関東大震災100年を契機とした気運醸成

  • 写真提供:東京都

本年は、1923年に発生した関東大震災から100年を迎える。東京都は、この節目を捉え、「備えよう、明日の防災」を合言葉として様々な取組を展開し、自助・共助・公助に取り組む気運の醸成を図る。都心南部直下地震など、都民生活に甚大な被害を及ぼす大地震はいつ起きてもおかしくない。今年に入ってからも、5月に石川県能登地方を震源とし最大震度6強を観測した地震を筆頭に、都内も含め、全国各地で地震が発生している。こうした自然災害に備えるため、東京都は防災・減災対策を取りまとめた「TOKYO強靭化プロジェクト」を昨年12月に公表した。ハード・ソフトの両面で対策を進めるとともに、関東大震災100年を契機とした気運醸成の取組を展開することで、強靭で持続可能な東京を目指す。

〈震災復興橋梁(永代橋)〉東京都立中央図書館蔵

取組の背景

1923(大正12)年9月1日正午2分前に発生した関東大地震はマグニチュード7・9と推定され、近代化した首都圏を襲った唯一の巨大地震であり、南関東から東海地域に及ぶ地域に広範な被害が発生した。

 全体では、死者数が10万人以上に上り、建物倒壊や焼失のほか、電気、水道、道路、鉄道等のライフラインにも甚大な被害を及ぼした。

 発生日である9月1日が「防災の日」と定められているように、近代日本における災害対策の出発点とされている。

 本年は、関東大震災発生から100年の節目を迎え、防災に対する関心が高まることから、東京都は、国や関係自治体と連携し、施策の実施や広報活動を行い、都民や事業者等における防災意識の向上を図ることとしている。

〈震災復興小公園(元加賀公園)〉東京都復興記念館蔵

気運醸成の取組

 関東大震災100年を迎える9月1日の前後を「コアWEEKs」として設定し、各種イベントなど、気運醸成を図る取組を集中的に実施する。

 まず、イベント関係では、「コアWEEKs」のキックオフとして、参加・体験型の企画を中心とした「関東大震災100年イベント」を8月26日に開催する。避難時の生活体験のほか、有識者や被災経験者を招いたシンポジウムの開催など、関東大震災の経験を踏まえ、自助・共助の重要性を広く訴求していく。

 また、区市町村と連携し、自助・共助の防災行動を体験する都民参加型の防災訓練を9月1日から3日に開催する。具体的な訓練内容として、都庁と全区市町村をリモートで接続した東京都災害対策本部の運営訓練や、関東大震災に関する展示、身近な防災行動の体験などを予定している。

 次に、広報関係の取組では、「東京くらし防災」や「東京防災」の内容をリニューアルし、都内の全世帯に配布することで、自助・共助の取組を促す。また、これらの冊子と併せて、災害時に想定されるエレベーターやトイレの利用停止など、マンション特有の被害に対する備えを学ぶためのリーフレット等も配布する。

 子供を対象とした取組では、小学校の授業の一環で、避難場所や避難ルートについて学ぶことができる「逃げ地図づくり」などを行う予定。これにより、まちづくりや地域活動への興味・関心を高めるとともに、有事に自らの命を守る行動を促す。また、都内の児童・生徒を対象に、防災に関するデジタル教材を配信する。

 そのほか、関東大震災100年の共通ロゴやタグラインを活用したPRを各所で行うとともに、復興のシンボルである隅田川橋梁を、ロゴのカラーである緑色でライトアップするなど、関東大震災100年の取組を広く周知していく。

 また、震災の焼失区域において、東京市が復興小学校に隣接して整備した復興小公園について、東京都は関係区による復興小公園の再生を後押しし、その再生を通じてあらゆる世代に対する防災意識の啓発につなげていく。

「100年先も安心」を目指して

 関東大震災発生後、東京都においては、「帝都復興院」総裁の後藤新平(元東京市長)を中心に作成された復興計画に基づき、主に焼失区域において、街路、橋梁、河川、運河、公園、土地区画整理等の事業が行われ、今日にもつながる社会資本が整備された。

 現在の東京を取り巻く状況に目を転じると、都内におけるマグニチュード7クラスの地震の発生確率は今後30年以内で70%とされており、首都直下地震はいつ起きてもおかしくない。加えて、気候変動の影響により激甚化する風水害や火山噴火、新たな感染症の流行など、常に災害の脅威にさらされている。

 東京都が推進している「TOKYO強靭化プロジェクト」では、こうした災害の危機に直面する中にあっても、「先人たちの努力の結晶とも言える安全・安心な都市を更にレベルアップして未来に引き継ぐ」という考え方のもと、「100年先も安心」を目指し、地震対策や風水害対策など、様々な取組を取りまとめている。

 こうしたプロジェクトに掲げた取組を推進するに当たっては、都民や事業者等の「共感」を得ながら、自助・共助・公助をより一層強化していくことが重要である。関東大震災100年を契機とした取組等を通じて、東京の強靭化に向けた気運を醸成しながら、100年先も都民が安心できる強靭で持続可能な首都東京を実現していく。

 (写真提供・東京都)

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