定で、世界にもその実力は着実に広まりつつある。

1年を経て世界最大光量を実現した長距離型サーチライト『TSUKUYOMI-55』。寸法は全長284mm、高さ229mm。軽装備仕様(上:約3.9kg)と重量重装備仕様(下:約5.5kg)の2タイプがある

世界最大級の光量を 最長10000時間達成

 『TSUKUYOMI-55』が搭載する、独自の光源技術「プラズマ」については、1年前の本稿(2021年3月第159号)で解説したが、改めて触れておきたい。

 サーチライトに限らず、現在、世の中の主な光源といえばLED(Light Emitted Diode=発光ダイオード)だが、防衛や災害現場など、プロ用サーチライトの主力は「HID=High Intensity Discharge lamp」である。「HID」は「LED」に比べて遠くまで光が届くこと、雨、雪、霧、砂塵、粉塵などの環境下でも光が通ること、電池残量が低下しても光量が変わらないことなどの特徴を持つ。

 その「HID」からさらに進化した光源が「プラズマ」である。これを用いることで、『TSUKUYOMI-55』は6419mという世界最大級の照射距離を可能にしながら、光源寿命を10000時間、点灯時間を1回の充電で1時間半~5時間保てる機能性を実現。海外製でも6000mクラスの光量を持つ商品はあるが、光源寿命が1000時間程度で、500時間を過ぎると明るさが半減してしまうという。

『TSUKUYOMI-55』の第三者機関による証明書。競合となる海外製品はこうした客観的評価がなく、使ってみると実際の性能が異なる場合が多いという

『TSUKUYOMI-55』の第三者機関による証明書。競合となる海外製品はこうした客観的評価がなく、使ってみると実際の性能が異なる場合が多いという

今まで救えなかった命を救い 相手を傷つけない防衛手法にも

 東さんは、現場での評価の高さの要因は大きく3つあると分析している。

 「まず、照射範囲が広がったことで、今までできなかった場所の捜索等の活動が可能になります。例えば、災害現場ではこれまで救えなかった命も救えるようになる可能性が高まる。その実力を、現場の方々には早々に感じていただけたのだと思います。

 次に、強力な光により、遠方の位置を示すことができるようになることも、災害現場等では大きな武器になると言われています。

 そしてもうひとつは、“人を傷つけない武器”になることです。『TSUKUYOMI-55』の光を点滅させて人に照射すると、いくら瞼を閉じても光が眼球に及び、平衡感覚を失い、揺れているような状態になります。光量が強いのでサングラスをしても意味がありません。それでいて、時間が経てば元に戻り、後遺症も残りません。特にこの点は、今後警備や防衛の最前線で注目されると思います」

強力な赤外線光線を発することができる『TSUKUYOMI』シリーズ最新モデルのスケッチ

強力な赤外線光線を発することができる『TSUKUYOMI』シリーズ最新モデルのスケッチ

都市部災害に適したモデルや 強力な赤外線を発する商品も

 加えて、強力な光源ながら、災害現場等でも使いやすい軽さや持ちやすさなども、高い評価が得られるポイントだと東さんはいう。

 「理論上はもっと光量を上げることはできますが、本体をさらに大きく、重くしなければならない。使いやすさとのバランスを考えれば、今の形がベストだと思います」

 一方で、国土の狭い日本では、これほどの強力な光量が必要ない場面もある。例えば、都市部の消防などでは、約半分の約2000mの照射距離もあれば十分だそうだ。東さんは、そうしたニーズにも応えられる製品の開発にもすでに着手している。

 「照射距離を抑える代わりに、本体をコンパクトにし、現場での使いやすさを向上させます。すでにHIDライトは消防現場で導入いただけていますが、プラズマに比べると照射範囲がぼやける特徴があります。プラズマならさらにクリアな照射が可能になります」

 さらに「赤外線」の強力ライトの開発にも挑戦中だ。これにより、特に「鑑識」の世界が劇的に変わるという。

 「詳しいことは言えませんが、この新しい赤外線ライトなら、これまで可視化できなかった証拠を現場で映し出すことができるようになります。最新の『TSUKUYOMI-55』付属品としても搭載予定です」

 「世界最大」に安住することなく、現場のニーズをさらに理解し、新しい商品開発に挑み続けるレイギアーズに、今後も注目していきたい。

レイギアーズ合同会社の東賢さん

レイギアーズ合同会社の東賢さん

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